議会局「軍師」論のススメ
議会局「軍師」論のススメ 第26回 議会の広域連携は「開国」への呼び水なのか?
地方自治
2020.09.24
議会局「軍師」論のススメ
第26回 議会の広域連携は「開国」への呼び水なのか? 清水 克士
(月刊「ガバナンス」2018年5月号)
*写真は大津市議会局提供。
大津市議会では、隣接する草津市議会との連携協定を締結した。執行機関の広域連携など今さら珍しくもないが、議会においては、まだ数例である。
■議会は孤高の存在でいいのか
執行機関においては、従前から一部事務組合の設置などによる広域連携も一般的であったが、地方分権の進展に伴い、定住自立圏構想や連携中枢都市圏構想など新たな制度整備もされ、地域性や行政課題の性質に応じて適宜対応している。
一方、地方議会における広域連携の動きは鈍い。確かに制度上、基礎自治体議会は国会や広域自治体議会ともほぼ無関係であるとともに、近隣議会と関係性を持たずとも自己完結できる存在である。
だが、執行機関が広域連携で取り組む行政課題に対して、二元代表制の一翼を担うとされる議会が、孤高の存在でいいのだろうか?
■大津市議会における取り組み
琵琶湖を挟んで隣接する大津市と草津市では、びわこ大津草津景観推進協議会(以下「景観推進協議会」)が設置されるなど、広域景観の保全に関して執行機関での連携の動きが加速した。
大津市議会としても、草津市議会との連携関係を構築すべく、同志社大学とのパートナーシップ協定を活用して、2016年8月に新川達郎教授を招聘し、議会の広域連携に関する合同研修会を開催した。そこでの共通認識に基づいて、広域景観の保全を契機とした大津市議会・草津市議会連携推進会議が設置され、両市議会の連携体制が成立した。
今年1月には湖上からの景観視察を船上で行い意見交換をするとともに、2月には景観推進協議会の運営上支障となる景観法の運用指針の改定を求めて、両市議会合同で国土交通省に要望活動を行い、3月末には改定を実現した。そして4月に、両市議会の協力関係を継続的なものとするため、琵琶湖上で連携協定を締結した。
また、大津市議会では、並行して北部で隣接する高島市議会とも連携を深めている。具体的な活動としては、北陸新幹線延伸に伴い湖西線が並行在来線化される問題に対処するため、既に国土交通省やJR西日本に共同して積極的な要望活動を展開しているところである。
■議会の広域連携の意義
このように議会間における隣接型水平連携は、共通する行政課題に議会独自のアプローチでの政策形成に寄与するとともに、内部では得られない情報交換によって監視機能強化にも資するものであることは間違いない。
議会は定型的な議事運営でさえ、各議会独自の運用が定着しているガラパゴス状態にあるが、方程式が確立されていない議会改革や政策立案の手法においては、その傾向がより顕著である。執行機関における広域連携は、全てを自己完結しようとするフルセット主義へのアンチテーゼの側面からの意義もあり、議会の広域連携においてもそれは同様であろう。
議会は狭義の議事運営に限れば自己完結できる存在であるが故に、根強い内向き志向の鎖国意識がある。水平連携のみならず、基礎自治体議会と広域自治体議会との垂直連携や遠隔型連携など、多様な議会の広域連携は、唯我独尊となりがちな鎖国意識を打破し、多様な議会文化を理解する「開国」への契機となる可能性を秘めているのではないだろうか。
*文中、意見にわたる部分は私見である。
Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士
しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。