徴収の智慧 第24話 生活再建型滞納整理(その1)

NEW地方自治

2019.08.16

徴収の智慧

第24話 生活再建型滞納整理(その1)

『月刊 税』2016年6月号

伝統的な滞納整理

 これまで滞納整理と言えば、効率的な滞納整理とか効果的な滞納整理などのように、少ない労力と限られた時間内で、どれだけの(徴収実績という)成果を挙げられるかといったことが追求されてきたし、また、そのために実務のノウハウが試行錯誤されてもきたのである。しかし、効率性や成果の追求というのは、なにも滞納整理という事務の専売特許ではなく、地方行政事務全般にも通ずることである(地方自治法2⑭)。

生活再建型滞納整理が目指すもの

 ところで、近年一部の地方団体で試みられている、いわゆる生活再建型滞納整理なるものは、従来、当然のこととされてきた効率性や、実績の追求とは別の観点から滞納整の理を見直すというものであるように思われる。すなわち、滞納整理の対象となる滞納の実態(内容なり内訳)というものをつぶさに見てみると、①うっかり忘れ、②納税怠慢、③生活困窮(著しい収入減少、失業等)、④事業不振、⑤疾病・負傷による就労困難又は一時的な支出の増大、⑥盗難・詐欺等犯罪被害、⑦災害(火災・地震・水害・がけ崩れ等)、⑧行政又は職員への不満や反感、⑨他の支払を優先(住宅ローンやカードローン等)、⑩その他(納税意識稀薄等)、といった内容に分類することができるのであるが、このうち③ないしは⑦については、納期内に納税することができない「やむを得ない事情」が認められるものである。つまり、これらの事情がある場合には、納税緩和措置の適用がふさわしいと考えられるので、これまでの滞納整理の常識から考えれば、納税緩和措置の処理をするところまでが、徴収職員のテリトリーとされてきた。

 ところが、いわゆる生活再建型滞納整理という発想によれば、こうした処理をもって一件落着とするのではなく、これらの「やむを得ない事情」によって、不本意にも滞納者となってしまった者について、その滞納の原因となっている状況の抜本的な改善なくしては、本当の意味での滞納解消にはならないのではないかという考え方に基づくものと思われる。この考え方によれば、単に滞納者自身の個人的、個別的な救済というに留まらず、行政的な措置(配慮)として、滞納となったそれぞれの原因にふさわしい支援にまで踏み込むことによって、将来の滞納発生を抑止しようとの意図もあるのではないかと思われる。

必要な「見極め」

 先に見たとおり、滞納となった原因については、さまざまであって必ずしも一様ではないから、これらを十把一絡げにして単純にファイナンシャルプランナー等につなげればいいというものではないだろう。最も肝心なことは、滞納となってしまった真の原因なのであるから、第一義的には徴収職員による滞納原因の的確な把握が不可欠である。そこでは滞納原因を「見極める」確かな目が求められるという意味において、徴収職員としての本領発揮が試される。いわゆる生活再建型滞納整理では、滞納原因が把握できたならば、徴収実績を挙げるという滞納整理の本来的な目的とは別の観点から、生活や事業の再建に向けた次なる「見極め」が必要となる。それには福祉分野や労働経済分野の専門職員に、弁護士やファイナンシャルプランナー等も交えた専門チームで対処するのが理想的なのかもしれないが、昨今の地方団体における厳しい財政事情や定数削減の状況に鑑みれば、一気にこうした専門チームの編成まで期待するのは困難とも思える。そこで、せめて生活や事業の再建にアドバイスをする弁護士やファイナンシャルプランナーにつなげたり、庁内の生活支援部署につなげたりするだけでも一歩前進になるのではないかとの考えから、かくして一部の地方団体で試行されたのが、こんにちのいわゆる生活再建型滞納整理なるものであるように思う。

「整理」から「抑止」へ

 これまで滞納を「整理」すること一辺倒であった滞納整理に、滞納の原因を的確に把握して、その原因となっている状況の抜本的な改善を目指すことによって、個々の滞納者の救済と将来の滞納の「抑止」を目指すという一歩踏み込んだ試みであるといえよう。

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