時事問題の税法学

林仲宣

時事問題の税法学 第32回 相続税対策

地方自治

2019.08.26

時事問題の税法学 第32回

相続税対策
『税』2018年6月号

相続対策と相続税資金対策

 そういえば中学の先輩でもある医師と僧侶から、それぞれ自分たちはすべての階層を相手にするが、税理士は金持ちしか相手にしないと、からかわれたことがあった(でも上から目線でしょ、とつぶやいたが)。確かに金持ちかはともかく、税負担の関わる収入や資産があるから税理士に相談することになる。なかでも相続問題の話題は多い。相続については、相続対策、相続税対策そして相続税資金対策に大別できる。

 相続対策は、遺産分割の方法である。民法改正で配偶者を優遇する配偶者居住権が創設する方向にあるが、すでに非嫡出子(婚外子)の相続分の平等性が容認されているから、妻の権利が尊重されることは当然である。ただ相続人である子の相続分について、遺言が唯一の解決法と喧伝する弁護士や司法書士のアピールは相変わらず目立つ。もちろん遺言の法的効果はいうまでもないが、遺言に対する相続人の不信感が残されるケースは少なくない。その後の法要や年忌が開催されないという事態を招く争族も出来することも税理士の立場からすれば、弁護士からの紹介された相続案件は相続人間のしこりが残っていることを感じることはある。

 相続税対策の骨子は、相続財産の削減と相続財産の評価減に尽きる。相続財産の削減手段は、贈与と譲渡のふたつとなるが、それぞれ贈与税と譲渡所得税の課税も考慮しなければならない。ただ、相続税納税資金対策としては財産の売却は、事前対策のひとつといっていい。

 相続財産の評価減は、総体的手段と個別的手段に分けることができる。総体的手段は、原則的な方法といえるが、節税対策の典型である。アパート経営などのように借入金を増やし債務控除の額を膨らます手法など、一例となる。相続財産の計算上、債務控除という原則は変更されないだろうが、賃料収入が安定・継続するかのリスクがある。

 一方、個別的手段は、法令の適用解釈により節税をはかることであるが、リスクが大きい。相続の開始、つまり何時、死亡するか誰にも分からないし、それまでに法令の改正や解釈の変更が実施されることも、予測ができない。

家なき子特例

 すでに本連載でも触れたが(本誌平成28年1月号)、いわゆるタワーマンションの固定資産税評価の方法が変更され、節税効果は減ってしまった。不動産会社のセールスマンの口車にのってしまったと後悔した人もいただろう。ところが本年4月1日から新たな節税策の封じ込めがスタートした。俗に「家なき子」特例といわれてきた制度における適用要件の追加である。

 相続税対策で必ず紹介されるのが、小規模宅地の特例がある。この特例は、相続により、子が取得した土地建物のうち、その相続の開始の直前において被相続人つまり亡くなった親の居住の用に供されていた宅地等の評価額は、限度面積までの部分については、一定の割合を減額できる制度である。この特例の基本は、親と当該宅地を相続する子は同居している必要がある。もっとも仕事の関係で親と同居できない場合もあることから、子は持ち家がなく、借家住まいなどのときには原則として適用されてきた。登記上、自己名義の所有不動産がなければ適用対象となることから、高齢化社会、長寿社会ならではの節税策が指南されていた。例えば、自己所有の家を自分が経営する会社や自分の子(親からすれば孫)に名義を変え、そのまま住み続け、親が亡くなるのを待つという手法である。子は、形式上、「家なき子」となる。

 しかし平成30年度税制改正で、この「家なき子」手法による節税策は消滅した。子が、相続の開始3年以内に、「特別な関係のある法人」、「3等親以内の親族」が所有している家に住んでいないことや相続の開始の日に過去に所有していた家に住んでいないことなど、要件が厳しくなった。

 節税策は、課税庁がその効果を認識したときから、封じ込め対策を検討するだろう。時間との勝負といえるが、相続の開始までの時間は残念ながら見通せない。

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特集:平成30年度改正地方税法の政令・省令解説

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