最新法律ウオッチング
最新法律ウオッチング―デジタル改革関連法(2021年9月1日施行)
自治体法務
2021.09.16
※2021年6月時点の内容です。
最新法律ウオッチング 第112回 デジタル改革関連法
(『月刊 地方財務』2021年7月号)
2021年の通常国会においてデジタル改革関連法としてデジタル社会形成基本法等の6法律が成立した。
情報通信技術が急速に進展し、国民生活が大きく変化する中、データの利活用が、あらゆる分野における創造的かつ活力ある発展の実現のために不可欠となっている。また、新型コロナウイルスへの対応で、国や地方公共団体のデジタル化の遅れや不十分なシステム連携を背景に煩雑な手続や給付の遅れが生じるなど、社会全体のデジタル化の推進が喫緊の課題となっている。
さらに、社会の多様性が増していく中、情報通信技術の活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会の実現が重要とされている。
政府は、こうした状況を踏まえ、法案を国会に提出し、成立した。
デジタル改革関連法
●デジタル社会形成基本法
デジタル社会の定義を、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて自由かつ安全に多様な情報や知識を世界的規模で入手し、共有し、発信するとともに、情報通信技術を用いて電磁的記録として記録された多様かつ大量の情報を適正かつ効果的に活用することにより、あらゆる分野における創造的かつ活力ある発展が可能となる社会とした。
その上で、デジタル社会の形成に関し、ゆとりと豊かさを実感できる国民生活の実現、国民が安全で安心して暮らせる社会の実現、利用の機会等の格差の是正、個人・法人の権利利益の保護等の基本理念について定めた。
また、デジタル社会の形成に関し、国、地方公共団体、事業者の責務等について定めた。
さらに、デジタル社会の形成に関する施策の策定に当たっては、多様な主体による情報の円滑な流通の確保、高度情報通信ネットワークの利用や情報通信技術を用いた情報の活用の機会の確保、人材の育成、生産性や国民生活の利便性の向上、国民による国・地方公共団体が保有する情報の活用、公的基礎情報データベースの整備、サイバーセキュリティーの確保、個人情報の保護等のために必要な措置が講じられるべき旨について定めた。
●デジタル庁設置法
デジタル庁は、デジタル社会の形成に関する内閣の事務を内閣官房と共に助け、デジタル社会の形成に関する行政事務の迅速かつ重点的な遂行を図ることを任務とし、デジタル社会の形成のための施策に関する基本的な方針に関する企画立案や総合調整等をつかさどることとした。
デジタル庁は、内閣総理大臣を長とし、事務統括権、関係行政機関の長に対する勧告権等を有するデジタル大臣を置くこととした。
●デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律
個人情報の保護に関する法律において、地方公共団体の個人情報保護制度を含めた全国的な共通ルールを規定することとし、全体の所管を個人情報保護委員会に一元化した。
また、地方公共団体が指定した郵便局におけるマイナンバーカードの電子証明書の発行、電子証明書の移動端末設備への搭載を可能とする等の措置を講じ、押印を求める手続についてその押印を不要とする措置を講じた。
●その他3法律
公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律は、各行政機関等が行う公的給付の支給等に利用することができる預貯金口座を、内閣総理大臣にあらかじめ登録し、行政機関等が当該預貯金口座に関する情報の提供を求めることを可能とした。
預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律は、預貯金者の意思に基づく預貯金口座への個人番号の付番を推進する仕組みや、災害時や相続時に預貯金者やその相続人の求めに応じ、預貯金口座に関する情報を提供する制度を創設した。
地方公共団体情報システムの標準化に関する法律は、地方公共団体の基幹系情報システムについて、国が基準を策定し、当該基準に適合したシステムの利用を求める枠組みを定めた。
●施行期日
一部を除き、2021年9月1日から施行される。
国会論議
国会では、個人情報保護制度が共通化されることで、自治体ごとにルールが異なるという二千個問題が解決されるか、自治体独自の基準の引下げでプライバシー保護の後退とならないかとの質問があり、政府から、法律で規定する全国的な共通ルールが全自治体に適用され、個人情報保護委員会がその解釈を一元的に担うこととなるため、二千個問題は解消されるが、法律の範囲内で、条例により、必要最小限の独自の保護措置を講じることは可能としており、プライバシー保護の後退の懸念はないとの説明がされた。