AIで変わる自治体業務

稲継裕昭

第3回 自治体におけるAI活用の具体例(後編)

ICT

2019.06.18

(『Gyosei Cafe』*2019年6月号 株式会社ぎょうせい システム事業部)

議事録作成AIとRPAについて

文字起こしのイメージ

 2019年度の山形県の一般会計予算には、AIによる議事録作成とRPAの実証を合わせて900万円が盛り込まれています。今回は、議事録作成AIとRPAについてみていきましょう。

審議会等の議事録作成の省力化

 AIによる議事録作成は徳島県が先進事例となり、2018年度には、大阪府、岡山県、愛媛県、滋賀県などへと広がっていきました。審議会等の議事録作成を経験されたことのある方も多いと思いますが、これはかなり面倒な作業です。山形県でも知事部局でAI導入可能とみられる会議が年間160あり、議事録作成に2,600時間要しているとのことです。AIを活用することで、作業時間を現在の3分の2から2分の1にまで短縮できると見込まれています。音声認識ソフトを使った議事録作成は、一部の自治体では以前から行われていましたが、変換効率が低く、なかなか実用に耐えるものではありませんでした。しかしAIによる音声認識機能が飛躍的に高まったことによって、ここ1~2年で実用化が進み、導入事例が多くみられるようになりました。比較的多くの自治体で導入されているのが、アドバンスト・メディアが提供するAmiVoiceです。2019年1月現在で147自治体に導入されているとのことです(同社HPより)。

AIによる省力化のイメージ

 先進事例として紹介されることの多い徳島県は、GoogleのクラウドスピーチAPIを使っています。徳島県の特徴は、要約システムをいれていることです。議事録がHPに出ていても、そのすべてに目を通す時間的余裕のある住民は多くはありません。そこで徳島県は10%までの好きな長さを指定して要約した議事録が出てくるシステムを提供しています。要約システムも含め、今後も、議事録AIサービスはより多くの自治体に導入されていくことでしょう。

定型業務やルーティン業務に向くRPA

 RPAは、ロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation)の略です。人間がパソコン上で行うキーボード入力やマウス操作、コピー&ペーストなどの単純作業を自動化する技術のことをいいます。RPAは、キーボードやマウスを用いて処理する定型業務やルーティン業務に向いています。例えば、「メールを受信して、開封し、添付書類を開いて、そこにリスト化されているデータを別のファイルに転記入力し、メールを送信する」といった複数のルーティン業務です。人よりも作業速度が速く、ミスがなく、夜中でも稼働させることが可能です。山形県でも残業時間の集計や予算管理など活用が考えられる40業務のうちから3~5業務を選んで効果を検証するそうです。

定型業務のイメージ

 RPAに関しては、すでに先行自治体で実証実験が行われ、本格導入も始まっています。2017年度の総務省の業務改革モデルプロジェクトに選ばれた熊本県宇城市では、ふるさと納税業務や時間外勤務手当計算業務についてRPAの実証実験を行いました。茨城県つくば市でも異動届受理通知業務や、市民税課の新規事業者登録業務、電子申告の印刷作業等でRPAの実証実験を行い、大きな効果が見られました。そのため、2018年6月議会で補正予算を組み、同年10月から正式に、NTTデータのWin ActorというRPAを導入しています。総務省の調べでは、2019年1月現在で82の自治体でRPAが導入済みとなっています。働き方改革が叫ばれる中、業務の飛躍的改善に資するRPAの導入は今後一層加速していくことでしょう。

 

(*)「Gyosei Cafe」は法令出版社ぎょうせいのシステム事業部がお届けする、IT情報紙です!隔月で、自治体職員の皆様へお役立ち情報をお届けいたします。

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稲継裕昭

稲継裕昭

早稲田大学政治経済学術院教授

(いなつぐ・ひろあき)。大阪府生まれ。京都大学法学部卒、京都大学博士(法学)。大阪市職員、大阪市立大学教授等を経て2007年から早稲田大学政治経済学術院教授。著書に『自治体の人事システム改革』『プロ公務員を育てる人事戦略』『プロ公務員を育てる人事戦略Part2』『地域公務員になろう』『自治体行政の領域』『評価者のための自治体人事評価Q&A』(以上ぎょうせい)、『行政ビジネス』(東洋経済新報社)、『自治体ガバナンス』(放送大学教育振興会)等多数。

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