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【最新行政大事典】用語集―地方財政白書とは

地方自治

2020.08.09

【最新行政大事典】用語集―地方財政白書

はじめに

 『WEB LINK 最新行政大事典 全4巻セット』(ぎょうせい)は膨大な行政用語の中から、とくにマスコミ等で頻繁に使用されるものや、新たに登場したテーマ、法令などから選りすぐった約3,000の重要語句を収録。現場に精通した執筆陣がこれらの行政用語を簡潔にわかりやすく解説します。ここでは、「第1巻 第7章 財政・予算」から、「地方財政白書」を抜粋して、ご紹介したいと思います。

地方財政白書

 地方財政白書は、地方財政法(昭和23年法律第109号)第30条の2の「内閣は、毎年度地方財政の状況を明らかにして、これを国会に報告しなければならない。」という規定に基づき、毎年度総務省が「地方財政の状況」として国会に報告しているものである。

 地方財政白書の沿革についてみると、昭和26年5月に地方財政委員会設置法第14条の規定に基づいて作成され、「地方財政の情況報告」として国会に報告されたのが最初である。そして、翌昭和27年に、地方財政委員会設置法の廃止に際し、同法第14条の規定が地方財政法に第30条の2として引き継がれ、以後同条の規定に基づき毎年度作成され、国会に報告されている。

 地方財政白書の内容は、地方公共団体の前年度の決算の状況を中心に、豊富な計数資料を付して論述し、当該年度及び翌年度の地方財政の見通し並びに最近の地方財政の傾向と課題等についても論及しており、国会が、地方財政の現状を認識し、それに基づいて的確な立法・予算措置を行うことを可能とし、さらに、国会を通じて、国民にも、地方財政の現状を明らかにするという機能をもっている。

 平成31年版の地方財政白書は、国会に報告されその内容は、第1部、第2部及び第3部とで構成されている。

平成31年版地方財政白書の主な内容

第1部 平成29年度の地方財政の状況

1 地方財政の役割

(1)国・地方を通じた財政支出の状況
(2)国民経済と地方財政

2 地方財政の概況

(1)決算規模
(2)決算収支
(3)歳入
(4)歳出
(5)財政構造の弾力性
(6)将来の財政負担
(7)決算の背景

3 地方財源の状況

(1)租税収入及び租税負担率
(2)地方歳入

4 地方経費の内容

(1)生活・福祉の充実
(2)教育と文化
(3)土木建設
(4)産業の振興
(5)保健衛生
(6)警察と消防
(7)目的別歳出充当一般財源等の状況

5 地方経費の構造

(1)義務的経費
(2)投資的経費
(3)その他の経費

6 一部事務組合等状況

7 地方公営企業等の状況

8 東日本大震災の影響

9 平成29年度決算に基づく健全化判断比率等の状況

(1)実質赤字比率
(2)連結実質赤字比率
(3)実質公債費比率
(4)将来負担比率
(5)資金不足比率

10 市町村の規模別財政状況

(1)団体規模別団体数等の構成
(2)人口1人当たり財政状況等

11 公共施設の状況

第2部 平成30年度及び平成31年度の地方財政

1 平成30年度の地方財政

2 平成31年度の地方財政

第3部 最近の地方財政をめぐる諸課題への対応

1 人づくり革命の実現に向けた取組

2 「Society5.0時代の地方」の実現(地域力強化プラン)

3 地方創生の推進

4 地域の安全・安心の確保

5 公共施設等の適正管理の推進

6 地方行政サービス改革の推進等

7 財政マネジメントの強化

8 地方自治に係る制度の見直し

9 社会保障・税一体改革

10 地方分権改革の推進

第1部について

 第1部は、平成29年度の地方財政の状況について、その決算を中心として、決算収支、歳入、歳出等を分析、検討するとともに、地方公営企業等の状況、東日本大震災の影響、市町村の規模別財政状況、公共施設の状況などを明らかにしている。

 「1 地方財政の役割」は、国家財政と地方財政を比較し、国民経済に占める地方財政の役割等について解説している。

 「2 地方財政の概況」では、平成29年度の地方公共団体の普通会計決算額(都道府県と市町村の単純な合算額から都道府県間、市町村間及び都道府県と市町村間の重複額を控除した純計額で掲載している。)について、その決算規模、決算収支、歳入、歳出、財政構造の弾力性、将来にわたる財政負担等の地方財政全般にわたる分析を行っている。ここでの主な分析としては、財政構造の弾力性をみるための指標である経常収支比率、公債費の状況を把握するための指標として、実質公債費比率及び公債費負担比率の近年の状況について、その理由(要因)をグラフにより、解説している。また、将来の財政負担では、地方債現在高、債務負担行為額、積立金現在高、地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担等について分析している。

 「3 地方財源の状況」「4 地方経費の内容」「5 地方経費の構造」は、地方税、地方交付税、国庫支出金、地方債などの歳入及び民生費、土木費、教育費などの目的別経費並びに人件費、公債費、普通建設事業費などの性質別経費について解説している。

 「7 地方公営企業等の状況」は、地方公営企業、国民健康保険事業、後期高齢者医療事業、介護保険事業などの会計について、その財政状況を解説している。

 「8 東日本大震災の影響」では、普通会計、公営企業会計別に東日本大震災の影響について解説している。普通会計では、東日本大震災分の歳入及び歳出の状況について、また、特定被災地方公共団体等における決算の状況について述べている。公営企業会計では、特定被災地方公共団体における公営企業の経営状況などを解説している。

 「9 平成29年度決算に基づく健全化判断比率等の状況」は、実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率、資金不足比率など、各健全化判断比率について、平成29年度決算に基づく分析の概要が明らかにされている。

 「10 市町村の規模別財政状況」は、団体規模別団体数等の構成と人口1人当たりの財政状況を解説している。

 「11 公共施設の状況」は、道路、公営住宅等、公園、下水処理施設、ごみ処理施設、保育所、高齢者福祉施設、教育施設、文化及び体育施設など主要な公共施設の整備状況について解説している。

第2部について

 次に、第2部平成30年度及び平成31年度の地方財政では、平成30年度の地方財政の状況を明らかにしているほか、平成31年度の地方財政では、経済見通し、国の予算、地方財政計画等により平成31年度の地方財政の見通しについて明らかにしている。

第3部について

 第3部では、最近の地方財政をめぐる諸課題への対応について解説している。具体的には、「人づくり革命の実現に向けた取組」、「Society5.0時代の地方」の実現、「地方創生の推進」、「地域の安全・安心の確保」、「公共施設等の適正管理の推進」、「地方行政サービス改革の推進等」、「財政マネジメントの強化」、「地方自治に係る制度の見直し」、「社会保障・税一体改革」、「地方分権改革の推進」についてである。

 「人づくり革命の実現に向けた取組」では、「全世代型の社会保障」への転換に重要な鍵を握るのが「人づくり革命」、人材への投資であるとしている。「人づくり革命」の実現に向けた取組として、幼児教育の無償化、待機児童の解消、保育士の処遇改善、高等教育の無償化、介護人材の処遇改善について解説している。

 「『Society5.0時代の地方』」の実現(地域力強化プラン)」では、狩猟・農耕・工業・情報に続く「第5の社会」を意味するSociety5.0の実現について解説している。持続可能な地域社会を構築していくため、「就業の場の確保」、「担い手の確保」、「生活サービスの確保」を通じて、安心して暮らせる地域づくりを進めていく必要がある。そのためにもSociety5.0を支えるAI、ビッグデータ、IoT、5Gなど、さまざまな新しい基盤的な技術を活用していく必要性について述べている。

 次に「地方創生の推進」では、地方創生の最近の動きのほか、地方の資源を活用した地域雇用の創出と消費拡大の推進、地域を支える担い手の確保について述べている。また、連携中枢都市圏など新たな圏域づくり、若者定着に向けた地方大学の振興などについても解説している。

 「地域の安全・安心の確保」では、近年の気候変動が及ぼす気象の急激な変化や自然災害の頻発化・激甚化に対する対応について述べている。国では「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」を取りまとめ緊急対策事業を進めている。総務省では緊急対策事業に対応した地方財政措置を講じることとしたほか、地方単独事業として「緊急自然災害防止対策事業費」を創設した。また、災害対策に対応できる人材確保の仕組みとして、「被災市区町村応援員確保システム」についても解説している。

 「公共施設等の適正管理の推進」では、公共施設等総合管理計画及び個別計画の策定状況について述べるほか、公共施設の適正管理の推進に係る具体的な取組について論じている。

 「地方行政サービス改革の推進等」では、地方行政サービス改革の推進、給与の適正化及び適正な定員管理の推進、マイナンバーシステムの積極的な活用について述べている。

 「財政マネジメントの強化等」では、地方公会計の整備と活用の促進について解説するほか、地方財政の「見える化」の推進について述べている。また、地方公営企業等の経営改革については、経営改革の更なる取組状況、公営企業会計の適用拡大に向けた新たなロードマップなど詳しく解説している。

 「地方自治に係る制度の見直し」では、地方自治制度の見直し、臨時・非常勤職員制度の見直しについて述べている。

 「社会保障・税一体改革」では、これまでの経緯について説明する一方、社会保障・税の一体改革の一環として取り組まれる社会保障の充実について、近年の動向を解説している。

 「地方分権改革の推進」では、地方の発意に基づく地方分権改革の推進の観点から、地方に対する事務・権限の移譲及び規制緩和に係る取組のほか、平成30年度の地方からの提案等に関する対応方針、地方税財源の充実確保について述べている。

 [関連項目]公共施設等総合管理計画

*『最新行政大事典』2019年10月より。(NPO法人 フォーラム自治研究 三島康雄)
(有償版は本文に加え、法令へのリンク機能があります)

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