
議会局「軍師」論のススメ
「議会局」としてなすべきことは何か?|議会局「軍師」論のススメ 第112回
NEW地方自治
2026.02.19
この記事は3分くらいで読めます。
出典書籍:『月刊ガバナンス』2025年7月号
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本記事は、『月刊ガバナンス』2025年7月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。
前二号で議会事務局を、議会改革や政策形成に主体的に関与する「議会局」とし、質量ともに拡充する必要性を指摘した。だが、拡充してまで何をするのか?今号ではよくあるこの質問に、具体例で答えたい。
■未来を見据える責任
総括的には行政監視に偏重している議会運営をあらため、政策立案機能の強化に資する補佐を行うことである。それは、議会発でなければ実現し難い政策ニーズが確実に存在するからである。その詳細については先にも述べている(注)ので割愛し、ここでは予算審議の観点からの政策立案について考察する。
注 ガバナンス2025年3月号「自治体議会の政策形成が受け身でいいのか?」
こう述べると、単年度予算案についての議論となりがちであるが、ここでは予算審議での長期的な視点の必要性について指摘したい。
もちろん、前年度決算を緻密に分析したうえでの予算審議なども重要な視点ではある。だが、自治体予算が原則として単年度主義であるため、それだけを議論のベースにすると議会の行政課題に対する視点も近視眼的にならざるを得ない。
具体的には、最近、全国で多発している老朽上下水道管の破断事故を例にとりたい。その根本的な原因は、耐用年数までに本管を計画的に更新してこなかった不作為にあることは明らかである。特に事業開始時期が古い水道管の老朽化はより深刻である。現行水準の料金収入で全ての老朽管を更新することは不可能で、更新費確保のために何倍もの水準での料金改定を行わなければ、破断事故が続発する事態を招くであろうことは、30年以上も前から指摘されてきたことである。
もちろん、明らかな不作為を放置してきた一義的な責任は執行機関にあるのだろうが、本来必要となる額の本管更新費が計上されていない予算案を、漫然と可決してきた議会にも全く責任はないのだろうか。
■予算案審議の盲点
中期的観点からは、首長が志向する施策の予算確保のために、興味のない分野では極端な予算削減を行うことへの対応も課題だろう。議会は新規や増額項目の予算審議には熱心であるが、削減費目の減額妥当性の検証は十分にされているだろうか。一般的には、減額項目の多くはスルーされ、そもそも予算計上されていないものについての議論などは、ほとんど行われないというのが実態ではないだろうか。
だが、当面は目立たないインフラの維持管理費などが削減されると、その影響が一般市民の目にも明らかとなるのは数年後となる。その時には当の首長は既に退任していないなどという話は珍しくない。
■「議会局」のなすべき仕事
提出された予算案の審議が第一義ではあるが、長期的な視点からは、予算計上されていない、限度を超えて削減されていないかなどの審議が盲点になっていないだろうか。そこにこだわるのは、議会は執行権がないからこそ、的確に全体を俯瞰し、未来を見据えた政策を立案するにより適した機関だと思うからだ。
そのためには、予算提案権は首長に専属するが、議会でも独自に予算案をシミュレーションするようなことも求められるのではないだろうか。そのようなことが実現すれば、議会の補佐機関にも高い能力が求められるのは必然である。議会の政策立案機能の発揮はまだまだこれからであり、それを支えられる存在となったときに、名実ともに「議会局」といえるのではないだろうか。
第113回 地方選挙は国政選挙の前座に過ぎないのか? は2026年3月19日(木)公開予定です。
著者プロフィール
早稲田大学デモクラシー創造研究所招聘研究員
議会事務局研究会 共同代表
元大津市議会局長
清水 克士 しみず・かつし
1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長、局長などを歴任し、2023年3月に定年退職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。
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