【特別企画】〝こだわりの〞広報紙を10言語に自動翻訳・読み上げサービスも展開 アプリならではの多彩な情報発信スタイルで読者が拡大

ICT

2019.04.09

『月刊ガバナンス』2019年3月号

 福島県郡山市では、2018年5月より市が発行する広報紙に、多言語翻訳と自動読み上げサービスを盛り込んだアプリ版を配信している。それを可能にしたのが、株式会社モリサワが提供する多言語対応サービス「MCCatalog+」だ。既に全国で80以上の自治体が活用している同サービスの先進ユーザーである同市の担当者に話を聞いた。

若年層や在住外国人の増加から広報紙の配布経路が課題に

 郡山市の「広報こおりやま」は、毎月約11万5,000部を発行している。広報担当者の同市政策開発部広聴広報課主査の桜沢雅史さんは、「〝読む広報〞ももちろん大事ですが、我々は〝見せる広報〞も同じぐらい大事にした紙面づくりを心がけています」と話す。

 このようなこだわりのもとでつくられ続けてきた「広報こおりやま」は、市内の全町内会を通じて各世帯に配布されている。しかし近年になり、学生や若い転入者など町内会に属さない住民も増えてきたことから、市内のスーパー、コンビニエンスストアでも冊子を置くようになった。

 また、市内には留学生が多く、在住外国人数は約2,700人となっており、生活に必須となる防災情報などの情報はWebサイト上で多言語で発信しているほか、「広報こおりやま」も一部の情報を英訳して配布している。一方で、広報紙を町内会の非加入者や在住外国人、郡山市と近隣市町村で構成する「こおりやま広域圏」、さらには郡山市への転入検討者や、市外で暮らす出身者などにも届けたいという思いが、同市の中で強まっていった。

 そうした中で紹介されたのが、モリサワが開発・提供している多言語対応サービス「MCCatalog+」だった。

 「便利なサービスだと思っていたので大きな魅力を感じました」と桜沢さんは振り返る。

 桜沢さんが「MCCatalog+」の存在を知ったのは17年秋のことだが、それから半年後の18年5月末に発行する6月号から「MCCatalog+」による配信がスタートした。

広報誌を手に取り説明する福島県郡山市の広報担当者
「広報紙づくりは自治体職員として貴重な経験になります。様々な苦労も紙面の中に生きているはずです。お互いに頑張って、よりよい紙面づくりを目指しましょう」と全国の自治体広報担当者に呼びかける桜沢雅史さん。

多言語翻訳&自動読み上げ以外にもアプリならではの様々なメリット

 MCCatalog+の専用閲覧ソフト「カタログポケット」版の「広報こおりやま」は、日本語のほか、英語、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語、タイ語、インドネシア語、ベトナム語、ポルトガル語、スペイン語に対応しており、自動読み上げサービスも提供している。つまり、日本語を含めた10言語の文字と音声で閲覧できるようになっているため、在住外国人だけでなく、視覚障害者も閲覧が可能だ。

 郡山市のWebサイトから、スマートフォンやタブレット、パソコンに専用アプリをインストールすることで、誰でも利用できる。

 「市側でカタログポケット版のために必要な作業は、毎月半日程度にすぎません。翻訳は自動で行われますし、この分野はテクノロジーが日々進化しているので、翻訳の質もどんどんと高くなっていますね。特に市内にはベトナム人留学生が多く、また当市を含めた県全体ではタイ人の観光客も多いので、ベトナム語とタイ語に対応している点はポイントです」と桜沢さんは語る。

 また、自動翻訳や自動読み上げだけでなく、紙にはないアプリならではの多彩な情報提供アプローチも大いに評価している。

 「紙面だとせっかく取材して撮影させていただいても、限られた写真しか掲載することができません。それがカタログポケット版では写真を指でスライドすると、同じ時に撮影した他の写真など、スライドショー形式で表示することができるので、すてきな写真を無駄にすることが少なくなりました。『スライドショーに自分の子が写っていたので、欲しい』といった声が寄せられることもあります」(桜沢さん)

 ユーチューブとも連動しており、例えば市の広報PR動画を紹介する紙面をタップすると、リンクされた動画をその場で見ることができる。

 このような数々の特性もあって、アプリのダウンロード数は毎月着実に増えているという。アクセス元の地域も、市内はもちろんのこと、全国各地からと幅広いことから、その注目度の高さがわかる。

他の部署からの情報発信ツールとしても期待

 これまでの「広報こおりやま」での実績から、「MCCatalog+」に関心を示す部署が増えているという。

 桜沢さんは、「各部署でガイドブック等の冊子で情報発信を行っていますが、それらをデジタルで配信することも『MCCatalog+』で可能となります。特に関心が高いのが子育て関連の部署で、紙の冊子は印刷代がかかるうえ、〝冊子を持ち歩くのは重い〞といった声があるようで、いつも持ち歩くスマートフォンで済むようになるメリットは大きいのでしょう」と言う。また、「MCCatalog+」では情報のプッシュ通知も行えることから、災害情報など緊急情報の発信にも活用できると考えている。

 桜沢さんは、「避難所情報などを多言語でリアルタイムに発信できるというのは、在住外国人の方々の安心・安全につながるのではないかと期待しています」と結んだ。

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