最新法律ウオッチング
最新法律ウオッチング―新型インフルエンザ特措法等改正(2021年2月3日公布)
自治体法務
2021.07.09
最新法律ウオッチング 第110回 新型インフルエンザ特措法等改正
(『月刊 地方財務』2021年3月号)
新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律
2021年の通常国会において新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部改正法が成立した。
新型コロナウイルス感染症については、20年1月に、感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)上の指定感染症として政令で指定され、感染症法による入院等の対象となった。同年3月には、新型インフルエンザ等対策特別措置法が改正され、新型コロナウイルス感染症が暫定的(2年以内)に同法の適用の対象となり、政府対策本部の設置や緊急事態宣言等の同法による措置が講じられてきた。
政府は、感染拡大が続く状況を踏まえ、感染拡大を防止し、国民の生命と健康を保護するとともに、国民生活や国民経済への影響が最小となるよう、必要な法制を整えることが喫緊の課題であるとして、改正法案を国会に提出し、成立した。
新型インフルエンザ特措法等の改正
●新型インフルエンザ特措法の改正
緊急事態に至る前から実効的な感染症対策を講ずることができるよう、特定の地域において、国民生活や国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあるまん延を防止するため、まん延防止等
重点措置を創設することとした。
また、国と地方公共団体は、新型インフルエンザ等の影響を受けた事業者や医療機関等を支援するための必要な措置を講ずることとした。
これらの措置により、都道府県知事は、措置が必要な業態に係る事業を行う者に対し、営業時間の変更等を要請するとともに、必要な財政上の措置等の支援を行うこととした。正当な理由なく要請に従わない場合には、要請に係る措置を命令することができることとし、命令に従わない場合には過料に処することとした。
さらに、緊急事態宣言の対象となっている特定都道府県知事は、施設管理者等が正当な理由なく施設の使用制限等の要請に従わない場合には、要請に係る措置を命令することができることとし、命令に従わない場合には過料に処することとした。
このほか、国と地方公共団体は、新型インフルエンザ等の患者や医療従事者等の人権が尊重され、何人も差別的取扱い等を受けることのないようにするため、患者等に対する差別的取扱い等の実態の把握、患者等に対する相談支援、新型インフルエンザ等に関する情報の収集、整理、分析、提供や広報その他の啓発活動を行うこととした。
●感染症法・検疫法の改正
新型コロナウイルス感染症を、感染症法上の新型インフルエンザ等感染症として位置付けた。これにより、新型コロナウイルス感染症が、暫定的ではない形で、新型インフルエンザ等対策特別措置法の適用の対象となった。
また、厚生労働大臣と都道府県知事等は、緊急の必要があると認めるときは、医療関係者、検査を行う民間事業者等に必要な協力を求めるとともに、正当な理由がなく協力の求めに応じなかったときは協力するよう勧告し、従わない場合はその旨を公表することができることとした。
一定の新型インフルエンザ等感染症については、患者等に対して宿泊療養や自宅療養に関する協力を求めることができることとし、協力の求めに応じない者については、入院の勧告や措置の対象とすることができることとした。検疫法上も、宿泊療養や自宅待機その他の感染防止に必要な協力を求めることができることとした。
さらに、入院先から逃げた場合や正当な理由がなく入院措置に応じない場合、積極的疫学調査に応じない場合の罰則を設けることとした。
●施行期日
この法律は、一部を除き、公布の日(2021年2月3日)の10日後から施行された。
国会論議等
国会では、罰則等について与野党間で協議が行われ、その結果、感染症法について、入院先から逃げた場合等の罰則が、原案の1年以下の懲役か100万円以下の罰金という刑事罰が、50万円以下の過料という行政罰に修正され、積極的疫学調査に応じない場合の罰則も、原案の50万円以下の罰金という刑事罰が、積極的疫学調査に応ずべき旨の命令制度を設けた上で、命令違反につき30万円以下の過料という行政罰に修正された。特措法の罰則についても、過料の上限が、緊急事態における命令違反については50万円から30万円に、まん延等防止措置における命令違反については30万円から20万円にそれぞれ修正された。
また、特措法による事業者への支援について、事業者の規模等に応じた支援をすべきとの指摘があり、衆参の内閣委員会の附帯決議では、経営への影響の度合い等を勘案し、公平性の観点や円滑な執行等が行われることにも配慮し、要請に十分な理解と協力を得られるよう必要な支援となるよう努めるという項目が盛り込まれた。