議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

議会局「軍師」論のススメ 第42回 議会改革の努力の方向性は正しいのか?

NEW自治体法務

2021.01.07

議会局「軍師」論のススメ
第42回 議会改革の努力の方向性は正しいのか? 清水 克士
月刊「ガバナンス」2019年9月号

■大鑑巨砲主義の呪縛

 先日、広島・呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)を訪れる機会があった。展示テーマの戦艦大和は、世界最大の46cm主砲で艦隊決戦を制することを主眼に、国力を結集して建造されたものである。

 だが、既に世界では大艦巨砲主義の時代は去り、航空機が主役になると目されていた。日本にもそれを予見した人物がいなかったわけではない。むしろ、戦史上前例がない機動部隊(航空母艦を主力とした艦隊)単独の空襲によって勝利した真珠湾攻撃で、航空戦力の優勢を実証して見せたのは、現場トップの山本五十六連合艦隊司令長官である。

 しかし、「大和」「武蔵」に続く大和型戦艦3番艦として計画されていた「信濃」を空母に変更するなど、組織として戦略転換したのは、既に敗色濃い太平洋戦争末期であった。

 大艦巨砲主義の呪縛から逃れられなかった理由の一つには、日露戦争の日本海海戦で世界最強のバルチック艦隊を撃破した成功体験があると言われている。当時の航空機は主戦力とはなり得なかったが、艦隊決戦での成功体験が、その後の技術向上に伴う航空機時代到来の認識を阻害し、組織努力の方向性を誤らせたと言われているのである。

■議会報告会至上主義の呪縛

 議会改革の方向性についても、同様のことが言えないだろうか。視察対応時に、改革の優先順位に関連して、議会報告会を続ける意義について質問を受けることが多い。改革の最初に半ば義務的に継続するだけとなり、改革自体につまずく議会が多いのである。私は、参加者が少ないのはニーズがないということだから、止めて他の方法を模索して実施すれば良いと答えている。目的は議会への市民参加を促進することであって、議会報告会を行うことではないからだ。

 改革手法に、普遍的なものなどなく、その議会を取り巻く状況や時代によって、方向性や優先順位は自ずと異なる。時代は急激に変化しており、多数が実行してきたことだからといって現在も正解だとは限らない。

 あえて一般的な優先順位を示すなら、コンプライアンス徹底、情報公開度向上、議会機能強化である。

 コンプライアンス徹底の代表例としては、政務活動費の使途適正化やハラスメント対策である。これらは、市民に対する議会の信頼を保持するための最低限の改革である。情報公開度向上は、いわゆる「議会の見える化」である。議会を認知してもらうには、議会での議論を見てもらうことが大前提だからだ。議会機能強化は、主に政策立案機能発揮のための方法論の確立である。

■戦艦大和から学ぶべきもの

 いずれにしても、市民ニーズに応え、自分達の議会に適した戦略的方針を立てることが肝要である。

 他議会の成功手法に囚われず、自ら将来を見通した方向性を明確にし、求める結果に近づくために最適な手法を見極めることが必要だろう。成功例は、常に過去のものに過ぎないからだ。

 もとより政治は結果だと言われるが、プロセスにおける努力が評価されるのはアマチュアだけであり、プロの世界はどの分野でも、結果が全てである。努力は常に尊いが、その方向性を誤っては成果につながらない。それは、世界最大の主砲を装備しながら目ぼしい戦果を挙げないまま、敵艦載機に撃沈された戦艦大和の悲劇が証明している。

*文中、意見にわたる部分は私見である。

 

Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士
しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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