最新法律ウオッチング
最新法律ウオッチング―国際観光旅客税法(2019年1月7日施行)
自治体法務
2019.08.28
最新法律ウオッチング 第93回 国際観光旅客税法
(『月刊 地方財務』2018年5月号)
国際観光旅客税法(概要)
2018年の通常国会において、国際観光旅客税法が成立した。
政府は、観光を成長戦略の柱、地方創生の切り札と位置付け、20年に訪日外国人数を4,000万人とすることを目標としており、その達成に向けて、これまでにない高次元の施策を一気呵成に展開していく必要があるとしている。また、19年のラグビーワールドカップ、20年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、受入れ体制の充実を図る必要があるとしている。このため、観光施策の充実を図るための財源の確保について検討が行われてきた。
17年12月の与党税制改正大綱では、観光立国実現に向けた観光基盤の強化・充実を図る観点から、観光促進のための税として、我が国からの出国に広く薄く負担を求める国際観光旅客税を創設することとされ、同月の政府税制改正大綱でも、観光立国・地方創生の実現という項目において、国際観光旅客税の創設が盛り込まれた。
これを踏まえ、政府は、国際観光旅客税法案を国会に提出し、成立した。
国際観光旅客税法(詳細)
○納税義務者
航空機・船舶(政府専用機等の公用機・公用船を除く)によって我が国を出国する①出入国管理及び難民認定法による出国の確認を受ける者、②国際旅客運送事業(他人の需要に応じ、有償で、我が国と外国との間で航空機・船舶を使用して旅客を運送する事業)に使用される航空機により我が国を経由して外国に赴く旅客、③条約の規定に従うことを条件に我が国に入国する者を「国際観光旅客等」と定義し、国際観光旅客等は、国際観光旅客税を納める義務があることとした。
○課税の対象・非課税
国際観光旅客等による航空機・船舶による我が国からの出国を課税の対象とした。ただし、出国後、航空機・船舶が天候その他やむを得ない理由により外国に寄港することなく帰国した場合は、課税の対象としないこととした。
また、航空機により我が国を経由して外国に赴く旅客のうち入国後24時間以内に出国する者、天候その他やむを得ない理由により我が国に寄港した航空機・船舶に搭乗・乗船する者、2歳未満の者は、非課税とした。
○税率
国際観光旅客税の税率は、我が国からの出国1回につき、1,000円とした。
○徴収・納付
国際旅客運送事業を営む者は、国際観光旅客等が我が国からの出国のため航空機・船舶に搭乗・乗船する時までに、国際観光旅客税を徴収し、出国の日の属する月の翌々月末日までに、これを国に納付することとした。
これ以外の場合(プライベートジェットによる出国等)には、国際観光旅客等は、我が国からの出国のため航空機・船舶に搭乗・乗船する時までに、国際観光旅客税を国に納付しなければならないこととした。
○国際旅客運送事業の開始等の届出
国際旅客運送事業を開始しようとする者や廃止した者は、その旨を税務署長(一定の場合は税関長)に届け出なければならないこととした。
○施行期日等
この法律は、一部を除き、2019年1月7日から施行される。なお、この日の前に出国の日を定めて運送契約を締結した場合については、国際観光旅客税を課さないこととした。
国会論議
国会では、国際観光旅客税の使途について質問があり、政府から、入国時の待ち時間の短縮等の円滑・快適に旅行ができる環境の整備、我が国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化、地域固有の文化や自然等を活用した観光資源の整備による地域での体験・滞在の満足度向上の3分野に充当し、2018年度予算では、瞬時に顔を認証して入管審査を通過するゲートの整備等の施策に充当するとの説明がされた。なお、同時期に成立した国際観光振興法の一部改正法では、国際観光旅客税の収入をこれら3分野に充てる旨が規定された。
また、課税対象を外国人旅客に限定し、入国時に課税してはどうかとの指摘があった。政府から、国際観光旅客税を財源とする観光施策は、日本人を含む出入国環境の円滑化、利便性向上が含まれ、租税条約には、自国と相手国の国民を差別できないとの条項があることを踏まえて、課税対象に日本人も含めており、課税のタイミングについては、円滑な入国手続の観点に加え、諸外国においても出国時に一度だけ課税することが一般的であることを踏まえ、出国時に一度だけ課税することとしたとの説明がされた。
このほか、国際観光旅客税の収入を地方に譲与してはどうかとの指摘があり、政府から、各地方の空港や港湾で旅客が増えている現状を踏まえ、スムーズな出入国手続等の快適に旅行ができる環境の整備は国全体の喫緊の課題であることから、まずは国として対応することが適当との説明がされた。