会議の技術 第10回 会議で結論を導くには

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2019.08.02

こうすればうまくいく!会議の技術
事前準備からファシリテーションまで

第10回 会議で結論を導くには

(月刊『ガバナンス』2010年1月号)

 田中君は、これまで会議の技術を学び実践してきた。おかげで会議では、活発な議論が繰り広げられるようになった。

 ところが、ある会議で、参加者に発言を求めたところ、ああでもない、こうでもないと、議論は平行線の状態に陥ってしまった。

 ひとりの参加者が意見を述べると、それに反対する意見が飛び出す。さらに、その反対意見に対して、異なった意見が出てくる。時間が迫ってくる中、意見がまとまらない。これでは、結論が出ないまま終わってしまいそうだ。

 

意見の理由を述べて議論する

 会議で結論を出さなければ、それは単なる雑談だ。会議室がシーンと静まり返ってしまうのも辛いものだが、あまりにも多くの意見が飛び交い、結論が出ないのも困ったものだ。

 ある参加者が、「A案がいいと思います」と意見を述べたとしよう。その意見に対して、他の参加者が「いや、B案の方がいい」と反論する。そうなると、他の参加者が、「それだとA案の方がいい」と言う。

 活発に意見が飛び交うのはいいが、そのうちに、会議があらぬ方向に行ってしまうこともある。たとえば、「ちょっと話は変わりますが…」とか、「これには直接関係はありませんが…」などと、テーマに関係がない方向に進展してしまう。

 あるいは、参加者それぞれが自分の案に固執し始めるのも困りものだ。たとえば、「絶対にA案です」とか、「誰がなんと言おうともB案です」などと。そうなると、いくら話し合っても意見は交わらない。

 このように議論が平行線をたどると、ひとつの結論を導き出すのは至難の業だ。何が問題の原因だろうか。その原因は、参加者は単に意見を述べているだけだからだ。

 意見を言い放つだけの議論であれば、永遠に交わることはない。「A案だ」、「いやB案だ」と単なる言い合いにすぎない。きっと、声が大きな参加者か、権限を持っている参加者の意見が通ってしまう。これでは、話し合いの場をもつ必要はない。会議を開かずに決めてしまえばいい。

 議論とは、意見に対するその理由を示し、その理由について、あるいは、根拠となる事実について話し合うことだ。たとえば、「A案だと思います。というのは…」と理由を述べる。あるいは、「B案だと思います。その根拠は、このような事実があるからです」などと。そして、その理由や根拠となる事実について、建設的な話し合いをする。

 そうなれば、意見を修正したり、妥協したり、あるいは、全員が賛成できる案が新たに提案されたりする。つまり、結論に向かって議論が展開するわけだ。

結論を提案する

 参加者が問題意識と当事者意識をもち、積極的に意見を述べると、会議は活性化する。しかし、結論を生み出さなければ、会議は単なる参加者のストレス解消の場になるだけだ。

 議長が采配をふるって、参加者の発言をまとめたり整理をしたり、あるいは、意見をひとつの方向性に導いたりすると、議論が煮詰まってくる。新しい意見が出なくなったり、同じことの繰り返しになったりすると、これ以上、話し合いを続けても意味がない。

 そんな頃を見計らって、議長は結論を提案する。「それでは議論も煮詰まってきたようですので、結論を出したいと思います」とか、「これで、意見が出尽くしたと思います。全体的にC案に賛成の方が多いようですので、C案に決定したいと思いますが、いかがでしょうか」などと述べる。

 もし、議長が結論を提案しなければ、参加者は永遠に議論を続けるかもしれない。議長は、参加者の背中を押して、結論へと落とし込む。

 ただ、議長自身が「C案に決定します」と結論を決めてしまってはいけない。あくまでも、「C案に決定したいと思いますが、いかがでしょうか」と提案することだ。

 そうでないと、議長は会議をファシリテートする権限と、結論を決定する権限と、2つの権限を同時にもつことになる。これでは、開かれた会議とは言えない。

 参加者が、「どうせ、最初から結論は決まっているんだろうし…」とか、「最終的には議長が決めるんだろうから…」などと思えば、会議は意味のないものになってしまう。

 ただし、議論がデッドロックに乗り上げて、どうしようもない例外的な場合は、議長権限を行使してもよい。

 よくある話だが、ここで議長は「時間もなくなってきましたので、結論を…」と言う。これはやめた方がいい。時間がないから結論を出すというのは、本末転倒だからだ。十分に議論をしたから結論を出すと言う方が、参加者の納得性は高い。

決定基準を決める

 一般に、会議で結論が決まらない最大の原因は何だろうか。それは、決定する基準がない、あるいは、それが参加者によってバラバラ、ということだ。

 たとえば、A案とB案が出され、いずれかに決定する場合、何を基準とするだろうか。好き嫌いで決めるのは論外としても、何らかの正当な基準がなければならない。

 A案は効率的である。B案は効果的である。この2つの案のいずれかを採用する場合、効率的であることが大切なのか、効果的であることが重要なのか、その基準を決めなければならない。ある参加者は効率性が重要だと思っている。他の参加者は効果性が重要だと思っている。そうであれば、この議論から結論を導き出すことはできない。

 そこで、議長は決定基準をもっていることが必要だ。この案件では、効率性よりも、効果性を優先するなどと。その基準が明白であれば、議長は、「この案件では、効果性が最も優先しますので、効果性という観点から、B案で決定したいと思います。いかがでしょうか」と結論を提案する。

 もし、決定基準が明白でなければ、決定基準そのものを参加者に諮らなければならない。たとえば、「結論を出す前に、決定基準を話し合いたいと思いますが、ご意見はありますか」などと促す。

 ここでも議論が平行線になったら、どうするか。本来は参加者全員が合意することが大切だが、最終的には多数決で決定すればいい。しかし、数で押し切ることの問題点も多い。どうすればいいだろうか。

 採決をする前に、少数派に対して、多数派を説得する機会を与えることだ。たとえば、少数派に対して、「採決の前に、再度、皆さんを説得する機会を差し上げますので、説得を試みてください」と言う。

 もし、説得が成功すればそれでいい。たとえ説得が成功しなくても、機会を与えられたということで、納得性は高い。参加者に自由に発言する機会を与えること、そして、少数派を尊重し民主的に決定することは、組織における会議の前提だ。

著者プロフィール

八幡 紕芦史(やはた ひろし)

経営戦略コンサルタント
アクセス・ビジネス・コンサルティング(株)代表取締役、NPO法人国際プレゼンテーション協会理事長、一般社団法人プレゼンテーション検定協会代表理事。大学卒業とともに社会人教育の為の教育機関を設立。企業・団体における人材育成、大学での教鞭を経て現職。顧問先企業では、変革実現へ、経営者やマネジメント層に支援・指導・助言を行う。働き方改革への課題解決策として慣習の”会議”から脱皮を実現する鋭い提言で貢献。著書に『会議の技術』『ミーティング・マネジメント』ほか多数。

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