自治体債券運用のイマ

月刊「地方財務」

【自治体債券運用のイマ 特別編】全自治体対象 債券運用アンケート結果報告(速報)

NEW地方自治

2025.12.26

『地方財務』2026年1月号

【特別企画】自治体債券運用のイマ 特別編

全自治体対象 債券運用アンケート結果報告(速報)

基金運用に関するアンケート

 特別連載「自治体債券運用のイマ」は2025年1月号より開始。今回、本企画の1周年の特別企画として、個別自治体へのアンケートを実施した。アンケートは本誌の定期購読者への送付に加えて、アンケート回収代行を行った大和証券㈱からの案内等で周知を行い、全国の自治体へのヒアリングに基づき『債券運用のイマ』その最新に迫った。11月からわずか1か月間の期間で集計したアンケートは、全国計376団体から回答が得られた。

図表1 アンケート回答団体・回答者の属性状況
(2025/11/5~12/5集計分)

図表1 アンケート回答団体・回答者の属性状況

自治体の債券運用は拡大傾向

 まずは、基金管理における債券運用の実態に迫る。アンケート回答団体のうち、334団体(およそ9割)が既に債券運用を実施していると回答した(図表2参照)。債券運用実績のある団体の中では、今後の債券比率については「現状維持」という声が最も多くあがった一方、「比率を引き上げる」(=債券運用を拡大させる)は3割程度、「比率を引き下げる」(=債券運用を縮小させる)は1割未満に。検討中の22団体についても、そのおおよそ半数が今年度から来年度にかけて債券運用を開始する方針があると分かるなど、今後も自治体における債券運用の拡大が想定される結果が見えてきた。

図表2 基金管理における債券運用の有無
(2025/11/5~12/5集計分)

図表2 基金管理における債券運用の有無

基金運用に取り組むに当たっての課題

 回答団体の多くが債券運用を行っている反面、債券運用を行っていない団体ではどういった課題を抱えているのだろうか。図表3は、図表2で示した債券運用検討中の団体、債券運用を行っていない団体から「債券運用に踏み出せない要因」をヒアリングした結果だ。最も多くあった回答は「知識・体制不足」といった組織的な課題と、「財政規模が小さく、運用余力がない」といった財務的な課題だった。本アンケートでは、知識・体制面の状況調査確認として、基金運用業務に携わる担当者の人数、専属担当の有無、外部専門家の助言受入、その他セミナー・発行体面談の活用の有無もヒアリングしている。その結果は、図表4のとおりである。基金運用業務は、多くが「1〜2名」体制で行っており、ほとんどの団体で専任担当者を設置していない。歴史的な金利上昇を受け、債券投資等を通じて「基金で稼ぐ」ことが求められる中でも、多くの団体で体制整備が整っていないことが分かった。

図表3 現状、債券運用を行っていない団体の声
―“検討中”もしくは“債券運用なし”と答えた団体―
図表3 現状、債券運用を行っていない団体の声


図表4 基金運用業務の体制、外部からの情報受入状況
図表3 現状、債券運用を行っていない団体の声

 自治体の職員の多くが、金融商品の知識に精通しているわけではないが、外部からの情報インプットの一環として証券会社からのセミナーを活用していることが見えてきた。発行体とのIRは、聞き馴染みのない言葉かもしれないが、本誌25年3月号で特集した愛知県春日井市においても「証券会社とのやりとりで債券や金融の知識が得られ、また発行体のIR活動を通じて債券運用の意義と有効性が学べるなど〜後略〜」とIRを通じて外部から情報をインプットしている旨の発言があった。民間の金融機関からの情報だけでなく、債券発行体から直接情報をインプットすることも約3分の1程度の団体が行っていることがアンケート結果から見えてきた。

どんな債券を購入しているのか

 「債券購入」と言っても、世の中には様々な年限・発行体の債券が存在している。実際、債券運用を行う団体はどんな債券を購入しているのだろうか。図表5では、今年度購入した債券の年限についての回答状況をまとめている。最も回答が多かったのは「中期(1年超5年以下)」だった。次に多かったのが「長期(5年超10年以下)」で、今年度は中期から長期年限を中心に債券購入している団体が多いようだ。1年以下の短期債や20年超の超長期債を購入する団体はそこまで多くないことがアンケートを通じて見えてきた。足許、日本銀行による金融政策の転換を受けて、金利水準は切り上がっており、月5日に条件決定した5年地方債で1.507%、10年地方債で2.062%をつけた。11月19日に条件決定した2年財投機関債は0.920%だ。2年財投機関債を1億円購入すれば年間90万円程度、10年地方債を1億円購入すれば年間200万円程度の利金収入が入る計算だ。

図表5 今年度購入した債券の年限
図表5 今年度購入した債券の年限

 地方債・財投機関債を事例に挙げたが、年限の次は債券の種類を見ていく。図表6では、現在投資している債券・金融商品の種類をヒアリングした結果をまとめている。回答割合が4割を超えたのは「国債」「地方債」「JFM債」「財投機関債」の4つの債券だった。JFM債は地方公共団体金融機構(JFM)の発行する債券、財投機関債は政府関係機関や独立行政法人等が財政投融資の対象事業で発行する政府保証のない市場公募債のことだ。過去の個別自治体(那須塩原市・春日井市・相模原市)の取材でも、各債券について購入実績が紹介されている。その他にも、道路会社債(ネクスコ各社等)や電力債など特定の事業を行う会社の債券の投資についても確認ができる。今回は333団体の回答結果ではあるものの、公共性の高い発行体の債券を選好していることが分かる結果となった。今回のアンケートは債券投資にフォーカスしているものの、一部の団体では「株式投資」についても回答が見られており、債券購入に留まらず幅広い選択肢の中から投資する先を検討する姿が見えた。

図表6 現在投資している債券・金融商品の種類
図表5 今年度購入した債券の年限
上記商品以外に、SDGs債・円建外債等の回答があった。

もっと詳しくクローズアップ!

今後も個別取材を通じて情報発信

 図表2掲載の債券運用に取り組んでいない団体からは、今後の検討に当たって「他自治体の事例紹介」を希望する声が多く上がった(回答のあった38団体中35団体)。連載「自治体債券運用のイマ」を通じて、25年1月以降、栃木県那須塩原市・愛知県春日井市・神奈川県相模原市・大分県国東市・群馬県・東京都・岩手県の基金運用等に関する取り組みを発信してきたが、26年度も個別自治体への取材を通じた情報発信を継続していきたい。

 

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特別連載「自治体債券運用のイマ」【再掲】全自治体アンケートご協力のお願い


【アンケート回収及びレポート作成協力/大和証券株式会社 】
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