
ガバナンスTOPICS【イベントレポート】
埼玉フードパントリー利用者調査からひとり親世帯の支援を考える/イベントレポート
地方自治
2025.12.03
出典書籍:『月刊ガバナンス』2025年11月号
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【ガバナンス・トピックス】
フードパントリー利用者調査からこれからの支援を議論
──シンポジウム in 埼玉 子育て応援フードパントリーを考える Part2
NPO法人埼玉フードパントリーネットワーク(SFPN、草場澄江理事長)は9月6日にシンポジウムを開催した。当日は、同法人と明治大学専門職大学院ガバナンス研究科(公共政策大学院)が共同で行ったひとり親世帯の生活実態調査の報告を実施。これを皮切りに、子育て支援・貧困支援に関わる自治体職員やNPO団体関係者らがひとり親世帯の支援に関する様々な意見交換を行った。
ひとり親世帯の課題とは
今回のシンポジウムは「子育て応援フードパントリーを考えるPart2―子育て応援フードパントリー利用者の生活実態調査からみえるもの─」と題し、フードパントリー利用者の実態をより多くの人に知ってもらおうとSFPNが主催しました。


会場とオンラインで合わせて150人を超える参加者が、ひとり親世帯の支援について意見を交わした。
第1部:「埼玉もうひとつの子どもの生活に関する実態調査」について
草場理事長の開会挨拶に続いて、第1部は明治大学専門職大学院ガバナンス研究科の大山典宏専任教授が登壇。SFPNとの共同調査「埼玉もうひとつの子どもの生活に関する実態調査」について基調講演(調査報告)を行った。
調査の概要
同調査は、2024年5月20日~8月31日に、SFPNに加入しフードパントリーを利用している埼玉県内の2993世帯に対して実施したもの。
①県や内閣府による「子供の生活に関する調査」などの行政調査との比較
②特定地域における包括的な生活実態の把握
③特定地域における潜在的要支援層のニーズ把握
──の3点で「全国初」の調査となった。
調査結果の報告
調査では、SFPNの利用世帯のうち64.3%が相対的貧困状態、48.7%が年収200万円未満であることが判明。心理的苦痛(うつ病や不安障害など)を感じている人は53.5%に上り、これは県調査の3倍を超える数値だった。また、「食料を買えなかった経験がある」と回答した人も56.1%と多かった。
対象世帯の約8割が離婚者であり、うち、養育費を受け取れているのは3人に1人(33.9%)。一方、「いざという時のお金の援助を頼れる人がいる」と答えた人は、全体で32.1%にとどまった。このように、食料支援を受けるひとり親世帯は経済的困難だけでなく、周囲からの孤立やメンタルヘルスなどの課題を抱えていることが明らかになった。
結果を受けて
結果を受け大山教授は「ある特定の層に苦しさが集約されてしまっている」と指摘。「全国に普遍的にある状況ではないか」とし、
■経済的支援の強化
■雇用の場の創出
■公的支援の周知と利用促進
■メンタルヘルス対策
■子育て応援フードパントリー体制整備
──の5つの提言をした。
第2部:ディスカッション
第2部ではSFPNの田村信征理事がファシリテータとなり、ディスカッションを実施。自治体職員やNPO関係者から現場目線の意見が飛び交い、ネガティブになりがちな当事者へのアプローチの方法や子どもを取り巻く社会全体への疑問に関し、未来を見据えた議論が行われた。
最後に:草場理事長より
最後に、草場理事長は、「家庭環境にかかわらず多くの子どもたちが希望に満ちた未来を築くためには、一人ひとりの地道な取り組みや、周囲との連携が欠かせない」とまとめ、継続的な活動や積極的な参画を呼びかけた。
(本誌/後藤花奈・呉 有里子)
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特集1:地域はつづくよどこまでも
──持続性ある農山村の未来を描く
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