ガバナンスTOPICS【イベントレポート】
【マニフェスト大賞2024】全受賞者を紹介/イベントレポート
NEW地方自治
2025.02.17
(『月刊ガバナンス』2025年2月号)
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【ガバナンス・トピックス】
善政競争を拡げる取り組みを表彰
──第19回マニフェスト大賞授賞式&トップランナーに学ぶ受賞事例研修会
2024年11月15日に「第19回マニフェスト大賞」授賞式が都内で行われた。互いに競い合うようにまちづくりを進める「善政競争」の輪を拡げる優れた取り組みが表彰された。また、授賞式前日の11月14日には、同賞優秀賞受賞事例を学ぶ研修会が行われ、受賞者らがプレゼンを行い、参加者らの学びと交流の場となった。
多様な取り組み事例を評価
19回目を迎えた日本最大の政策コンテスト「マニフェスト大賞」(主催:マニフェスト大賞実行委員会/共催:早稲田大学マニフェスト研究所、毎日新聞社)。応募総数は昨年に続き、3000件を超えた。
北川正恭審査委員長(早稲田大学名誉教授)が三重県知事時代の2003年にマニフェストを提唱してから20年以上が経過。善政競争のきっかけやその範となる多くの取り組みが表彰されました。
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第19回では、受賞部門が以下の4つに再編成。主権者の意識改革や参画を促すような取り組みを表彰することとした。
・ローカル・マニフェスト部門(首長/議員・会派)
・シティズンシップ部門
・議会改革部門
・政策・まちづくり部門
また、エリア選抜(優秀賞候補)に選ばれた取り組み(105件)の中から「インターネット投票特別賞」を選出する新たな試みも実施された。
今回の授賞式は虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区)を会場に開催。審査委員会による厳正な審査のもと選出された各部門の計38件の優秀賞のほか、特別審査委員による「特別賞」なども発表された。さらに、優秀賞の中から最優秀賞が選出され、その中から1件がグランプリとして表彰された。
第19回マニフェスト大賞授賞式は虎ノ門ヒルズで行われた。
審査委員会と、各部門の優秀賞と特別賞は以下のとおり。
【審査委員会】
・北川正恭(審査委員長)
・曽根泰教(慶應義塾大学大学院名誉教授)
・江藤俊昭(大正大学地域創生学部教授)
・廣瀬克哉(法政大学総長)
・千葉茂明(公益財団法人日本生産性本部上席研究員)
・藤森克彦(日本福祉大学福祉経営学部長・みずほリサーチ&テクノロジーズ主席研究員)
・西尾真治(三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員、コンセンサス・デザイン室長)
・人羅格(毎日新聞社論説委員)
・定金基(NPO法人カットジェイピー理事)
・土山希美枝(法政大学法学部教授)
【特別審査委員】
・箭内道彦(クリエイティブディレクター)
・秋吉久美子(女優)
●ローカル・マニフェスト部門(首長)
▼ 菅原文仁(埼玉県戸田市長)
「命とくらしを守る公約で、市民の『このまちで良かった』を実現」
▼ 熊谷俊人(千葉県知事)
「~千葉の未来を切り開く~『まち』『海・緑』『ひと』がきらめく千葉の実現」
▼ 金子ゆかり(長野県諏訪市長)
「コンパクトシティー化計画と同時並行で進める小中学校の再編と人口減少時代に対する市民理解の推進」
▼ 岡村秀人(愛知県大府市長)
「『知は、現場にあり。』徹底した現場主義によるマニフェストの推進」
【最優秀賞】
▼ 上定昭仁(松江市長)
「みんなに身近で親しみやすい総合計画『MATSUE DREAMS 2030』」
ローカル・マニフェスト部門(首長)で最優秀賞を受賞した上定昭仁・松江市長。(右は優秀賞の岡村秀人・愛知県大府市長)
●ローカル・マニフェスト部門(議員・会派)
▼ 北上市議会 北上まほろばクラブ(岩手県北上市)
「無投票回避大作戦!~新人候補者の『発掘・育成・支援』~」
【審査委員会特別賞】
▼ 高橋まきこ(東京都中央区議会議員)
「区民の涙から生まれたマニュフェストの実現『一時預かり保育のオンライン予約』政策実現までの10年間」
【最優秀賞】
▼ よこはま自民党(自由民主党横浜市支部連合会・自由民主党横浜市会議員団)(横浜市)
「よこはま自民党ローカルマニフェストで市民と約束した『こども条例』の制定・その後」
●シティズンシップ部門
▼ 北海道松前高等学校、函館新聞社(北海道松前町)
「地方の首長選挙における候補者のマニフェストを活用したリアル型模擬投票の実践」
▼ 弘前大学教育学部政治学研究室(青森県弘前市)
「税金を使ってまちづくり 小学生にも分かりやすい予算策定体験型授業の開発」
▼ students changing education(東京都荒川区)
「教育政策に学習者の声を反映させより良く変えていく」
▼ 諏訪玲子(東京都国分寺市)
「行政施策をやいのやいのする~シティズンシップを醸成する学びの機会としてのパブコメの活用~」
▼ 小川修一(長野県千曲市長)withハンマーバード
「日本で一番、こどもの意見を聴いて応える、対話する市役所」
▼ 岐阜県若者の選挙意識を高める会(Novolt)(岐阜市)
「小学生が『権力の監視』を考える─大学生・学校・選管・大学がコラボした授業設計・実施・検証─」
▼ パブリックコメント普及協会(京都市)
「パブコメはたのしい!─対話型パブコメを全国へ─」
【審査委員会特別賞】
▼ まちのBAR実行委員会(神奈川県茅ヶ崎市)
「市議がマスターになる まちのBAR」
【審査委員会特別賞】
▼ 選挙コンシェルジュ(松山市)
「若者主体の選挙啓発!投票までの案内役『選挙コンシェルジュ』」
【最優秀賞】
▼ チーム安野(東京都中央区)
「2024年東京都知事選挙における参加型マニフェストの取り組み」
●議会改革部門
▼ 北海道栗山町議会
「栗山町議会議員のなり手不足問題に挑む~『議員の学校』開校!」
▼ 北海道芽室町議会
「議会改革『第3ステージ』への飛躍「議会基本条例の実践~条文が真に生かされる議会活動~」
▼ 岩手県奥州市議会
「『奥州市議会ICT推進方針』の実践~生成AI等の活用による更なる議会改革の推進~」
▼ 神奈川県藤沢市議会改革推進会議
「究極の議員間討議を実現!『藤沢型政策検討会議』」
▼ 兵庫県西脇市議会
「さらなる進化を目指して!議会報告会のターゲットを拡大!!」
▼ 奈良県王寺町議会
「広報の改善からはじまった議会改革への道─住民・議員の行動変容─」
▼ 宮崎市議会
「新たな広報広聴への挑戦~デジタルとリアルの融合でつくる~『宮崎市議会DX みやだん』」
【最優秀賞】
▼ 兵庫県丹波市議会
「夢を語ろう 未来へつなごう 丹波市議会☆ミライプロジェクト」
議会改革部門には、受賞常連議会だけでなく新たな議会も選ばれた。
●政策・まちづくり部門
▼ 吃音経験者参議院議員杉尾秀哉及び超党派議員ネットワーク(協力:当事者団体)(千葉県松戸市)
「3歳児健康診査の問診票に『吃音』を明記する自治体は1% 吃音が十分に発見されていない恐れが明らかに」
▼ 山本ひろこ(東京都目黒区議会議員)
「父母会で始めた学童弁当サービスが、試行5年を経て目黒区公式で導入されました!」
▼ NPO法人全国ひとり親居住支援機構、東京都豊島区住宅課
川瀬さなえ(豊島区議会議員)(東京都豊島区)
「豊島区プロジェクト~政官民で協働した空家活用シングルマザーシェアハウスの実践~」
▼ 東京都町田市
「施工管理アプリの新たな可能性~〝あったらいいな〟の実現に向けて~」
▼ 保育園からおむつの持ち帰りをなくす会(大阪市)
「当たり前を見直し、子育てが楽しいと思える社会を行政とともに創る~保育施設から使用済みおむつを持ち帰る問題~」
▼ 塚理(大阪府茨木市議会議員)
「地域から国を変えた!!子ども達の未来のために~ワクチンの予防接種記録の問題点のカイゼンの成果~」
▼ たかのしん(兵庫県西宮市議会議員)
「その計画、本当に必要ですか?~計画策定業務の見直し~」
▼ 徳島県海岸漂着物対策協議会(徳島県小松島市)
「海ごみゼロを目指して海なし議員も含む基礎自治体議員が挑んだ2年間」
▼ 前田学浩(高知県南国市議会議員)
「社会教育を地方創生のメインストリームに!」
▼ 志免町子どもの権利相談室・志免町子どもの権利救済委員(福岡県志免町)
「『子どもの権利相談室』の相談員による手書きでの、小学校児童との『お手紙交換』・中学校生徒への相談対応」
▼ 柳谷自治公民館(やねだん)(鹿児島県鹿屋市)
「行政に頼らない地域づくり~集落民の手作りで多彩な事業を展開~」
【最優秀賞】
▼ 小山祐(愛知県みよし市長)
「市独自施策による会計年度任用職員(非正規公務員)の処遇改善」
また、「議会改革部門」で、飛躍と成長が著しい議会改革を中心に表彰する「躍進賞」には以下の三議会が選ばれた。
●議会改革部門(躍進賞)
▼ 北海道下川町議会
「高校生@議会をブラッシュアップ~『議会見学』から『理事者への一般質問(再質問あり)』に至るまで~」
▼ 山形県酒田市議会
「『800位からの大逆襲!』議会改革の取り組み
▼ 千葉県御宿町議会
「失敗したって次に生かせばいい。最速フットワークで議会が町を牽引する。」
●特別賞(箭内道彦選)
▼ 特定非営利活動法人栃木県こども応援なないろ
皆川純子(栃木県宇都宮市)
「学校内フードパントリー」
●特別賞(秋吉久美子選)
▼ 松島完(東京都文京区)
「新科目『公共』のデザイン= My→Our の実践」
▼ 一般社団法人中部地域づくり協会(名古屋市)
「『守られる人から守る人へ』~未来へ繋ぐ防災啓発~」
●インターネット投票特別賞(第一位)
▼ 至学館大学仲間をまもり隊(愛知県大府市)
「事故や災害に直面した際、『私こそと立ち上がる』人になることによって主権者としての意識も強くなる。」
各部門から最優秀賞を選出
各部門の中から最優秀賞が1件ずつ選出された。
ローカル・マニフェスト部門(首長)
▼ 上定昭仁(松江市長)
「みんなに身近で親しみやすい総合計画『MATSUE DREAMS 2030』」
「ローカル・マニフェスト部門(首長)」では、上定昭仁・松江市長が選ばれた。市民目線のマニフェストと総合計画を連動。また、目指す将来像に向けてバックキャスティングの手法によって、市民が自分事として共感し、「主人公」となってチャレンジする総合計画を策定している。中高生などが地域を学ぶ教材としても活用するなど、若者へのアプローチも評価された。
北川審査委員長は、「的確にマニフェスト・サイクルを回している取り組み。市民も巻き込みながら行っている好事例だ」と評価した。
ローカル・マニフェスト部門(議員・会派)
▼ よこはま自民党(自由民主党横浜市支部連合会・自由民主党横浜市会議員団)(横浜市)
「よこはま自民党ローカルマニフェストで市民と約束した『こども条例』の制定・その後」
「ローカル・マニフェスト部門(議員・会派)」では、よこはま自民党が選ばれた。よこはま自民党は3年連続の最優秀賞選出となった。
人羅審査委員は「3年連続の受賞は、会派としてのマニフェスト・サイクルを確立している証拠だ。また、サイクルだけでなく、制定したこども条例の中身も実効性があり、超党派で取り組んでいる点も評価した」と講評した。
シティズンシップ部門
▼ チーム安野(東京都中央区)
「2024年東京都知事選挙における参加型マニフェストの取り組み」
「シティズンシップ部門」ではチーム安野が最優秀賞に。2024年東京都知事選挙に立候補した安野貴博さんが公開したマニフェストでは「きく、みがく、つたえる」の3ステップで都民の声を取り入れながら、選挙期間中に政策をアップデートした。また、アップデートした内容を「AIあんの」の応答に反映することも行った。選挙期間中に政策をアップデートし、AIを使った新たなマニフェスト選挙を展開したことが評価された。
議会改革部門
▼ 兵庫県丹波市議会
「夢を語ろう 未来へつなごう 丹波市議会☆ミライプロジェクト」
「議会改革部門」最優秀賞には、丹波市議会が選ばれた。近隣の福知山公立大学(京都府)と連携しながら、市内の3高校と双方向的な議論や交流を進め、大学と高校生らが意見交換を行いながら課題抽出や政策のアイデアを出し合い、議論を継続的にしている。その議論を、本会議で高校生が提案内容として公表し、それらは市長に伝えられたり、常任委員会での調査対象とし活用されるなど、実効的な取り組みとなっている。
江藤審査委員は、「単に若者に議会に関心を持ってもらいたいというだけにとどまらず、高校生らの意見を政策サイクルに入れ込む取り組みは議会改革の本道を行っている」と講評した。
政策・まちづくり部門
▼ 小山祐(愛知県みよし市長)
「市独自施策による会計年度任用職員(非正規公務員)の処遇改善」
「政策・まちづくり部門」では、愛知県みよし市の小山祐市長の「全国初 市独自施策による会計年度任用職員の処遇改善」が選ばれた。西尾審査委員は「社会的な課題に果敢に取り組んだ事例だ。わずか3か月という短期間で実行している点も特筆すべき点だ」と評価を述べた。
「グランプリは「チーム安野」の元へ」
最後に、最優秀賞の中から選ばれるグランプリには「チーム安野」が選出された。
グランプリには「チーム安野」が選出。
北川正恭審査委員長は、「グランプリの選出は、審査委員会でも意見が割れたが、新しい民主主義の地平線を切り拓いた『チーム安野』が選ばれた。今日の受賞者を超えるような事例が出てくることが、善政競争がさらに拡がるということ。気づきの連鎖が生まれることで地域から日本を変えることにつなげていってほしい」と述べ、第19回目のマニフェスト大賞受賞式を締めくくった。
北川審査委員長は「地方から国を変えよう」と呼びかけた。
事例を直接学ぶ研修会も開催
授賞式の前日には、都内で「トップランナーに学ぶ受賞事例研修会」が開催された。優秀賞を受賞した事例を受賞者らが一堂に会し、直接取り組みへの想いなどその場で(一部オンライン)を熱くプレゼンテーションした。
会場の参加者らとの質疑応答や交流も積極的に行われ、学び合いの中から善い事例を取り入れ、同賞が目指している善政競争の輪を拡げる機会となった。
受賞事例研修会では、活発に意見交換が行われた。
(本誌/浦谷 收)