連載 vol.15「つながる」力 行政と住民とのつながりが休廃校備品に新たな価値を創造!──つながりがつながりを生む成功体験 【藤田浩司(広島・庄原市職員)】

地方自治

2021.09.20

本記事は、月刊『ガバナンス』2015年6月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。
所属等は執筆(掲載)時点のものです。
※本コラムは主に自治体職員によるネットワークのメンバーがリレー形式で執筆します。

行政と住民とのつながりが休廃校備品に新たな価値を創造!──つながりがつながりを生む成功体験

 2015年3月29日、中国山地のど真ん中に位置し、高齢化と人口減少に喘ぐ広島県庄原市は、早朝から普段の静かな里山の風景とは違い、市内外から集まる多くの車と人で溢れていた。年間休校となり静まり返った庄原市立田川小学校で、「廃校ノスタルジアin庄原」と銘打った学校備品の販売イベントが行われ、学校備品(理科の実験道具や楽器、給食の食器など)を求める人々が詰めかけていたのである。

 休廃校の備品を廃棄せず、販売する取り組みは、広島県大竹市が昨年11月に「廃校ノスタルジア」として実施していた。庄原市は、大竹市の取り組みを真似て、その4か月後のスピード開催に踏み切った。結果、1600人を超える方々が来校、約150万円を売り上げた。しかし、この取り組みは、来校者数や売り上げの数値だけで成功事例と語られるものではない。

 最大の成功要因は地元の人たちや市民団体、学生といった民間の方々と一緒に取り組んだことにある。長年休廃校で眠っていた備品は、行政目線では使い道がないとされ、多額の処分費を計上し、廃棄処分されていた。その反面、民間目線では、学校備品という付加価値が付き、味わい深い品々は宝の山とされ、この視点を優先的に取り入れたことで人を惹きつける取り組みとなった。

 行き場を失っていた学校備品に、新たな価値を創造し、財産と認識させたのは、行政と民間の方々がつながったからこそである。取り組みを始めた当初、「そんなことをしないといけないのか?」「休廃校の備品に価値があるのか?」などの意見が続出、開催当日まで囁かれた。

 そんな意見を覆す結果を導けたのも、準備から当日まで一緒に汗をかいた民間の方々のおかげであり、この取り組みは、つながる力を肌で感じるよい機会になったと思う。また、民間同士の新たなつながりを生んだことも大きな成果である。現在、「次回はいつ開催されるのか?」という問い合わせが後を絶たない。庄原市は、この成功体験を次の成功体験につなげるよう、すでに動き始めている。

(広島・庄原市職員/藤田浩司)

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