月刊「ガバナンス」特集記事

ガバナンス編集部

月刊 ガバナンス 2024年12月号 特集:自治・地域をめぐる私の論点2024→2025

NEW地方自治

2024.11.27

●特集 自治・地域をめぐる私の論点2024→2025

2024年も残すところあとわずかとなった。元日に起きた能登半島地震をはじめとする自然災害、酷暑、2024年問題、人口減少、“消滅可能性自治体”、等々……厳しい対応を迫られる中、各地で自治体職員や住民による粘り強い取り組みが行われている。 2025年はどんな1年になるだろうか。年の変わり目にあたり本特集では、デジタル、教育、福祉、観光といった、さまざまな分野の第一線で活躍する執筆陣に、自治・地域をめぐる課題の現在地とこれから、制度の潮流、自治体がすべきこと、住民にできること──など、2024年の振り返りと2025年に向けての展望を記してもらった。

■〈地域〉SDGsのその先、農村都市共創の一歩

平井太郎さんの写真

平井太郎
弘前大学大学院地域社会研究科教授

農村と都市の人びとが、私たちの幸福な未来とともにある自然について、あらためて五感で確かめ、現場を起点に価値観をすり合わせることで、SDGsのその先にある幸福な自然なるものも、具現化され未来に受け継がれてゆくだろう。

■〈農業/農村〉持続可能な中山間地域と農業/真田純子
過疎対策や地域活性化の取組みには、過疎により引き起こされる問題への対応と、過疎そのものの解消の二つがある。そのうち、過疎そのものの解消には若い人が住める地域にすることが重要で、収入源としての産業の振興が欠かせない。農村の産業は農業など一次産業中心であることが多いため、本稿では持続可能な中山間地域を叶えるために重要となる一次産業に焦点をあてて考えたい。

■〈SDGs〉自治体はSDGsをどのように使うことができるのか/高木 超
今や、広く知られるようになったSDGs。しかし、自治体業務でどのように使ったら良いか、頭を悩ませる職員も多いのではないか。そこで本稿では、いくつかの事例を交えながら、業務でSDGsを活用する三つの視点を提案する。SDGsの視点を政策・施策・事業の立案段階から組み込んでいくことで、想像もしなかった飛躍をもたらしてくれるはずだ。

■〈人的資本経営〉自治体における「人的資本経営」の可能性/林(小野) 有理
減少の一途を辿る人材を、めざすべき職員像に揃えているだけでは、これからの自治体業務は務まらない。個々の個性の掛け合わせにより最大の価値を提供できる集団へと変貌させる人的資本的な考え方が必要になるだろう。2025年が自治体の人的資本元年になればと願いつつ、本稿がその小さなきっかけになれば本望だ。

■〈市民ファンド〉市民コミュニティ財団から見える景色/山口美知子
今までは、社会課題の解決と金融等の関係に関する議論の中で、「地域」という視点はほとんど見つからず、地域の実情とはかけ離れていた。しかし、2024年は、「地域」のインパクトが国レベルの議論の俎上に載せられた年となった。全国で次々と市民コミュニティ財団が設立されており、設立準備にとりかかっている地域も多い。2025年、全国の仲間たちとともに、地域の現場の声を翻訳しながら多様なセクターに届けるチャレンジを始めたい。

■〈教育行政〉教育村・学校村からの脱却/戸ヶ﨑 勤
学校は内側からしか変えられない。そこで、「隗より始めよ」の精神で、まず教育委員会が積極的に外部の企業や人材と連携し、最先端の知のリソース等を取り入れてきた。また、「児童生徒の出ていく社会を知ろうとしないのは極めて不誠実」と学校管理職に語り続け、「凡庸な90点の取り組みよりも、60点でも夢のある挑戦を」など、学校の「自走」を支援する姿勢を根気よく伝え続けてきた。

■〈こども家庭福祉〉「境界」をなくすことができるのか!?──こどもとおとなが分断している社会/川口正義
日本国内を俯瞰したとき、「こども(が生きる世界)」と「おとな(社会)」との間にも、目に見えない「壁(境界)」が存在しているように、筆者には感じられてならない。私たちおとながそれぞれの立場と領域のなかで何を自問し、こどもとの間にある「壁(境界)」を取り除くためにいかなる行動を起こしていけばいいのか、本稿ではその糸口を探ってみたい。

■〈地域交通/観光〉7年目のグリーンスローモビリティ概括と観光行政官への期待/三重野真代
地域交通分野でグリーンスローモビリティが担う潜在需要は、全国で着実に増してきている。また、今後も地域の営みや行政サービスを安定的に維持するためには、ふるさと納税、輸出、観光など“外の力”を“中の力”に転換する力が求められるだろう。本稿では、グリーンスローモビリティと観光、二つのテーマについて、近年の自治体での取り組みや、行政が担うべき役割について考えたい。

■〈宇宙×地域〉宇宙×地域創生でみえた、いま、自治体に必要なものとは?/円城寺雄介
今後、自治体の宇宙参入は当たり前になっていくだろう。本稿では宇宙政策について、自治体の先進事例を①まちづくり型、②産業振興型、③課題解決型、三つの型に分け紹介するとともに、筆者が「宇宙×地域創生」を進めていく中でみえてきたものについてもお話ししたい。

■〈デジタル〉デジタルで住民の「声」を実現する/山形巧哉
地域住民はそれぞれのライフスタイルを貫きながら、快適に生活できる環境を求めている。そして、この多様な「生活」に対する「声」に応えていくことが自治体の役割である。大きなものだけでなく、小さな「声」をも拾うためには、デジタルによるインフラの整備や、デジタルのよき使い手となっていくことが必要だろう。そうして住民は自らの声を届けやすくなり、積極的な地域参加が促進されるはずである。

■〈対話と共創〉たくましく、しなやかに生きていこう──自治体職員はすごいんです/中本正樹
自治体職員が、こんなにも荒波に揉まれる環境にさらされたことがあっただろうか。人口減、義務的経費増、物価高、財政難、地域コミュニティ弱体化、災害甚大化、人手不足等々。弱り目に祟り目、泣きっ面に蜂、傷口に塩…。本稿が、荒波に負けず船を漕ぎ続ける全国の自治体職員の皆さんにとっての心の栄養補給になればと願う。

 

キャリアサポート連載

■管理職って面白い!判官贔屓/定野 司 ■「後藤式」知域に飛び出す公務員ライフ
茨城県小美玉市に学ぶ対話の秘訣/後藤好邦
■誌上版!「お笑い行政講座」/江上 昇 ■〈公務員女子のリレーエッセイ〉あしたテンキにな~れ!/関 香月 ■自治体DXとガバナンス/稲継裕昭 ■自治体職員なら知っておきたい!公務員の基礎知識/高嶋直人 ■今日から実践!すぐに役立つ!「公務員による研修」のススメ/秋朝礼恵 ■カスタマーハラスメント対策Q&A/関根健夫 ■HOLG presents 本当にすごい公務員!のココだけの話/郷田秀章 ■〈リレー連載〉Z世代ズム~つれづれに想うこと/岡本 結 ■ただいま開庁中!「オンライン市役所」まるわかりガイド/伊藤嘉則 ■地域の“逸材”を探して/寺本英仁

 

●巻頭グラビア

□自治・地域のミライ
深澤準弥・静岡県松崎町長
歴史や文化を引き継ぎ、コンパッションタウンをめざす

深沢準弥さんの写真

深澤準弥・静岡県松崎町長(57)。
海に囲まれた地形を活かし、「防災と観光を両立したい」と話す。

 

取材リポート

□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
東京出身、インド出身 双葉から「地域愛」を発信する理由【双葉町・最後の町の起業(下)】
原発事故、続く模索57

原発事故による避難自治体では最も遅い2022年に帰還が始まった福島県双葉町。東京出身ながらも被災者支援に関わったことから同町で家族を持ち、一般社団法人「双葉郡地域観光研究協会」(F-ATRAs、エフアトラス)を設立した山根辰洋さん(39歳)は「双葉町に世界から人を呼ぼう」と考えた。そんな時、インド出身で東北大大学院に留学していたバネルジー・トリシットさん(26歳)という願ってもない人材を得る。

□自治体政策最前線──地域からのイノベーション21
まなびの未来づくり事業──「自ら学び・考える力」を育む探究型学習の場づくりを推進(山梨県都留市)

山梨県都留市は、新たな特色ある教育プログラムの確立と探究型学習の場の創出をめざし、「まなびの未来づくり事業」を推進している。従来の詰め込み型教育を転換し、主体的に学び・自ら考える力を養い、子どもたちの好奇心をかき立てて学びを加速させるのがねらいだ。企業から推進役となる人材派遣を受け、事業主体となる一般社団法人を設立。大学や民間企業、団体と連携して、探究の学びの場とプログラムの提供に取り組んでいる。

 

●Governance Focus
□地震でまるごと避難し、豪雨で家が流された──能登半島地震と奥能登豪雨、石川県輪島市の南志見地区/葉上太郎
1月1日に発生した能登半島地震。特に被害が深刻だったのは、日本海に面した「外浦」に近いエリアだ。9月21日の奥能登豪雨では、こうした地域ほどダメージが大きかった。そのうち、石川県輪島市の南志見地区では、2度の被災で解体せざるを得なくなった家が多い。だが、土砂災害の特別警戒区域(通称・レッドゾーン)だと公費解体後の再建が難しくなる。ただでさえ使える土地が狭い奥能登なのに、どうすればいいのか。人々の苦悩は深まる。

●Governance Topics
□地域活性化のための事例や情報を共有──自治体情報交換会2024
(株)ローカルガバナンスとプラットフォームサービス(株)は10月4日、プラットフォームサービス(株)が運営を行う「ちよだプラットフォームスクウェア」を会場に、「行政課題解決のための自治体情報交換会2024」を開催した。当日は首長や地域商社の職員が地域活性化の事例を紹介。その後、参加者も交えて闊達な意見交換を行った。

□課題解決の実践者から学ぶ講座を開催──首長のための地域経営講座
2024年は地方創生がスタートして10年。人口減少は進み、地方の実情は一層複厳しさが増す中、首長らがこれからの地域経営の実践事例を学ぶ「首長のための地域経営講座」が10月31日に都内で開催された。全国各地の首長らが参加し、先進自治体の事例に耳を傾けた。

□県内外の自治体の“挑戦”から学ぶ──神奈川県・市町村DX推進フォーラム
自治体のデジタル化、DXが叫ばれる中、「そもそも何のためにやるのか」「DX人材とは何なのか」、「どこから始めればいいのだろう」──これらの疑問に、先進事例から学ぶことでヒントを得ようと神奈川県は県内の行政職員を対象とした「神奈川県・市町村DX推進フォーラム」(神奈川県主催)を開催した。行政が変わっていくため、DXを進めるために何をすべきか議論が交わされた。

 

連載

□交差点~国×地方/人羅 格 □自治・分権改革を追う/青山彰久 □新・地方自治のミ・ラ・イ/金井利之 □地域発!マルチスケール戦略の新展開/大杉 覚 □市民の常識VS役所のジョウシキ/今井 照 □“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘 □自治体法務と地域創生──政策法務型思考のススメ/牧瀬 稔(関東学院大学地域創生実践研究所) □地域経済再生の現場から~Bizモデルの中小企業支援/森 修(サカビズ) □自治体の防災マネジメント/鍵屋 一 □市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹 □公務職場の人・間・模・様/金子雅臣 □生きづらさの中で/玉木達也 □議会局「軍師」論のススメ/清水克士 □地方議会シンカ論/中村 健 □「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭 □From the Cinema その映画から世界が見える
『どうすればよかったか?』/綿井健陽
□リーダーズ・ライブラリ
[著者に訊く!/『「ネット世論」の社会学──データ分析が解き明かす「偏り」の正体』谷原つかさ]

 

カラーグラビア

□つぶやく地図/芥川 仁
喜びを体が記憶している川カニ篭漁──山口県山口市徳地堀

□技の手ざわり/大西暢夫
黒と白の艶と技術の協奏──【碁石】仮谷梅管堂(三重県熊野市)、黒木碁石店株式会社(宮崎県日向市)

□わがまちDiary──風景・人・暮らし
原初の自然を守り共生する「日本で最も美しい村」(北海道鶴居村)

□本日開園中 FUN!FUN!動物園
むろと廃校水族館(高知県室戸市)

□クローズアップ
「家康生誕の城」を見通す380年の眺望──愛知県岡崎市、ビスタラインを守る

 

特別企画

□鼎談 子育てが楽しい社会へのヒント《後編》──妊産婦・子育てママのウェルビーイングの向上を目指す

 

■DATA・BANK2024 自治体の最新動向をコンパクトに紹介!

※タンチョウ(北海道鶴居村提供)

 

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株式会社ぎょうせい

「ガバナンス」は共に地域をつくる共治のこと――これからの地方自治を創る実務情報誌『月刊 ガバナンス』は自治体職員、地方議員、首長、研究者の方などに広く愛読いただいています。自治体最新事例にアクセスできる「DATABANK」をはじめ、日頃の政策づくりや実務に役立つ情報を提供しています。2019年4月には誌面をリニューアルし、自治体新時代のキャリアづくりを強力にサポートする「キャリアサポート面」を創設しました。

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