登記異動処理業務の大幅な省力化を実現!〜「登記課税連携システム エキスパート」〜 『月刊 税』2024年7月号
地方自治
2024.07.08
目次
登記異動処理業務の大幅な省力化を実現!
〜「登記課税連携システム エキスパート」〜
(特集 地方税務行政DX化のミライ 業務改善事例)
株式会社ダイショウ
(『月刊 税』2024年7月号)
株式会社ダイショウは、固定資産税における事務改善と課税業務の適正化に42年間従事してきました。それらのノウハウをもとに、登記済通知書の電子データを活用して、登記異動処理業務の約8割の省力化を実現可能にする「登記課税連携システム(エキスパート)」を開発し、全国の地方自治体に納入しています。
異動処理における入力業務の省力化
固定資産税業務における異動処理は通常、法務局に紙媒体の登記済通知書を受け取りに行くことから始まります。それを担当地区・担当者に割り振り、各々が税務システムへの入力を行っています。紙の情報を電算端末に転記するため、入力誤りを防ぐ目的で二重三重のチェック体制を敷いているのが一般的かと思います。ダイショウの「エキスパート」は、登記済通知書の電子データの解析を行うことで、この入力作業の大幅な省力化を実現しています。
登記情報のリアルタイムの取得が可能
登記済通知書は、異動に携わった義務者と権利者のみが表示されるという特徴があります。そのため、登記済通知書だけでは固定資産税業務において重要な賦課期日の物件の登記所有者の特定ができません。「エキスパート」では、登記事項要約書電子データ(全件データ)と登記済通知書電子データ(異動データ)の両方から登記情報を集積するため、システム構築以降であれば、任意の物件の任意の時点の登記情報を取得することが可能です。そのため、異動前、異動後それぞれの共有構成員についても確認可能となります。
宛名コードの自動取得が可能
固定資産税業務では、賦課期日時点における登記上の所有者主に対して納税通知書を送付します。「エキスパート」では、住民基本台帳から「宛名」情報を取得し、登記上の所有者情報と突合することで宛名コードを自動で取得することが可能です。この仕組みは、登記情報管理機能と合わせて、固定資産税業務の大幅な省力化に寄与すると考えています。
税務システム標準化にも対応
「エキスパート」で実現可能な登記済通知書電子データの税務システムへの取り込みは、税システム標準化における機能要件が明記されています。登記済通知書に共有構成員全員を記載していないうえ、登記済通知書の電子データはCSV形式のデータであるため直接税務システムに取り込むのは難しく、サブシステムとして「エキスパート」を仲介することで、税務システム標準化要件の対応が実現します。
税務システム以外とも連携可能
「エキスパート」は、税務システム以外にもGISや家屋評価システムとも連携することが可能です。各々のシステムで必要な「登記情報」「登記異動情報」を受け渡すことでさらなる業務効率化を実現します。
導入事例 「エキスパート」の導入で業務の大幅改善を実現! ―神奈川県平塚市―
神奈川県平塚市
面積67.88㎢、人口約25万8,500人。歳出予算は、約1兆45億円。市税の近年の課税額は、446億円前後。そのうち、固定資産税(土地家屋)割合が38%、都市計画税(土地家屋)割合が6%となっている。神奈川県中部に位置し、相模湾に面した、湘南地域の中心都市の一つ。江戸時代には東海道五十三次の宿場町として栄えた。市の象徴とも言える平塚八幡宮や、自然豊かな湘南海岸公園、縄文時代の遺跡や弥生時代の出土品などが展示されている平塚市立博物館など、歴史と自然が織りなす魅力がある。また、毎年7月には「湘南ひらつか七夕まつり」が開催され、全国から多くの観光客が訪れる。
手入力でミス等が発生、作業時間は年約5000時間
平塚市固定資産税課では、ダイショウの「登記課税連携システム(エキスパート)」を令和4年10月から導入しており、現在使い始めてから3年目となる。同課内の土地担当9名、家屋担当16名の合計25名が「エキスパート」を利用している。「エキスパート」導入前、同課では、法務局から提供された登記済通知書を見て手入力で登記異動事務を行っており、その作業時間は年間約5000時間に及んでいた。登記異動事務を手入力で行っていたため、所有者の確認に時間がかかっていたほか、ヒューマンエラーによるミスなどが発生。更正等の事務処理に時間が割かれるなどといった実務運用上の課題が生じていた。
実務運用上の課題の解決策に「エキスパート」が浮上
実務運用上の課題の解決のためダイショウの「エキスパート」の導入を検討。実際にデモ等を体験した職員は、①登記異動情報の手入力削減に伴う時間外勤務の削減、②登記済通知書の自動更新による事務処理の効率化、③手入力による入力ミスの削減といった点がメリットになると考えた。他業者のシステムと比較した結果、他業者のシステムにはない「宛名情報との突合精度や登記簿照会による過去の課税誤りのデータ提供等の豊富さ」が決め手となり、「エキスパート」導入を進める運びとなった。
同課は、まず企画政策課や財政課と協議。その結果、事務処理効率化のため早期導入が必要であると認められた。国の交付金も活用できる見通しも立ったことから、令和3年12月議会に補正予算を上程。予算案は可決された。
導入後、期待どおりの成果
「エキスパート」導入後の状況について平塚市固定資産税課の遠藤俊太朗主任は、「権利移転時に課税システムに登録されている所有者が自動で検索されるので、所有者の確認にかかる時間が大幅に短縮されました」と説明し、「表示登記や権利登記の異動も課税システムに自動で連携されるので入力ミス等が削減されました」と満足そうに語った。
一方で、「エキスパート」導入後に苦労した点として、「導入直後に課税システムと連携する際の詳細な確認項目があり、適正な連携確認に時間がかかったこと」を挙げた。遠藤さんによると、苦労したのはこの導入直後の確認作業のみで、日常業務では苦労することなく利活用できるとしている。
登記異動処理にかかる時間が短縮、残業時間の削減も
「エキスパート」の具体的な運用状況をみると、同課では、週初めに登記済通知書の電子データについてエキスパートへの取り込みを行い、週終わりに課税システムと家屋評価システムへ連携している。導入効果は、主に人的負担が軽減され、迅速かつ正確な事務手続きに取り組むことができるという。
「エキスパート」を利用する職員の評判も上々で、「登記異動処理にかかる時間が短縮できてダブルチェック等に多くの時間を割くことができるようになりました」、「時間外勤務も減少し職員の負担も減りました」といった声が聞かれるなど、職員の満足度は高い。また、管理職の職員は、「『エキスパート』導入により職員の負担が軽減され、手入力によるミスも削減されるなど、非常に評価できるシステムだと思います」、「平塚市ではワークライフバランスを推進しています。管理職としても残業時間の削減につながっていることはよかったと評価しています」と話した。
履歴事項全部証明書等が紙ベース通りに画面表示
「エキスパート」の中で、特に気に入っている機能やよく利用する機能を職員に聞くと、「登記内容表示機能で全部事項が確認できるので、所有権移転の確認では活用頻度が高くなっています。また、図面表示で分合筆の状況等も確認できるのでこちらもよく利用しています」と語った。また、「エキスパート」の課題や今後の機能拡大への期待を聞くと、「図面データについて、紙媒体をスキャンしたものを取り込めるような機能、事務処理効率化のために多画面展開ができる機能を期待しています」と話した。そのほか、「登記異動済通知書や履歴事項全部証明書が紙ベースのもの通りのかたちで『エキスパート』の画面で見られる点がとてもよかったです」、「すべてが自動的に連携されるのではなく、たとえばこの人に本当に紐づけてよいかどうかが疑わしいと想定される場合には、『エキスパート』でエラーが出るため、人の目で確認することができる点がよい機能だと思います」などといった「エキスパート」の機能や性能を高く評価する声が数多く聞かれた。
異動直後の職員も覚えやすく使いやすい
自治体の職員にとって人事異動はつきもの。新たに固定資産税課に配属された職員が「エキスパート」をすぐに利活用することができるかどうかが気になるところだ。この点を職員に尋ねると、「比較的すぐ慣れます。手で入力するよりは使いやすいと思います」「『エキスパート』に入力する項目は課税システムよりも少ないので覚えやすいと思います」「『エキスパート』はマニュアルも充実しており、特に導入直後の慣れない時期には大いに役立った」と語った。
充実した「サポート体制」が導入を後押し
「エキスパート」を提供するダイショウのサポート体制は万全だ。実際にサポートを利用した職員は、「導入前から随時サポートしていただいて、導入後も不明点について電話で相談に乗っていただきました。特に住居表示対応に伴う字名変更等には、迅速に対応いただき満足しています」と語る。きめ細やかで充実したサポート体制が、「エキスパート」導入を後押しした。
「エキスパート」は自治体の規模を問わず活用可能
自治体の規模も大小さまざまなところ、遠藤さんは、「登記異動処理の件数が少なくても、前述の登記内容表示機能で全部事項や分合筆の状況がすぐに確認できるので、「エキスパート」は自治体の規模を問わず利活用できるサービスと考えます。他団体にとっても費用対効果が見込め、事務改善等に繫がるシステムだと思います」と語る。
最後に遠藤さんは、「『エキスパート』から課税システムへの自動連携によりヒューマンエラーが削減され、迅速かつ正確なデータを反映することができ、職員の負担軽減や、納税通知書や市税証明書の適正な発行事務等につながることで市民サービスの向上に寄与しています」と語った。地方公共団体のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進が図られるなか、ダイショウの「エキスパート」は、“地方税務行政DX化のミライ”を先取りするものと言えそうだ。
<問合せ先>
株式会社ダイショウ
Tel:03-6222-3071
HP:https://www.daishou.co.jp/
E-mail:info@daishou.co.jp