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民間出向中。|PART1 ヤフーに出向中。>>>1-1[自治体紹介]山口県における自治体DXの取り組み
地方自治
2022.10.27
民間企業に出向中の公務員のみなさんに、出向して見えたことや気づきから、官民協働のコツまで、アレコレ紹介していただきます。PART1はヤフーに出向中の山口県庁の船山拓哉さんがご登場。まずは、山口県庁の取り組みをご紹介いただきます。
1 山口県における自治体DXの背景
今般の新型コロナウイルス感染症の流行を契機に、コロナ禍がもたらした社会変革の動きをチャンスと捉え、単にデジタル技術を導入するだけなく、関連する制度や施策なども併せて変革し、社会全体のデジタル化を進めていくことが求められています。
こうした中で、山口県では、知事を本部長とし、改革を総合的に進行管理する全庁的な推進組織として、「山口県デジタル推進本部」を設置するとともに、その事務局を担い、改革全般のマネジメント等を行う専門部署として、令和3年4月に「デジタル推進局」を創設しました。
デジタル推進局では、「やまぐちデジタル改革基本方針」に基づき、デジタル化がもたらす「地域課題の解決」と「新たな価値の創造」によって、県民一人ひとりが、これまで以上の豊かさと幸せを実感できる社会の実現を目指し、県政の各分野でデジタル改革を進めています。
「やまぐちデジタル改革基本方針」は、令和2年12月に閣議決定された国の「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」及び「デジタル・ガバメント実行計画(2020年改定版)」、総務省において策定された「自治体DX推進計画」等を踏まえながら、山口県として進める社会全体のデジタル化に向けた取組を「やまぐちデジタル改革」と位置付け、その基本的な考え方や内容等を指し示すものとして策定しています。
2 「やまぐちデジタル改革」の基本姿勢
「やまぐちデジタル改革」は、最高責任者である知事を「CIO(最高情報責任者)」とし、CIOに対して専門的知見から提案や助言等を行う「CIO補佐官」として、3名の外部有識者によるアドバイザリーボードを設置し、下図の体制で推進しています。
3 山口県の具体的な取り組み
「やまぐちデジタル改革」は、次に掲げる施策の3つの柱に沿って、県政各分野における取組を進めています。
(1)「やまぐちDX」の創出
やまぐちDX推進拠点「Y-BASE」を核として、市町をはじめ、多様な主体と連携・協働しながら、県政の幅広い分野でデジタル改革を強力に推進し、地域課題の解決と新たな価値の創造に向けた、本県ならではのDX、「やまぐちDX」の創出に取り組んでいます。
このY-BASEでの実績として、以下の3つの取り組みがあります。
ア 山口県周南市役所での野犬対策
周南市から寄せられた「野犬対策にデジタル技術を活用したい」という相談に対し、「しゅうなん通報アプリ」の野犬通報情報の可視化を図り、周南市のHPにダッシュボードを掲載しています。
*事例:データドリブンな野犬対策施策に向けたデータ利活用
イ 教育・学習支援
タブレット端末を有効活用し、手書き文化が残る教育機関に対して、ペーパーレスでかつリアルタイムな情報共有、データの一元化も可能なグループウェアを紹介し、実用化に向けた導入サポートを実施し、業務の在り方を見直し、働き方変革を実現しています。
*事例: iPadを活用した働き方変革により子どもと向き合う時間を増やす
ウ 製造業における業務改善
製造現場の生産性向上を目指し、帳票作成・管理ツールを活用することで、業務改善・変革を実現したいとご相談を受けたため、Y-Cloud上に帳票作成・管理自動化環境を構築し、同環境上で実証実験を実施中です。製造現場の様々な部署とした実証を通して、ツールの実用性等の見極めを行う予定です。 *事例:電子帳簿システム導入による製造現場の業務改善・変革
(2)「デジタル・ガバメントやまぐち」の構築
国の「自治体DX推進計画」に基づく情報システムの標準化・共通化に適切に対応するとともに、行政手続のオンライン化やワンストップ化等による行政サービスの利便性向上や、AI・RPA等の活用による業務効率化など、デジタル化を梃子とした行政の構造改革に取り組み、市町と一体となって『デジタル・ガバメントやまぐち』の構築を進めています。
この構築の例として、以下の3つの取り組みがあります。
ア 行政手続のオンライン化・マイナンバーカードの普及促進
行政の手続きをデジタル化で便利なものにし、スマートフォンでいつでも、どこでも手続きを簡単に行えるようにするための取り組みを実施しています。
誰もが簡単にオンライン手続を利用できるよう、ワンストップ化を推進するための「やまぐちオンライン手続総合案内サイト」を構築や、オンラインでの本人確認を安全・確実に行うための基盤となるマイナンバーカードの普及を促進しています。
イ AI・RPAの活用
行政の現場にもRPA(定型業務の自動化)を導入し、業務を効率化することで、的確なサービスをスピーディーに提供することを推進しています。
ウ オープンデータの推進
行政の持つさまざまなデータをオープン化し、データを活かした新たなサービス展開を創出するための勉強会等を実施しています。
(3)「デジタル・エリアやまぐち」の形成
県内全域において、光ファイバ網や5G等による高度なブロードバンド環境を確保するとともに、デジタル人材の育成を加速し、県内での活躍を促進するなど、これからのデジタル社会を創り支える基盤をしっかりと整え、地域社会のデジタル化を進めることにより、県民誰もがデジタル化を通じて、暮らしの豊かさや地域の活力を実感することのできる、『デジタル・エリアやまぐち』を形成しています。
この形成の例として、以下の2つの取り組みがあります。
ア デジタルインフラの整備・活用
5Gを活用し、医療機関での遠隔サポートによる胃カメラ検査の実証や、県立美術館から県内の学校に、高精細の美術作品映像を安定的に送信することによる全国初のハイブリッドアート授業「5Gアートスクール」を開催するなどの取り組みを実施しています。
イ 情報格差の解消
誰一人取り残さないデジタル社会を目指し、デジタル機器の使用に不安のある高齢の方などをサポートするため、県、市町、携帯電話通信事業者等からなる「デジタルデバイド対策専門部会」を設置し、情報・意見交換を行うなど、地域における効果的なデジタルデバイド対策を推進しています。
4 デジタル・魁プロジェクト
山口県デジタル推進本部では、デジタル化の効果を目に見える形で、県民の皆様にいち早く実感してもらうことができるよう、具体的な取組事項に掲げたものを含めて、特定の政策テーマの下、関連する施策の中から先導的な取組をプロジェクト化し、『デジタル・魁(さきがけ)プロジェクト』として、重点的・集中的に実施しています。今回はその中の例として4つのプロジェクトをご紹介いたします。
ア 「デジタル de 子育て支援」推進プロジェクト
「子育てをサポートするために、AIやアプリが24時間365日、妊娠や出産などのお困りごとに対応する「子育てAIコンシェルジュ」を運用しています。これにより、子育ての不安を解消する支援を推進しています。
イ 「やまぐちスマートスクール構想」推進プロジェクト
県立学校に導入した1人1台タブレット端末等のICT環境を効果的に活用して、個別最適な学びに向けた基盤整備やデジタル人材の育成、海外との遠隔授業等を推進しています。
ウ 「日本一の安心インフラやまぐち」実現プロジェクト
AIや衛星データを活用して、河川や橋などを点検することで、これまでのよりもさらに細密なインフラの維持管理を実施しています。
エ 「地域を支えるスマート農林水産業」加速化プロジェクト
農林水産業では、デジタル技術を活用した新たな販促手法となる「ぶちうま!アプリ」の運用を開始し、若年層をはじめ幅広い世代への新たなアプローチにより、県産品ファンを増加させ、需要拡大を推進しています。
このように山口県は、県民が新たなサービスやライフスタイルを自由に選び、豊かさや幸せの実感できるデジタル社会の実現に向けて、日々進み続けます。
◆執筆者Profile
船山拓哉
2017年山口県庁入庁。県税事務所、県議会事務局を経て、2022年4月からヤフーに出向中。
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