最新法律ウオッチング

月刊「地方財務」

最新法律ウオッチング―雇用保険法等の一部を改正する法律(2022年4月1日施行)

自治体法務

2022.06.27

※2022年4月時点の内容です
最新法律ウオッチング 第117回 雇用保険法等改正
(『月刊 地方財務』2022年5月号)

 2022年の通常国会において雇用保険法等の一部改正法が成立した。

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大が雇用に大きな影響を与える中、雇用の安定と就業の促進を図ることが重要な課題となっている。また、雇用保険財政の安定運営を図るため、その費用負担について所要の措置を講ずるなどの必要がある。

 政府は、こうした状況を踏まえ、失業等給付の特例の継続、求人メディア等のマッチング機能の質の向上、地域のニーズに対応した職業訓練の推進等の措置を講ずるとともに、雇用保険について、保険料率の暫定的な引下げ、機動的な国庫負担の仕組みの導入等を行うため、雇用保険法等の一部改正法案を国会に提出し、成立した。

雇用保険法等の改正

●雇用保険制度における失業等給付
 労働者が失業した場合に支給される失業等給付の基本手当は、原則として90〜150日支給されるところ、雇止めによる離職者等については、特例として、2021年度末までは、120〜330日支給されており、この特例を24年度末まで延長した。雇用情勢の悪い地域の求職者への基本手当の給付日数の拡充措置や、長期的キャリア形成に資する講座(専門実践教育訓練)を受講する45歳未満の離職者に対する訓練期間中の失業等給付相当額の支援(教育訓練支援給付金)についても、24年度末まで延長した。

 また、雇用保険に一定期間加入後に離職して起業する者が廃業した場合に基本手当を受給しやすくする仕組みを設けるとともに、失業等給付の受給者が求職者支援制度に基づく訓練を受ける場合を給付日数の拡充や通所手当等の対象とした。

●求人メディア等の質の向上
 求職活動におけるインターネットの利用が拡大する中、就職や転職の主要なツールとなっている求人メディア等の新たな形態のサービスを法的に位置付けるため、職業安定法の「募集情報等提供」の定義を拡大し、求職者情報を収集して募集情報等提供事業を行う者について届出制を創設し、ハローワーク等との相互の協力の対象とした。

 また、募集情報等提供事業者について、募集情報等についての的確表示(虚偽や誤解を生じさせる表示を禁止し、最新かつ正確な内容に保つための措置を講じること)、迅速・適切な苦情処理、個人情報の保護や秘密保持を義務付けるとともに、法令違反に対する改善命令等を可能とした。

●職業能力の開発・向上の促進
 デジタル化等の急速な進展や、非正規雇用労働者のキャリアアップ等の課題に対応するため、職業能力開発促進法の改正により、職業訓練に地域のニーズを適切に反映すること等により、効果的な人材育成につなげるため、訓練コースの設定や検証等について関係者間で協議する都道府県単位の協議会の仕組みを設けた。

 また、キャリアコンサルティングの推進に係る事業主・国等の責務規定を整備した。

●雇用保険財政
 雇用保険料率は、本来は0.8%であるが、2021年度までは、0.2%に引き下げられていた。22年度については、労使の負担感も踏まえた激変緩和措置として、9月までは0.2%、10月からは0.6%とした。

 失業等給付に係る国庫負担については、本来は4分の1であるが、2021年度までは暫定的に40分の1とされていたところ、雇用情勢や雇用保険財政に応じ、機動的に行える仕組みを導入した。

 また、新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国庫負担の特例措置を継続するとともに、積立金から雇用安定事業費に充てるために借り入れた金額について、一定の範囲内で返済の猶予を可能とした。

●施行期日
 この法律は、一部を除き、2022年4月1日から施行された。

国会論議

 国会では、雇用保険料率を本来の0.8%に戻すのであれば、国庫負担も本来の4分の1に戻すべきではないかとの質問があり、政府から、雇用保険財政については、コロナ禍の対応により極めて厳しい状況にあることから、2021年度補正予算で一般会計から約2.2兆円の繰入れを実施したが、この改正により、国庫負担については、雇用情勢や雇用保険の財政状況に応じた仕組みとするため、雇用情勢や雇用保険財政が悪化したときには4分の1、それ以外のときには40分の1とした上で、これに加えて、機動的に国庫からの繰入れを可能とする仕組みを常設化するとの説明がされた。

 また、フリーランスに仕事を仲介するサービスについてもルールが必要ではないかとの質問があり、政府から、職業安定法の改正は、雇用の仲介を前提にしたルールを定めるものだが、雇用以外の仕事を仲介する事業者も参考とすることができるよう、法の丁寧な周知に努めたいとの説明がされた。

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