議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

議会局「軍師」論のススメ 第72回 市民による第三者評価の意義は何か?

地方自治

2022.11.24

本記事は、月刊『ガバナンス』2022年3月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

 

 「市民が議員活動を評価し、過半数が不十分と判断した場合、議員報酬を半減させられないか」

 これは龍谷大学大学院政策学研究科「地域リーダーシップ研究」(注1)の講義で、ある院生から私に投げかけられた質問である。当該科目の院生は学部から進学した学生のほか、社会人も多数を占めていた。

(注1)科目担当:阿部大輔・龍谷大学政策学部教授。

 私にとっても、議会関係者以外に話す機会は限られ、一般市民の率直な意見に触れる貴重な機会となった。今号では、ごく一部であるが講義での気づきについて記したい。

■講義の概要

 講義では最初に「地方議会をめぐる立法趣旨と現実のズレ」と題し、地方議会の法的位置づけ、権限について概説した。そのうえで総論として、立法趣旨や市民感覚と、議会の現状とのズレを補正しようとすることが改革の意義であり、ズレ幅の大きいところから優先して改革することが求められる方向性であると説明し、各論として大津市議会の議会改革について話した。

 特に議会について法的に考察する際は、現行法の文理解釈に終始するのではなく、制定経緯や立法時の時代背景を含めて考察することが求められると論じた。

 一例として挙げたのは、憲法93条の「議事機関として議会を設置する」との条文に関して、執行機関との対比で議会の本質である「立法機関」や「議決機関」と規定されるべきではないかとの議論である。

 だが、憲法の制定過程を調べれば、マッカーサー草案では「local legislative assemblies」、直訳すれば「地方立法議会」とされていたものが、政府案では「立法機関」という言葉を削るために、「議事機関」へ議会の性格付けを押し戻したとされている(注2)。それは、中央政府が首長優位の体制の下で自治体を統治しようとしていた、当時の政治的背景によるもので、文理解釈の議論からは結論が見えないとの趣旨で説明した。

(注2) 月刊ガバナンス2010年8月号「二元『的』代表制か、二元代表制か」、ちくま新書『地方自治講義』(今井照)。

■市民による評価から見えるもの

 次に、2コマ目の質疑応答で得た気づきについて触れたい。

 大津市議会ミッションロードマップは、議員任期4年間の政策サイクルとして、政策立案と議会改革の工程を定めると同時に、議会活動の評価制度を定め、評価サイクルをも確立したものである。そして任期最終年度には有識者による第三者評価を受けるとの説明の文脈で、冒頭の質問は投げかけられた。

 もちろん現行法上、評価結果と報酬額を連動させることには無理がある。だが、議会人として意識すべきは、このような厳しい質問の背景には、現職の議員に対する強い不信感があるという現実だ。

 「では、あなたが立候補したらどうか」と尋ねたら、「後々なれるようにしたい」という。講義後には「犯罪被害者や貧困世帯を救うために議員になり、議員報酬も半分返還したい。だが、何を勉強し、どうすれば議員になれるのか、実現への道筋が見えない」と議員を志す院生から悩みを聞かされた。

 全国的には議員のなり手不足が社会問題化し、報酬の低さばかりが注目を集めているが、当選までの道筋が見えないとの課題も、市民意見から見えた大事な視点であろう。

 大津市議会では、有識者による第三者評価に市民も加えることを検討しており、今回の講義は私にとっても、その方向性に間違いがないことを再確認する良い機会となった。

 

*文中、意見にわたる部分は私見である。

 

第73回 新任議会(事務)局職員に求められるものは何か? は2022年12月22日(木)公開予定です

 

Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士 しみず・かつし
 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員

しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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