会議の技術
会議の技術 第4回 だれが猫の首に鈴をつける?!
キャリア
2019.07.22
こうすればうまくいく!会議の技術
事前準備からファシリテーションまで
第4回 だれが猫の首に鈴をつける?!
・職場の会議では、いつも何人かが遅刻する。それでも、誰も何も言わない。
・会議が始まると、議長が延々と資料を説明する。時間のムダだと皆が思っているが、だれも何も言わない。
・多くの参加者は、何の準備もせずに会議に出席する。それでも、まかり通ってしまう。
職員たちは、会議に多くの問題があると思っている。けれども、だれも解決しようとしない。どうすれば、これらの問題の「猫の首に鈴」をつけ、解決できるのだろうか。
リスクを回避する
会議の途中で起こる問題を回避するためには、的確な内容の「開催通知」を、しかも十分な時間的猶予をもって、参加予定者に知らしめることだ。もし、惰性で開催通知を作成していたり、何も考えずに配付していたりするなら、ここで開催通知の目的を考え直そう。
開催通知は、単に会議の開催日時と場所を知らせるものではない。そう考えているとしたら、会議の問題は永遠に解決しない。開催通知の目的は、会議で起こりうる問題を、あらかじめ回避することにある。つまり、リスクをヘッジすることが開催通知の目的というわけだ。
たとえば、会議の途中で、何のための会議かわからなくなってしまうことがある。そんなとき、話し合いはあらぬ方向に行ってしまい、ムダな時間を費やしてしまう。そんな問題を回避するために、開催通知には、「会議の目的」を明記する。
また、会議の途中で、みんなで話し合ってどうするのかと、ふと疑問に思うことがある。そんなとき、話し合いは迷路にはまって、何の結論も出ない会議になる。そんな問題を回避するために、開催通知には「会議の目標」を明記する。
あるいは、会議の途中で、何を話し合えばいいのか、わからなくなってしまうことがある。そうなると、参加者は思い思いに発言し、議論は脱線する。そんな問題を回避するために、開催通知には、「予定議題」を明記する。
このように開催通知の主目的は3つある。会議の目的、会議の目標、予定議題、これらをあらかじめ参加者に知らしめること。開催通知がない会議というのは論外だ。事前に通知されたら、一度じっくり読み込んでみよう。
きっと、開催通知の1行目に、開催日時と場所が書いてあるはずだ。それだと、単に「集まれ!」としか、通知していないことになる。あるいは、会議のテーマが書いてあるかもしれない。それだけだと、何をどのように考えて話し合いをすればいいか、参加者にはわからない。
3つの意識をもたせる
「会議は問題だ」と、だれもが言う。しかし、だれも会議の問題を解決しようとしない。だれかが解決すべきだと考えているのかもしれない。まるで、「猫の首に鈴」の逸話と同じようなものだ。
会議を生産的に行うためには、すべての参加者が問題意識、当事者意識をもち、そして、参画意識をもつことに尽きる。もし、参加者がこれらの高い意識をもって参加するなら、建設的な意見が飛び交う会議が実現する。
それを実現させるためには、単に会議の目的、目標、予定議題を伝えるだけでは不十分だ。開催通知に「準備事項」の欄を設ける。そして、参加者に何を事前に準備すべきか明記する。いわば、参加者に宿題を課すわけだ。たとえば、「住民満足度向上の施策」を議論することが目的の会議であれば、準備事項を、「住民が満足するサービスとは何か、現状のサービスの問題点は何か検討し、そして、満足度を向上させる施策案を会議で発表すること」とする。
そうすれば、即、会議で議論を開始することができる。ところが、多くの参加者は、会議が始まってから考えようとしている。宿題を授業中にやるようなものだ。会議は莫大なコストがかかっている。個々の参加者が宿題をするためにコストをかける必要はない。
このように開催通知で、参加者の準備事項を明記すれば、参加者は問題意識、当事者意識、そして、会議への参画意識をもつ。
「もし、参加者が準備をしてこない場合はどうするか?」。そんな質問が飛んできそうだ。その答えは、「退席してもらうこと」。あまあまの会議をやっていては、いつまでたっても問題は解決しないし、それに、教育的観点から考えても、本人にとってよくない。
出席しにくい会議こそ生産的?!
会議の開催通知を事前に配布する意味は、話し合いに必要な情報を共有し、それを前提に効率的に議論をすることにある。
よくある光景だが、会議が始まると、議長が分厚い資料を参加者に配布する。そして、資料を繰りながら内容を説明する。それも延々と。その間、参加者も資料を繰りながら説明を聞く。この説明が会議の半分近くを占めるケースも多々ある。いや、説明だけで終わってしまう会議もあるやに聞く。
会議の場で資料を説明する必要性があるのだろうか。議論をするために必要な情報は、あらかじめ参加者に配布し、共有しておくことだ。そこで、開催通知に「添付資料」の項目を設ける。議論に必要な資料を開催通知に添付する。そして、参加者に事前に目を通し内容を理解するよう指示をする。
会議の場では、「開催通知に添付しました資料に基づいて議論をしますが、何か内容について質問があればお伺いします」と言う。そして、質問がなければ、即、話し合いに入る。ただ、開催通知を配布した後、状況に変化があれば、補足説明をする。ただ、あくまでも補足説明だから、時間をとってはいけない。
もし、会議の途中で、参加者が「それは、そもそもどういうことですか?」と質問をしてきたら、「それは事前に配布した資料に記載されています」と排除すればいい。「それはですね…」などと、親切に説明してあげる必要はまったくない。それで、議論に参加できなくて本人が恥をかくなら、かくべきだろう。会議の準備をしてこない参加者に親切に対応してはいけない。特別扱いをしてもいけない。もし、そうするなら、他の参加者は準備をするのがバカらしくなる。
会議の諸悪の根源がここにある。たとえ、遅刻をしてもだれも何も注意しない。そうするなら、だれも時間通りに来ようとはしない。たとえ、会議でひと言も発言しなくても済まされるなら、だれもしゃしゃり出て発言しようと思わない。
タガがゆるんでしまった会議は、すべてが悪循環に入る。参加者に甘い議長は、結局は自分の首を絞めることになる。
準備をしてこないと参加しにくい会議、事前に資料を読んでこないと恥をかく会議。発言しないと居心地が悪い会議。そんな会議をつくると、会議は生産的になる。
著者プロフィール
八幡 紕芦史(やはた ひろし)
経営戦略コンサルタント
アクセス・ビジネス・コンサルティング(株)代表取締役、NPO法人国際プレゼンテーション協会理事長、一般社団法人プレゼンテーション検定協会代表理事。大学卒業とともに社会人教育の為の教育機関を設立。企業・団体における人材育成、大学での教鞭を経て現職。顧問先企業では、変革実現へ、経営者やマネジメント層に支援・指導・助言を行う。働き方改革への課題解決策として慣習の”会議”から脱皮を実現する鋭い提言で貢献。著書に『会議の技術』『ミーティング・マネジメント』ほか多数。