マイナンバー・ICTが拓くセキュアで豊かな社会
第22回 カフェ発 なぞの請求 宅配便の連絡と迷惑メール(前編)
ICT
2019.06.26
第22回 カフェ発マイナンバー・ICTが拓くセキュアで豊かな社会
なぞの請求
宅配便の連絡と迷惑メール(前編)
スパムの語源とは?
ある日のお昼前、都内の文教地区、文田区にあるカフェデラクレ(Café de la clé)。大学のキャンパスにそびえ立つ銀杏から黄色い葉が落ち、冬の冷たい風が吹き始めていた。
カランカラン♪
「いらっしゃいませ。」
カウンターからマスターの加藤とアルバイトの絵美が声をかけた。
「こんにちは。マスター、コーヒーお願い。」
カフェデラクレの常連のお婆さん、里中だった。里中はいつも通り、カウンターに座り、隣の席にバッグを置いた。
「里中さん、毎度どうも。」
加藤は、コーヒーサーバにネルをセットすると、コーヒーの粉が入っているドリップポットに手をかけた。
「絵美ちゃん、これ買ったの。孫とトゥモローランドに行って、孫が選んでくれたの。」
里中は、絵美にスマホのカバーを見せた。
「あ!素敵! プリンセス柄、いいですね。」
そう言いながら、絵美は里中に水の入ったグラスを出した。
「やっぱり絵美ちゃん、わかっているわね。他にも欲しくなっちゃって、テーブルクロスとかもプリンセス柄のものを買うことにしたの。よく知らないんだけど、そういうのを売っているホームページを教えてもらって、注文したの。」
「ネットショッピングも始めたんですか?」
「そうなのよ。そうしたら、たくさんメールが来るようになって。孫とのコミュニケーションのつもりだったのに、なんだか大変なの。」
やれやれと息をつきながら里中が言った。
「あ、スパムですか?」
コーヒーを出しながら、加藤が尋ねた。
「スパム? わからないけど、迷惑メールが沢山きちゃって。」
「その迷惑メールのこと、スパムって言うんですよ。」
加藤は、置いたコーヒーの持ち手を里中が飲みやすいよう揃えながら柔らかく言った。
「スパムって食べ物でしょ? おいしいのよね、スパムにぎり。」
里中はコーヒーに口をつけた。
「そういえば同じ名前ですね。」
絵美がはっと気づいたように言った。その顔に気づいた加藤が言った。
「絵美ちゃんも知らなかったのか。昔、海外のスパムCM(*)がとてもうるさくて耳についたから、迷惑だ、ということと同じ意味で、迷惑メールをスパムって言うようになったんだよ。」
加藤が里中に出したコーヒーの器具を片付けながら言った。
「あ、同じことなんですか。英語の音なので、違うのかと思っていました。」
絵美が加藤に言った。
*スパム
セキュリティの項目ではありませんが、迷惑メールがセキュリティホールの鍵になることもあるので、ご説明します。とても有名な話ですので、みなさま既にご存じかもしれません。「スパム」という言葉は米国の会社が販売している缶詰「SPAM(スパム)」が由来です。1970年代に英国のテレビやラジオでスパム缶のCMが放送されていたが、そのCM内で「SPAM! SPAM !」と名称を連呼していました。この連呼が「うるさい」とされ、英国のテレビ番組でその連呼を揶揄したコントが行われた、ということから、より有名になりました。