
公務員が読みたい今週の3冊
公務員が読みたい今週の1冊【サケマス物語】
NEWぎょうせいの本
2026.06.08
この記事は3分くらいで読めます。
出典書籍:『月刊ガバナンス』2026年5月号
今週、何読む?
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特別編「公務員が読みたい今週の1冊」ではたっぷりの著者インタビューとともに、おすすめの1冊をじっくりとご紹介します。
「今週読みたい図書」の選定にぜひお役立てください。
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多様なサケマスの生活史。
未来へつなぐために

サケマス物語
──魚の放流を問いなおす
森田健太郎・著
ちくま新書/920円+税
著者プロフィール
森田健太郎(もりた・けんたろう)
1974年生まれ、奈良県出身。東京大学大気海洋研究所教授。専門は魚類生態学。北海道大学大学院水産科学研究科博士課程修了。博士(水産科学)。国立研究開発法人水産研究・教育機構北海道区水産研究所、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター准教授を経て、2022年4月より現職。映画『ミルクの中のイワナ』に出演、編著に『人間活動と生態系』『海洋生態学』(いずれも共立出版)などがある。
多様なサケマスの生活史。未来へつなぐために
── 著者インタビュー
焼き魚はもちろん、おにぎりの具や寿司ネタの定番としても食卓に並ぶことの多い「サケ」。私たちにとって、最も身近な魚の一種といえるだろう。本書は、そんなサケマスの知られざる生活史を紐解きながら、サケの保全方法としておおむね好意的にとらえられてきた「放流」について、改めて意義を問いなおすものである。
著者は、サケマス研究の第一人者として知られる森田健太郎さん。今回の執筆については、ある想いがあったという。
「魚の放流に関し、そのネガティブな側面も含めて知見をまとめた一般向けの書籍は、今まで見当たらなかった。そうした本が必要だと感じていた」
本誌読者にも、放流に対しポジティブなイメージを持つ人は多いのではないだろうか。だが実際には、サケ科魚類を取り巻く“危機の4H”の1つにHatcheries(人工ふ化場)が数えられるなど、イメージと現実の乖離が発生している。保全策として講じられてきたはずの人工ふ化放流が、長い目で見れば遺伝的撹乱を引き起こし、野生集団に負の影響を与えるというのだ。
放流は、効果の見極めが非常に難しい。科学的な検証が十分になされないまま「成功体験」として記憶され、現在まで続いている現実がある。だとすれば、どこかでその流れを断ち切り、改めて生物多様性・環境保全の観点から手段を問いなおす必要があるだろう。
「例えば数学や物理学であれば、一度導き出された答えが変わることはそう多くはない。一方で、生態学は比較的新しい学問であり、今正しいといわれていることが30年後も正しいかと問われると、おそらくそうではない。だからこそ、“今の正しさ”をただ暗記するのではなく、常に論理的に考えることが大切」
と、森田さん。
本書内に記されるサケマスの生活史でも、時代とともに移り変わる学説が紹介されており、いまだ明かしきれないサケマスの生態と神秘性、それを追う研究者たちの試行錯誤は、本書の大きな魅力になっている。
自身の研究では、現場でのフィールドワークも大切にしているという森田さん。
「自然は、自分自身で体験することで、初めてわかることが多い。もし本書を読んでサケマスという魚に興味を持ったら、ぜひ外に出て、体験してほしい
と笑顔を見せる。
「自然や生き物とのつながりを生む放流は、情操教育としてとらえれば良い側面もある。一方で、本書で触れたような問題も多くはらんでいる。読者の中には、今後、放流のイベントに携わる人もいるかもしれない。その際、『何のために放流するのか』『放流により、環境にどんな影響があるのか』を考えるきっかけになれば」
と話した。
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