
議会局「軍師」論のススメ
憲法上の要請と有権者の期待を軽視して良いのか?|議会局「軍師」論のススメ 第115回
NEW地方自治
2026.05.14
この記事は3分くらいで読めます。
出典書籍:『月刊ガバナンス』2025年10月号
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本記事は、『月刊ガバナンス』2025年10月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。
先日、依頼された議員研修会で、議会改革の方針は憲法を頂点とする関連法規の立法趣旨と、現実の議会運営のズレを補正する視点から考えるべきだと話した。その具体例として議員選出監査委員制度の問題点(注1)についても指摘したところ、一人の議員から質問を受けた。
注1 自治体の監査委員に、識見を有する者のほかに議員からも任命できる制度。詳細は、ガバナンス2024年3月号本連載「『議員選出監査委員制度』は廃止すべきではないか?」を参照。
その主旨は、「議選監査3年目の私がリードしないと監査が進まないのが所属自治体の実態である。それでも議選監査は廃止すべきなのだろうか?」というものであった。
もちろん、監査をリードできる能力を兼ね備えた議員には敬意を表しつつも、議選監査が「名誉ポスト化」している議会が多い状況では、一般的にはレアケースだろう。
一方で議選監査委員に任ぜられると、多くの議会では決算委員会から外れるほか、一般質問も辞退させるなど、議員活動に制限が加わる。それは、監査と審査の二重性の問題や守秘義務遵守の客観的証明が難しいからであるが、本務が制限されることのほうが大きな問題ではないだろうか。公選職としての活動こそが、有権者が期待した仕事であり、監査委員としての活動に期待して一票を投じた有権者などいないからだ。そのような本末転倒を放置して良いとは思えないのである。
■ご都合主義による憲法軽視
議選監査委員制度の存廃が自治体議会における選択制となったのは、第31次地方制度調査会の答申を受けて、2017年6月に地方自治法が改正されたことによる。
だが、そこへ至る経緯を地制調の会議録等で確認すると、委員である有識者の多くが、法的問題や名誉ポスト化している実態などを理由に制度廃止の意向を示していたが、3議長会(注2)からの反対意見もあって、最終的には選択制となった経緯がみてとれる。つまり、法理論的には、二元的代表制との根源的な矛盾や議会費の監査にも議員が関わる制度的矛盾などから議論の余地などないところ、政治的妥協によって決着したともいえるであろう。
注2 全国都道府県議会議長会、全国市議会議長会、全国町村議会議長会。
そうであるならば、現行の自治法上是認されているといえども、単純に自らのメリットを理由に、憲法上の要請である議事機関と執行機関を独立関係に位置付ける二元的代表制の根本的な枠組みを軽視することは、当事者のご都合主義との批判を免れないのではないか。
そのような姿勢で、議会が市民からの信頼を本当に得られるのか、疑問を禁じ得ないのである。
■法的思考による議論の必要性
自治体議会の目指すべき姿、そこへ至るプロセス、メソッドについては様々な主張があり、議選監査委員制度の存廃議論についても両論の意見がある。多様な意見のどれを支持するかは個人の自由であるが、どの意見を信ずるべきかの基準は、法の支配を前提とする法治国家においては、「法」しか万人が納得する根拠基準はないのではないか。
属人主義的な論拠では、異なる意見を支持する人に対して、客観的な説得力など持ちえないからだ。まして、他人の意見を自ら判断しようとせず、単純に同調しようとするようなことは厳に慎むべきであろう。特定個人の意見が常に正しいという前提に立つのであれば、そもそも議論の必要性などなく、究極的には議会制民主主義自体を否定することにもつながるからだ。
議選監査についても、法改正による制度廃止を視野に入れた、抜本的な議論の高まりに期待したい。
第116回 百条調査権の可能性と限界はどこまでか? は2026年6月18日(木)公開予定です。
著者プロフィール
早稲田大学デモクラシー創造研究所招聘研究員
議会事務局研究会 共同代表
元大津市議会局長
清水 克士 しみず・かつし
1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長、局長などを歴任し、2023年3月に定年退職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。
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