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ガバナンス編集部

【あかし対話と共創ウィーク(兵庫県明石市)】全国の「対話と共創」の実践が大集合/イベントレポート

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2026.01.15

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【ガバナンス・トピックス】
全国の「対話と共創」の実践が大集合
──兵庫県明石市で「あかし対話と共創ウィーク」を開催

兵庫県明石市は、2025年10月24日~11月1日にわたり「あかし対話と共創ウィーク」を開催した。期間中、同市が掲げる「対話と共創」のまちづくりを発信するイベントを市内各地で開催。初日と2日目には、全国から自治体職員や首長らも集い、各地の実践を披露した。同市が目指す「対話と共創でつくるもっとやさしいまち明石」を体現する9日間となった。

市内各地でイベントを開催

 同市は、誰一人取り残さない「SDGs未来安心都市・明石」を目標に掲げ、「対話」を通して新たな価値を共に創る「共創」によるまちづくりを進めています。

 この「対話と共創」のまちづくりを市内外に広く発信しようと、2025年10月24日~11月1日までの9日間「あかし対話と共創ウィーク」を開催した。「知りあい 語りあい 創りだす」をキャッチコピーに、期間中は市内各地で集中的に、「対話と共創」に関する催しを展開。「こども・若者会議」「SDGs脱炭素ボードゲーム de カーボンニュートラル」「『あかし本のまちビジョン』トークイベント」など幅広い世代が参加できるよう、様々な分野での関連イベントが企画された。

イベント開催時の街頭写真

対話と共創の仕掛人が集合

初日「対話と共創のまちづくり 全国の仕掛け人大集合」

 ウィーク初日の10月24日は、「対話と共創のまちづくり 全国の仕掛人大集合」を開催。明石市内外で対話と共創を実践する方々が事例を紹介した。まず、明石市内の仕掛人らが登壇した。

①大野美代子さん(明石市連合まちづくり協議会副会長)
/「住民の活気があふれるまちづくり」

 2019年に藤江まちづくり協議会の副会長に就任。対話を大切にしたまちづくりの推進に注力。特に2021年にオープンした山陽電鉄藤江駅の駅舎を活用した「藤江駅前オアシス」を活動拠点に様々な仕掛けをしながら積極的に活動し、活気あるまちづくりを進めている。大野さんは、まちづくりの仕掛けに必要なこととして「経験と知識、知恵、そして相手への思いやりと心配り」を挙げ、「なにより最大の仕掛けは、笑顔で対応すること」と話した。

②井上真紀さん(明石市立王子小学校区コミュニティ・センター職員)
/「つながりづくりで防災力を高めよう」

 自身の被災体験から防災意識が高まり、「防災士」の資格を取得。さらに市が主催するファシリテーター養成講座に参加したことを機に、地域での多様な世代が集まる座談会(しゃべり場in王子)のファシリテーターに立候補し、実践をしてきた。井上さんは「『輪』と『和』と『話』で普段から地域でつながることで、災害時の不安を減らすことができる。人と人をつなげる手伝いをしたい」と抱負を語った。

③畑智徳さん(明石市教育委員会事務局学校教育課指導主事)
/「地域全体で子どもが育つ『コミュニティ・スクール』」

 教員でもある畑さんは、それまでの学校で完結していた学びが、「教育を行う主体はみんな」「探究活動の重要性」「剥がれ落ちない学力の重要性」を感じるようになり、社会とつながることの大切さを実感。地域と家庭と学校が協働し、子どもが育つ、地域を育てる仕組みである「コミュニティ・スクール」を推進している。コミュニティ・スクールによって、

■学校と地域・家庭の連携・協働
■地域コミュニティの再生
■地域での持続可能な学び

──ができると話した。畑さんは「学校や地域、家庭が対話と共創をすることで、未来を担う人を育てる当事者になろう」と会場に呼びかけた。

④大野成信さん(明石市市民とつながる課職員)
/「明石市の対話と共創のまちづくり」

 大野さんは、同市が基本方針として掲げる「対話と共創でつくるもっとやさしいまち明石」について、取組み事例を紹介した。同市では、2023年に「市民とつながる課」を新設。ファシリテーション専門職員も2人採用し、多様な市民の声を幅広く聞き、情報共有を図りながらまちづくりを共に進めようとしている。

 毎月タウンミーティングも開催。丸谷聡子市長との直接対話や市民の声を聞く仕組みとして「市長へのおてがみ」なども実施してきた。さらに、対話をコーディネートする職員ファシリテーターを育成(2024年度は約300人(全係長級))や、市民ファシリテーターの養成にも力を入れてきた。

 大野さんは、「対話をすればするほど、地域課題やニーズの解像度が上がる。行政、市民それぞれが持っている情報の整理ができ、何をやるべきかが明確に見えてきたことで、対話と共創のまちづくりの素地ができてきたのではないか」と実感を込めた。

「あかし市民広場」の様子
会場は明石駅前の「あかし市民広場」。周囲には店舗も多く、通りすがりの市民も足を止めていた。

 続いて、全国各地の仕掛人として4人が登壇した。

①高木超(こすも)さん(北九州市立大学准教授)
/「実践事例から学ぶ『SDGs×公民連携』」

 SDGsと自治体政策の研究を行う高木准教授は、SDGsと公民連携の関係性について紹介。SDGs達成に向けた取組みを推進している自治体が急増している一方で、行政計画で既存の政策等とSDGsとの関連をアイコンで示す事例が大半を占めている現状に、「SDGsが“コミュニケーションツール”の役割に留まり、政策の改善までには用いられていない」という問題意識を共有した。そして、「SDGsは行政の専門用語ではなく、公民連携を進める上での共通言語・目標として機能することができる」と述べた。

 その上で、自身が参与(SDGsアドバイザー)として携わる京都府亀岡市の取組みを例に、SDGsを市民に「自分ごと」として捉えてもらうために「みぢサス(=身近なサステナビリティ)」という概念と具体的なツール「みぢサスカード」の開発、市民参加のプロジェクトなどを紹介した。

 公民連携を成功させるポイントとして、行政と企業・団体での①スピード感②言葉の2つの「ズレ」を整えることの重要性について言及した。

②馬袋(ばたい)真紀さん(兵庫県朝来(あさご)市職員)
/「対話で拓くまちの未来」

 馬袋さんは、朝来市での対話の場の実践を発表した。まず、同市が主催した「あさご未来カフェ」は、人と人のつながりが生まれ、新たな市民活動が生まれるきっかけになったという。

 また、同市では第2期朝来市創生総合戦略(2020年~2025年)、第3次朝来市総合計画(2022年~2029年)のいずれの計画も、「あさご未来会議」での多様な市民の対話によって策定。策定後も将来像の実現に向けて新たな対話の場づくりに取り組んでいる。

 馬袋さんは、市民参加とウェルビーイングの関係性にも触れ、対話を通して

■主体的なアクションの原動力
■多様な価値観を知り、応援する
■まちへの愛着、自分事化(シビックプライド)

──が生まれ、新たな動きが始まるとし、「まち・地域での“やりたい(Will)を大切にして、実現することで、私(たち)だけでなくまちも幸せになり、持続可能なまちづくりにもなる」と話した。

③村田まみさん(福岡県大刀洗町職員)
/「大刀洗町の対話から始まるコミュニティ」

 大刀洗町は、早くからまちづくりに「対話」を取り入れてきた「対話のまち」だ。

 村田さんは、聖徳太子の「十七条の憲法」を“公務員のバイブル”と紹介した。特に17条に触れ、「夫れ事は獨り斷むべからず必ず衆と與に論ふべし」(ひとりで何かを決断すると間違った判断をするかもしれない。簡単なことであればいいが、大切なことを決めるときは1人ではなく、必ず皆で話し合って決めなさい)の部分について、「まさに対話のこと。約1400年前から対話(ダイアローグ)をし、互いの価値観を認めていた」と紹介。その上で、「1400年たった今でもそれが大事なことは変わらない」と述べた。

 対話の場に集まるメンバーが固定化してしまっていたことから、同町では政策の話し合いは「無作為抽出」(くじ引き民主主義)で行っている。徹底的した対話を通して未来のまちづくりにつなげている事例を紹介した。村田さんは、「ルールさえしっかり設ければ、対話の場は誰でも創れる」と参加者の背中を押した。

④後藤好邦さん(山形市職員)
/「『東北オフサイトミーティング』で学んだ越境の大切さ」

 後藤さんは、時代の変化について言及。これまでの「ジグソーパズル型」(成長社会、答えがある、画一的)から「レゴブロック型」(成熟社会、答えがない、多様性)になっていると指摘。

 成熟社会では、あらゆることが“冒険”であるとし、「冒険には勇気(常識に囚われない実践)、知恵(情報収集とデータ分析)、仲間(地域内外のつながり)が必要だ」と話した。

 その上で、多様なセクターが連携、協働してまちづくりを行う「総働(そうどう)」と、これに関係するステークホルダーすべてがメリットを享受できる「相利(そうり)」が重要であり、そのためには「対話」を通した相互理解とビジョンの共有を行い、補い合いながらビジョンを実現する取組みを推進する「共創」が求められることを事例を交えて紹介。さらに、オフサイトミーティングや山形市での事業を例に、対話と共創を広げていくためには、自分のフィールドを飛び越える「越境」をすることで、「多様な価値観や知識を習得することが必要だ」と話し、仕掛人らの発表を締めくくった。

 発表の後は、仕掛人らと参加者らがグループに分かれ、対話のセッションが行われた。参加者同士も対話を通して交流をした。

直接対話の様子
明石市内外の「対話と共創の仕掛人」らが集結。参加者らも直接対話をした。

対話と共創を実践する首長らが集合

2日目「対話と共創のまちづくり 首長サミットinあかし」

 翌25日は、「対話と共創のまちづくり首長サミットinあかし」が行われた。

サミット登壇者:
久保田崇・静岡県掛川市長
小紫雅史・奈良県生駒市長
戸田敦大・兵庫県淡路市長
金子ゆかり・長野県諏訪市長(オンライン)
大宮透・長野県小布施町長(オンライン)
丸谷聡子・明石市長

コーディネーター:
中島恵理・同志社大学政策学部教授、明石市政策アドバイザー

 各首長らは、「自治体3.0のまちづくり(協創)」(小紫・生駒市長)、「出張トーク」(金子・諏訪市長)、「まちづくり対話集会、自分ごと化会議」(戸田・淡路市長)、「協働によるまちづくり地区集会、おむつリサイクル・ごみ減量推進会議」(久保田・掛川市長)、「住民、町外人材(関係人口)との対話の取組み」(大宮・小布施町長)、「対話の場としてのタウンミーティング・ワークショップ」(丸谷・明石市長)など、各自治体の対話と共創の具体的な取組みについて紹介した。

 首長らは、「対話と共創のまちづくり首長サミット共同メッセージ」も発表。共にみんなのまちをつくる「対話と共創」のまちづくりを推進していくことを表明した。

 丸谷市長は「それぞれの地域で住民主体のまちづくりを進めるために様々な工夫をしている。『対話と共創』に取り組む自治体が手を取り合いながら情報交換し、高め合っていければ」と話し、会を締めくくった。

首長サミットの様子
首長サミットでは「共同メッセージ」も出され、連携を強調した。

最終日「対話と共創の大交流会 さあここから始まる明石での共創! To the future」

 最終日の11月1日には、「対話と共創の大交流会 さあここから始まる明石での共創!To the future」を開催。地域の課題やまちの活性化に向けて多様な人たちが対話を通して新しい価値を創り出すしくみ「あかし共創プラットフォーム」も立ち上げた。

 同市は、2023年の丸谷市長就任以来、積極的にタウンミーティング、ワークショップを実施するなど「協働から共創」へのまちづくりを行ってきた。2024年に共創元年と位置づけ、ニーズや地域課題に産官学民の共創で取り組んできた。2025年は第2ステージとして、今回の「あかし対話と共創ウィーク」を開催。市内外に「対話と共創」のまちづくりの重要性を発信し、同市の目指すまちの姿に近づく機会となった。

(本誌/浦谷 收)

 

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