公務員が読みたい今週の3冊
公務員が読みたい今週の1冊【著者インタビュー編】フリーランス農家という働き方
雑誌から絞り込む
2025.03.31
今週、何読む?
読書の習慣をつけたいと思いながら、まだ始められていない…。
日々読書を嗜んでいるが、そろそろネタ切れ…「次は何を読もうか」検討中。
そんな公務員の方はいませんか?
「公務員なら読んでおきたい」業務に役立つ必携図書や、「公務員の皆様が楽しく読める」おすすめ図書をガバナンス編集部がピックアップ。
「公務員が読みたい今週の3冊」では毎週2~3冊をご紹介。
特別編「公務員が読みたい今週の1冊」ではたっぷりの著者インタビューとともに、おすすめの1冊をじっくりとご紹介します。
「今週読みたい図書」の選定にぜひお役立てください。
【公務員が読みたい今週の3冊】バックナンバーはこちら
農業の可能性、まだまだ成長中!

フリーランス農家という働き方
おためし農業のすすめ
小葉松 真里・著
太郎次郎社エディタス/1,800円+税
著者プロフィール

小葉松 真里(こばまつ・まり)
1990年生まれ。北海道帯広市出身。「農業にも多様な関わり方を実現させたい」と思い、土地と家を所有せずに全国の農場をわたり歩くフリーランス農家という働き方を自らつくり実践。夏は北海道、冬は沖縄・沖永良部島をわたり歩く。年間300日、ホテルやゲストハウスに住み各地方をめぐっている。フリーランスで農業ライターとして情報発信をしながら、北海道、沖縄県を中心に農村地域の課題解決事業にも取り組む。
フリーランス農家という働き方 おためし農業のすすめ
── 著者インタビュー
農業と聞くと、「自然に囲まれながら地域で作物を育てる、やりがいのある仕事」という正のイメージとともに、「重労働」「不安定」「稼ぎが少ない」といった負のイメージも浮かぶ人は多いかもしれない。しかし本書を読むと、自分の中にある「農」のステレオタイプなイメージが崩れる瞬間に立ちあえる。
小葉松真里さんは自らの土地と家を持たず、全国の農場をわたり歩く “フリーランス農家” だ。各地の農家をたずねて作業を手伝うほか、人同士をつなげてイベントを開催したり、相談ごとに乗ったりと新たな仕事を生み出している。そうして6年をかけ、300以上もの農家と出会ってきた。その異色の働き方や、全国各地の農家の実践、農の知られざる魅力について現場目線で発信したのが本書である。
フリーランス農家として働き始めて5年ほどが経ち、だんだんと自分が感じる農業の魅力について自信を持てるようになってきたころ、版元から執筆の話が舞い込んだそうだ。
「私が農業を始めた際、情報が少ないぶんハードルも高く感じた。だからこそ、これから一歩踏み出そうとしている人に『こんな関わり方もあるよ』と紹介し、勇気づけられるような内容にしたかった」
と小葉松さん。
加えて
「農家さん自身にも、こんな形の農業がある、こんな発信方法がある、こんな関わり方をする人たちがいる……と知ってもらうことで、新たな挑戦やつながりのきっかけにしてほしい」
と想いを語る。
そんな小葉松さんがつねに注視しているのは、農家の「想い」の部分だ。つくっている作物や導入している技術の種類ではなく、「どんな想いでその作物をつくり、その技術を使うのか」が大切なのだという。
「例えば沖縄県今帰仁村(なきじんそん)で『かりゆしすいか』を育てる上間泉穂(みずほ)さんは、SNSを通じてスイカを直販したり、農作業の様子を発信している。そこには “おいしさに見合った値決めをしたい” “消費者と直接つながり、ちゃんと声を聞いたり、作物ができる過程をみせていくことで、より深い信頼関係を築きたい” という想いがある。農業はこうした部分をうまく前に出せていないと感じるので、魅力的な事例をもっと広めていくことで若い人にも可能性を感じてもらいたい」
と熱意を込める。
その土地ならではの土壌から育てあげた作物は、食にとどまることなく、景観、観光、教育、雇用、と大きく枝葉をのばし、さまざまな価値を地域に実らせる。AI等でインスタントに成果物が提供される時代にあって、農業のそうした「唯一無二性」に惹かれたと、小葉松さんは笑顔をみせる。
フリーランス農家という働き方は、農業が内包する多くの可能性の芽を、さらに豊かに、さらに大きく育んでいくはずだ。