リーガルテック活用の最前線―第7回ドキュメントの閲覧(『リーガルテック活用の最前線―AI・IT技術が法務を変える』より)

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2021.06.16

リーガルテック活用の最前線―第7回 ドキュメントの閲覧 (㈱FRONTEO編著/弁護士ドットコム㈱・櫻庭信之著『リーガルテック活用の最前線―AI・IT技術が法務を変える』より)

 本年6月10日に、2020年7月開催の東芝の株主総会の運営について、株主側に選任された弁護士でつくる第三者委員会は、総会は公正に運営されたものとはいえないと結論づけました。報告書では、東芝が株主提案を妨げようと、経済産業省と緊密に連携し、不当な影響を一部の株主に与えたとしています。

 この不正調査では、デジタル・フォレンジック調査が実施され、7名の東芝関係者のメールサーバー(過去のメールサーバーのバックアップデータを含む)から、電子データの処理・解析を実施したうえで、添付されたワードファイル、エクセルファイル、PDFファイル等の文書ファイル合計77万8227件(52万3462件の電子メールと25万4765件の添付ファイル)をレビュープラットフォームにアップロードしました。そして、アップロードされた文書ファイルについて、重複メールの削除、添付ファイルの種類、キーワード等の一定の条件に基づきデータを一定量(6万6662件)に絞り込み、さらにAIによる重要度の評価付けを行ったうえで、レビューを行っています。

 第7回は本書第3章から「閲覧」の部分を抜粋してお届けします。

1 オンラインレビューシステム

 ドキュメントを実際に閲覧する際には、オンラインレビューシステムにデータをアップロードする。それにより、企業の訴訟担当者や弁護士がインターネットを介して国境や時間に関係なくデータを閲覧できるようになる。

 訴訟担当の弁護士がオンラインレビューシステム上でキーワード検索等により絞り込まれたデータを実際に目で見て確認し、最終的に提出するデータを決定する。

2 ドキュメントレビュー

 最近は、ビッグデータ化が進み、そもそも最初の段階で蓄積されているデータが膨大であるため、各プロセスにおいてデータを絞り込んでいっても、なお多くのデータが目視での関連性の確認を要するものとして残ってしまう。とはいえ、実際にデータの内容を確認すると、訴訟事案と関連性がないと速やかに判断できるものも多く存在する。そのため、一次レビューと二次レビューに分けて閲覧する方法が採用されることが多い。一次レビューは、どちらかというと関連性のないものを効率的に排除する目的で、Hot(重要)、関連性がある(Responsive)データと関連性がない(Not-Responsive)データを大別する作業である。これは、弁護士ではなく、ディスカバリベンダーが対応することが多いが、排除の基準は、弁護士の指示に基づく。一次レビューで排除されなかった訴訟事案に関連性のある可能性があるデータについて、弁護士が二次レビューを行い、最終的に相手方に開示すべきデータを決定する。

3 コーディングパネル

 上記において、一次レビューにおいては、Hot(重要)、関連性がある(Responsive)データと関連性がない(Not-Responsive)データを分類するとしたが、実際には、細かい分類に分けて確認しておくことが多い。

 たとえば、「Responsiveness」は、関連性の有無のほかに、技術的な問題があって閲覧できない、使用言語でない言語によって作成されており判断できない、といった分類もされている。また、「Issue Tag」は、ミーティングに関係するもの、アグリーメント(契約)に関係するもの、プライシング(価格)に関係するもの、カスタマー(顧客)に関係するものなどに分類することを求められる場合もある。

 一次レビューの段階で細かく分類ができると、二次レビューを行う弁護士の負担は相当に軽減される。

 「Key Document」はより重要なドキュメントの場合、「Privilege」はクライアントと弁護士の訴訟に関する相談事項として非開示が認められているもの、「Confidentiality」は機密情報にかかわる内容が記載されているもの、「Redaction」は内容の一部がPrivilegeに係る場合など、その部分を墨塗りなど判読できないようにして非開示部分と開示部分を分けたうえで提出する必要のあるもの、「Comments」はフリーコメントつまり自由記述欄である。

4 Privilege ドキュメントの確認

 一次レビューでは、Responsive(提出対象) に仕分けられたドキュメントに関して、Potential Privilege(秘匿特権可能性あり) とタグ付けを行うことが多い。一次レビューは弁護士資格をもたない者が行うことが多く、最終的にPrivilege(秘匿特権)に該当するか否かの判断は二次レビューにおいて弁護士が行うため、あくまで秘匿特権の可能性について判断することになる。

 もちろん一次レビューにおいて、Privilege(秘匿特権)の可能性があるデータの見落としがないように、広い範囲でPotential Privilege(秘匿特権可能性あり)のタグ付けを行うようにしているが、二次レビューにおいても、たとえば、弁護士事務所の名称、弁護士名、弁護士の電子メールアドレスのドメインの部分、あるいは「Attorney」「Privilege」「義務」「虚偽」「強制」「検察」といった弁護士と依頼者が法的な相談を行う場合によく出てくるキーワードなどにより再度検索し、最終的な確認を行う。

 *本稿は、(株)FRONTEO編著/弁護士ドットコム㈱・櫻庭信之著『リーガルテック活用の最前線―AI・IT技術が法務を変える』の一部を抜粋したものです。

 

過去の連載はコチラから

第1回 デジタル・フォレンジックとは
  https://shop.gyosei.jp/online/archives/cat02/0000030580
第2回 データ収集―証拠データの複製の作成
  https://shop.gyosei.jp/online/archives/cat02/0000030596
第3回 データの処理
  https://shop.gyosei.jp/online/archives/cat02/0000030608
第4回 データの分析─キーワード検索
  https://shop.gyosei.jp/online/archives/cat02/0000030627
第5回 言語データの解析
  https://shop.gyosei.jp/online/archives/cat02/0000030626  
第6回 AIレビューシステム
  https://shop.gyosei.jp/online/archives/cat02/0000030642

 

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