感染症リスクと労務対応

弁護士法人淀屋橋・山上合同

【労務】感染症リスクと労務対応 第17回 ウイルス等感染症対策による特別休暇を取得義務化された年次有給休暇にあてることは可能?

NEWキャリア

2020.05.09

新型コロナウイルスに関連して、給料、休業補償、在宅勤務、自宅待機など、これまであまり例のなかった労務課題に戸惑う声が多く聞かれます。これら官民問わず起こりうる疑問に対して、労務問題に精通する弁護士(弁護士法人淀屋橋・山上合同所属)が根拠となる法令や公的な指針を示しながら、判断の基準にできる基本的な考え方をわかりやすく解説します。(編集部)

ウイルス等感染症対策による特別休暇を取得義務化された年次有給休暇にあてることは可能?

(弁護士 堀内 聡)

【Q17】

 ウイルス等感染症対策として、従業員に特別休暇を付与していますが、取得義務化された年次有給休暇の5日分にあてることはできますか。

【A】

 まず年次有給休暇と特別休暇の関係について、整理します。その上で、ウイルス等感染症対策として与えられた特別休暇を年次有給休暇の5日分にあてられるかどうか、解説していきます。

年5日の年次有給休暇の取得義務と特別休暇の関係

 平成30年4月1日施行の改正労働法基準法39条7項により、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、そのうち年5日を取得させなければならないことが義務づけられ、使用者が、時季を指定して取得させなければならないこととなりました(計画年休や労働者が自ら取得したものを除く)。
 この点、厚生労働省が作成した「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」というリーフレット〈https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf〉によれば、特別休暇は、年5日の年次有給休暇の取得義務の対象とはならない旨が記載されています。また、そのQ&Aによれば、法定の年次有給休暇とは別に設けられた特別休暇を取得した日数分については、原則として控除することはできないとされています(平成30年12月28日基発1228第15号第3問12)。
 もっとも、同リーフレットでは、たとえば、労働基準法115 条の時効が経過した後においても、取得の事由および時季を限定せず、法定の年次有給休暇日数を引き続き取得可能としている場合のように、法定の年次有給休暇日数を上乗せするものとして付与されるものについては、その取得日数を5日から控除することが可能であるとしています。

特別休暇を有給休暇とできる条件とは

 かかる厚生労働省の見解を前提とすれば、ウイルス等感染症対策として与えられた特別休暇が、「取得の事由及び時季を限定」するものであるかどうかによって、控除の可否が異なってくると考えられます。
 すなわち、感染症対策として導入される特別休暇としては、たとえば、

  • 〇 学校等が閉鎖されたことにより子の世話をしなければならなくなった保護者に対する休暇制度
    〇 ウイルス感染症に罹患したわけではないものの、その疑いがある従業員に対し、事業場内での感染拡大防止のために休暇を認める制度
    〇 国や地方公共団体からの自宅待機要請等を踏まえ、労働者に対し、特別の休暇を付与する制度等が考えられるところです。

 

 このように、感染症対策のために導入される特別休暇制度の場合、多くは、取得の事由や時季が無限定ということはあまり想定しにくいと考えられます。
 そうすると、このような特別休暇を利用して休業した従業員について、年次有給休暇の取得日数として控除することはできないものと考えられます。
 他方で、感染症の拡大によって、取得の事由や時季を限定しない特別休暇を導入する企業もあろうかと思います。
 このような休暇制度の場合、年5日の取得義務の対象とするためには、いうまでもなく、年次有給休暇と同様に、有給の休暇とすることが必要である点に留意が必要です。

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弁護士法人淀屋橋・山上合同は、あらゆる分野の法律問題について、迅速・良質・親切な法的サービスを提供している法律事務所。2020年3月現在64名の弁護士が所属。連載を担当したメンバーは、主に企業側に立って、雇用や労働紛争に係る相談対応、法的助言から裁判手続、労働委員会における各種手続の代理人活動等を行っている。

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