連載 vol.105「つながる」力 「釣り」がつなぐ田舎と都会と地産地消【松浦城太郎(静岡県西伊豆町職員)】
地方自治
2024.07.15
目次
本記事は、月刊『ガバナンス』2022年12月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。
所属等は執筆(掲載)時点のものです。
※本コラムは主に自治体職員によるネットワークのメンバーがリレー形式で執筆します。
西伊豆町には「ツッテ西伊豆」という釣りを切り口とした、日本で唯一の観光コンテンツがある。
簡単に説明すると、「はんばた市場(いちば)」という直売所と提携する遊漁船で釣った魚を、同施設にて電子地域通貨「サンセットコイン(1ユーヒ=1円)」で買い取る、という仕組みだ。獲得したサンセットコインは実際に町内でお金同様に使えるため、釣り客は擬似的に漁師気分を味わえる。使えるお店は、お土産、飲食、宿泊、温泉、ガソリンなど町内で約150店舗あり、〝魚払い?で観光が楽しめる。また、はんばた市場に持ち込まれた魚は実際に販売され、地産地消にもつながっている。
このコンテンツが生まれたきっかけは、シティプロモーションのために都内に通っていた時に、ツッテの仕組みの考案者、中川めぐみさんと出会ったこと。当時、釣り客誘致の事業も行なっていた私は、この仕組みを知り全身に電撃が走った。気づいた時には「ぜひ西伊豆でやりましょう!!」と、大きな声を上げたことが昨日のように思い出される。
鉄は熱いうちに打て、ということで早速お世話になっている地元の遊漁船組合の代表と中川さんをつなぎ、サービス提供に向けたチームを結成し地盤を固めた。
役者は揃ったので、次に着手したのはこの仕組みを運用するための根幹となる電子地域通貨の導入。以前、ふるさと納税事業立ち上げの時にお世話になった事業者さんが提供する、電子地域通貨運用プラットフォーム「chiica(チーカ)」を使わせてもらうことにした。加盟店の開拓には役場職員の約半数が協力してくれ、あっという間にユーザーが不便なく使える規模を担保することができた。
そうして、多くのつながりの中で出来上がった「ツッテ西伊豆」が、今では都会のお客さんと西伊豆をつないでくれている。最近では大手ゲーム会社のサービス「釣りスピリッツ」とのコラボ企画も始まり、さらにつながりは拡がりをみせている。
今後、ツッテ西伊豆がどこにつながっていくのか、とても楽しみである。
(静岡県西伊豆町職員/松浦城太郎)