最新法律ウオッチング
最新法律ウオッチング―孤独・孤立対策推進法(2024年4月1日施行)
自治体法務
2023.12.06
※2023年10月時点の内容です。
最新法律ウオッチング 第126回 孤独・孤立対策推進法
(『月刊 地方財務』2023年11月号)
2023年の通常国会において、孤独・孤立対策推進法が成立した。
近時における社会の変化により個人と社会や他者との関わりが希薄になる中で、日常生活・社会生活において孤独を覚えることにより、又は社会から孤立していることにより心身に有害な影響を受けている状態(孤独・孤立の状態)にある者の問題が深刻な状況にあるとされる。
政府は、このような状況を踏まえ、孤独・孤立の状態となることの予防、孤独・孤立の状態にある者への迅速かつ適切な支援その他孤独・孤立の状態から脱却することに資する取組(孤独・孤立対策)に関する総合的な施策を推進するため、孤独・孤立対策推進法案を国会に提出し、成立した。
孤独・孤立対策推進法
●孤独・孤立対策の基本理念
孤独・孤立対策は、次の事項を基本理念として行うこととした。
① 孤独・孤立の状態は人生のあらゆる段階において何人にも生じ得るものであり、社会の変化により孤独・孤立の状態にある者の問題が深刻な状況にあることに鑑み、孤独・孤立の状態にある者の問題が社会全体の課題であるとの認識の下に、社会のあらゆる分野において孤独・孤立対策の推進を図ることが重要であること。
② 孤独・孤立の状態となる要因や孤独・孤立の状態が多様であることに鑑み、孤独・孤立の状態にある者やその家族等(当事者等)の立場に立って、当事者等の状況に応じた支援が継続的に行われるようにすること。
③ 当事者等に対しては、その意向に沿って当事者等が社会や他者との関わりを持つことにより孤独・孤立の状態から脱却して日常生活・社会生活を円滑に営むことができるようになることを目標として、必要な支援が行われるようにすることを旨とすること。
●国・地方公共団体の責務等
国は、基本理念にのっとり、孤独・孤立対策に関する施策を策定し、実施する責務を有し、地方公共団体は、基本理念にのっとり、孤独・孤立対策に関し、国や他の地方公共団体との連携を図りつつ、その区域内における当事者等の状況に応じた施策を策定し、実施する責務を有することとした。
また、国民は、孤独・孤立の状態にある者に対する関心と理解を深めるとともに、国や地方公共団体が実施する孤独・孤立対策に関する施策に協力するよう努め、国、地方公共団体、当事者等への支援を行う者、地域住民その他の関係者は、基本理念の実現に向けて、相互に連携を図りながら協力するよう努めるものとした。
●孤独・孤立対策に関する施策
孤独・孤立対策に関する施策として、その推進を図るための重点計画の作成、孤独・孤立対策に関する国民の理解の増進、相談支援の推進、関係者相互の連携・協働の促進、当事者等への支援を行う人材の確保、養成や資質の向上、地方公共団体や当事者等への支援を行う者に対する支援、孤独・孤立の状態にある者の実態等に関する調査研究の推進について定めた。
●孤独・孤立対策地域協議会
地方公共団体は、孤独・孤立対策を推進するために必要な連携・協働を図るため、当事者等に対する支援に関係する機関等により構成される孤独・孤立対策地域協議会を置くよう努めることとした。協議会は、その目的を達成するため、必要な情報の交換や支援の内容に関する協議を行い、その結果に基づき協議会の構成機関等が支援を行うこととした。また、協議会は、その構成機関等に対し、支援の対象となる当事者等に関する情報の提供等の必要な協力を求めることができ、協議会の事務に従事する者等の秘密保持義務についても定めた。
●孤独・孤立対策推進本部
内閣府に、内閣総理大臣を長とする孤独・孤立対策推進本部を置き、本部は、孤独・孤立対策の重点計画を作成し、その実施を推進することとした。
●施行期日
この法律は、2024年4月1日から施行される。
国会論議等
国会では、施策の対象となる孤独・孤立について質問があり、政府から、孤独・孤立は、その性質上、当事者等が置かれている具体的な状況は多岐にわたり、孤独・孤立の感じ方、捉え方も様々であることから、政府の孤独・孤立対策においては、当事者等が望まない孤独と孤立を対象として、それぞれの状況に応じた多様なアプローチや手法により取組を進めているとの説明がされた。
また、既存の施策との違いについて質問があり、政府から、既存の福祉、経済的困窮施策、引きこもり対策などの各種支援施策は、具体的に起こる問題に対応する課題解決型の支援を行うものであり、孤独・孤立対策では、こうした対応のみならず、孤独・孤立の問題やそれらから生じ得る更なる問題に至らないようにする予防の観点からの取組が重要との説明がされた。