NEXT STEP デジタル庁 第6回 「地方公共団体情報システム標準化基本方針」について
地方自治
2023.01.23
この資料は、地方公共団体情報システム機構発行「月刊J-LIS」2022年12月号に掲載された記事を使用しております。
なお、使用に当たっては、地方公共団体情報システム機構の承諾のもと使用しております。
NEXT STEP デジタル庁
第6回 「地方公共団体情報システム標準化基本方針」について
デジタル庁デジタル社会共通機能グループ地方業務システム基盤チーム
はじめに
2022年10月7日、「地方公共団体情報システム標準化基本方針」(以下「基本方針」という。)が閣議決定されました。本基本方針は、地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化を推進するため、基本的な事項を明らかにするものです。
本稿においては、その策定経緯及び内容等について取り上げます。
基本方針の策定
地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(以下「標準化法」という。)第5条第1項において、「政府は、地方公共団体情報システムの標準化の推進を図るための基本的な方針(以下この条において「基本方針」という。)を定めなければならない。」とされています。
また、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(2022年6月7日閣議決定)において、「基幹業務システムを利用する原則全ての地方公共団体が、目標時期である令和7年度(2025年度)までに、ガバメントクラウド上に構築された標準準拠システムへ移行できるよう、その環境を整備することとし、その取組に当たっては、地方公共団体の意見を丁寧に聴いて進める。」とされたことを踏まえ、地方公共団体やベンダにおける取り組みの現状と課題を把握するため、2月から3月にかけて、地方公共団体やベンダへのヒアリングを実施し、いただいた質問等を整理した上で、検討段階の案として基本方針【第0.8版】を4月19日に全国の地方公共団体に提示し、意見照会を行いました。
意見照会の結果を踏まえ、基本方針案を8月31日に提示し、再度地方公共団体へ意見照会を行い、標準化法第5条第4項に定められる地方三団体との協議や関係行政機関との協議を経て、閣議決定されたものです。
策定までの具体的なスケジュールは次のとおりです。
2〜3月 地方公共団体・ベンダヒアリング
4月19日〜5月20日 0.8版意見照会
6月22日〜7月6日 ベンダアンケート
8月31日〜9月16日 基本方針案意見照会
9月12、13日 地方公共団体向け説明会
9月16日〜 法定協議
9月30日 関係府省会議
10月7日 閣議決定
また、基本方針に対する地方三団体からの意見としては、次のとおりです。
・全国知事会「基本方針において、基幹業務システムを利用する地方自治体が、2025年度までにガバメントクラウドを活用した標準準拠システムに移行できる環境を整備することを目標とし、国は、2023年4月から2026年3月までの「移行支援期間」において、必要な支援を積極的に行うとされている。すべての地方自治体が、システム移行を円滑かつ確実に実現できるよう、地方自治体の状況に応じたきめ細やかなフォローアップをお願いしたい。」
・全国市長会「標準化対象外の業務や都市自治体が独自で実施する施策について、統一・標準化が施策継続の弊害とならないよう、地域特性を踏まえた対応を可能とするとともに、確実にガバメントクラウドへの構築を可能とすること。」
・全国町村会「町村は、職員が少なく、複数の業務を兼務している場合が多いことから、進捗状況の報告や調査については可能な限り簡略化し、町村職員にとって加重な負担とならないよう配慮すること。」
基本方針の内容
基本方針については、大きくは図-1に示したように、次の①〜④で構成されています。
①統一・標準化の意義及び目標
②施策に関する基本的な方針
③標準化基準に関する基本的な事項
④その他推進に必要な事項
このうち、①では、移行期間について2025年度までに、ガバメントクラウドを活用した標準準拠システムへの移行を目指すこと、情報システムの運用経費等については、2018年度比で少なくとも3割の削減を目指すことを定めています。
この点、デジタル庁が実施した市町村との意見交換や意見照会において、移行作業の集中に伴う技術者の不足や障害発生リスクの高まり、契約期間中の解約に伴う多額の違約金の発生などの意見が寄せられましたが、一方で、期待される効果をできるだけ早く発現させる必要等もあり、これまで重点計画等で示してきた方針を踏襲することとしています。
基本方針では、こうした点を考慮し、デジタル庁と総務省は、すべての地方公共団体の移行スケジュールと移行にあたっての課題を把握し、解決に協力して取り組むこととしており、10月7日付「地方公共団体情報システムの標準化に関する移行スケジュールの調査について(照会)」(デ社第565号・総行デ第53号)においてスケジュールの照会の依頼を行ったところです。
②③④について、主な記載は、図-2のとおりとなります。
今後の取り組み
基本方針の策定に先立ち、8月末時点で各業務システムの標準仕様書をはじめとした以下の関連文書を公表しているところです。
①機能標準化基準(標準化法第6条)に関連するもの
20業務(住民基本台帳、戸籍、戸籍の附票、固定資産税、個人住民税、法人住民税、軽自動車税、印鑑登録、選挙人名簿管理、子ども・子育て支援、就学、児童手当、児童扶養手当、国民健康保険、国民年金、障害者福祉、後期高齢者医療、介護保険、生活保護、健康管理)の標準仕様書
②共通標準化基準(標準化法第7条)に関連するもの
(1)地方公共団体情報システムデータ要件・連携要件標準仕様書(標準化法第5条第2項第3号イ)
①総論
②データ要件の標準(基本データリスト、共用データリスト)
③連携要件の標準(機能別連携仕様、API規定事項一覧)(2)地方公共団体情報システム非機能要件の標準(標準化法第5条第2項第3号ロ・ニ)(3)地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(標準化法第5条第2項第3号ロ関連) (4)地方公共団体情報システムのガバメントクラウドの利用に関する基準(標準化法第5条第2項第3号ハ) (5)地方公共団体情報システム共通機能標準仕様書(標準化法第5条第2項第3号ニ)
※5機能(申請管理機能、庁内データ連携機能、住登外者宛名番号管理機能、団体内統合宛名機能、EUC機能)
③機能要件、項目定義書、API連携仕様書、ファイル連携仕様書、地方公共団体情報システム標準化基本方針(標準化法第5条)に基づくもの
・標準仕様書間の横並び調整方針 ・地方公共団体の基幹業務システムの標準仕様書についてのバージョン管理方針
また、9月30日に開催された「地方公共団体の基幹業務等システムの統一・標準化に関する関係府省会議(第2回)」において、図-3のとおり、標準仕様書の改定方針を示しています。
第二グループとも呼ばれる今夏に標準仕様書の第1.0版を策定した業務を中心に、各業務の検討会等で継続検討とされているものがあるほか、デジタル庁が策定したデータ要件・連携要件及び共通機能の標準仕様書についても、実装や運用に向けてさらに具体化・詳細化が必要な点があり、事業者を交えて検討を開始しています(共通機能等技術要件検討会)。
これらの検討に関しては、システム開発への影響を最小限とする必要があることから、年内には見直しの見込みについて示した上で、遅くとも年度内での標準仕様書への反映を目指しています。
また、政令指定都市に関しては、行政区の存在など制度的な違いが機能標準化基準に十分反映されていないとの指摘があったことから、政令市の協力も得ながら年度内を目途に、標準仕様書の集中的な点検を行うこととしています。
これらの取り組みを通じて、標準準拠システムが満たすべき標準仕様書のバージョンについて、遅くとも今年度内には確定させる必要があると考えています。
なお、来年度以降の移行支援期間についても制度改正等による改版は予想されますが、制度改正に伴う見直しは原則適用の一年前までに仕様書に反映することとし、制度改正が毎年行われる事務等については現実的にこれにより難いことが想定されるため、別途の反映方法を調整することとしています。BPRの反映等、制度改正以外を契機とした見直しも今後重要になるものであり、年に一度、適用の一年前のタイミングで行う方針としていますが、こちらは標準準拠システムへの移行を優先して進めるため、移行支援期間の間は原則として見直しを行わない予定です。
おわりに
地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化は、すべての地方公共団体が20もの基幹業務システムをごく短期間で新しいシステムに移行させるというこれまでに経験のない取り組みであり、試行錯誤しながら進めなければいけない部分もどうしても出てきますが、一つひとつの「点」で展開されてきた行政DXを本格的に面展開させていく基盤として越えていかなければならないステップです。デジタル庁の取り組みもまだ不十分な面もあるかと思いますが、引き続き地方公共団体の皆様の状況を丁寧に伺いながら、総務省等関係府省と緊密に協力して、標準準拠システムへの移行に向けた環境整備に取り組んでまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
参考:デジタル庁Webサイト「地方公共団体情報システム標準化基本方針」を策定しました」
https://www.digital.go.jp/news/e4c6bb87-c815-48b1-960d-7fe9451973eb/
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