NEXT STEP デジタル庁 第5回 ガバメントクラウド先行事業の中間報告等について
地方自治
2023.01.06
目次
この資料は、地方公共団体情報システム機構発行「月刊J-LIS」2022年11月号に掲載された記事を使用しております。
なお、使用に当たっては、地方公共団体情報システム機構の承諾のもと使用しております。
NEXT STEP デジタル庁
第5回 ガバメントクラウド先行事業の中間報告等について
デジタル庁デジタル社会共通機能グループ地方業務システム基盤チーム
はじめに
デジタル庁は、地方公共団体の協力を得て、ガバメントクラウド先行事業(以下「先行事業」という。)を2021年度から実施しています。本事業は複数年度にわたり、実際に地方公共団体の情報システムをガバメントクラウド上に構築することで、その移行に係る課題の検証を行うものです。本稿においては、これまでの先行事業の経緯及び検証の状況について取り上げます。
先行事業(市町村の基幹業務システム)の実施
デジタル庁(公募時は内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室)は、2021年6月4日に先行事業(市町村の基幹業務システム)の公募を実施しました。
当該事業は、ガバメントクラウドのテスト環境に、市町村が現に利用する基幹業務等システム又は市町村が導入を希望する基幹業務等システムのアプリケーションをリフトし、市町村が安心してガバメントクラウドや回線を利用できることを検証し、検証後には、データをリフトし、本番環境に移行するものです。
具体的には以下の点を検証項目としています。
・先行事業において構築したシステムが、「地方自治体の業務プロセス・情報システムの非機能要件の標準(標準非機能要件)」(2020年9月内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室・総務省)が求める非機能要件(セキュリティ、可用性、性能・拡張性、移行性、運用・保守性等)を満たすことを検証する。 ・あわせて、先行事業の実施を通じて得られた知見を元に、非機能要件の標準の拡充を行う。 ②標準準拠システムへの移行方法の検証
・ガバメントクラウドにリフトしたシステムとリフトしないシステムとの連携を検証する。 ・ガバメントクラウドにリフトしてから標準準拠システム(地方公共団体の情報システムの標準化法に規定する基準(標準仕様)に準拠したシステムをいう。)へシフトする方法の有用性について検証する。 ③投資対効果の検証
・上記の検証を前提に、現行システムとの投資対効果の比較を行う。
先行事業(市町村の基幹業務システム)の公募に対しては、52件(複数地方公共団体の共同での応募も含む。)の応募があり、10月26日に図-1の8件について採択しました。
また、10月4日には2021年度のガバメントクラウドの公募が行われ、10月26日にAmazon Web Service及びGoogle Cloud Platformがガバメントクラウドの対象となるクラウドサービスとして採択されました。先行事業(市町村の基幹業務システム)の参加自治体においてはいずれもAmazon Web Serviceを用いた検証を行っています。
先行事業(市町村の基幹業務システム)については、検証受託事業者としてKPMG・MRI共同事業体(代表企業:KPMGコンサルティング株式会社)を採択し、検証受託事業者が個別の先行事業参加団体・協力事業者と協定を締結した上で、進捗等を把握し、またガバメントクラウドへの移行にあたっての具体的な作業をデジタル庁(地方業務システム基盤チーム、クラウドチーム)と連携しながら進めています。
非機能要件の標準の見直し
非機能要件の標準の検証項目について、具体的な検証を行うにあたり、先行事業参加団体・協力事業者からの要件の具体化等の指摘を踏まえ、非機能要件の標準の見直しを行いました。
見直し結果については、2022年8月31日に「地方公共団体情報システム非機能要件の標準【第1.1版】」としてデジタル庁HPにて公表を行っています。
先行事業(市町村の基幹業務システム)の中間報告
2022年9月14日、先行事業(市町村の基幹業務システム)について、中間報告を公表しました。
これまで検証項目としてきた3点及びリファレンスアーキテクチャ(効果的なシステム構成の参照モデル)の検証の計4項目について、以下のとおり、現時点で提供可能な情報を盛り込んだものです。
(1)非機能要件の標準の検証について
非機能要件の標準の検証事項、検証方法
・非機能要件の標準の各項目について、検証開始時点で想定している選択レベルを団体ごと(マルチベンダーの場合は各アプリケーションベンダー)に整理したもの。基本的には非機能要件の標準で求めている選択レベルで検証を行うが、同要件内で定めている「選択時の条件」等によって選択レベルを上下しているものがある。 ・非機能要件の標準の各項目について、検証開始時点で想定している検証事項及び検証方法を団体ごと(マルチベンダーの場合は各アプリケーションベンダー)に整理したもの。
(2)投資対効果の検証について
構成計画(2022年5月)時点での机上比較検証結果
・「A .現行利用中のシステムを同規模で入れ替え・継続利用した場合」と「B .現行利用中のシステムをガバメントクラウドへリフトする場合」のコストについて、構成計画時の設計に基づく机上試算を行った団体ごとの結果及び全体的分析を整理したもの。
(3)リファレンスアーキテクチャの検証について
計画時利用予定クラウドサービス構成情報一覧表
・構成計画時点での机上比較検証において利用予定としているクラウドサービス一覧を団体ごとに整理したもの。
ガバメントクラウドの利用に関する基準
2022年10月7日に「地方公共団体情報システムのガバメントクラウドの利用に関する基準【第1.0版】」をお示ししたところです。地方公共団体がガバメントクラウド上の基幹業務システム等を利用するにあたってのデジタル庁、クラウドサービス事業者、アプリケーション事業者等の関係等を示したものです。記載項目は図-2のとおりです。
本基準に記載しているとおり、地方公共団体が利用するガバメントクラウドの利用方式は、共同利用方式と単独利用方式の二つがありますが、効率性の観点から図-3の共同利用方式でのご利用を推奨しています。
・共同利用方式:複数の地方公共団体が同一のガバメントクラウド運用管理補助者にガバメントクラウド個別領域のクラウドサービス等の運用を委託する方式 ・単独利用方式:地方公共団体が自ら直営で、ガバメントクラウド個別領域のクラウドサービス等の運用管理をする方式
今後、契約書のひな形やガバメントクラウドの利用ガイド等により、さらに具体的な情報を提供していく予定です。
先行事業(地方自治体のセキュリティシステム)の実施
デジタル庁は、2021年6月4日に先行事業(地方自治体のセキュリティシステム)の公募を実施しました。
当該事業は、次期自治体情報セキュリティクラウドの一部機能として、ガバメントクラウド等が対象セキュリティシステムを提供することにより、ガバメントクラウド等が提供するセキュリティ機能の提供に関する課題の検証を行うものです。
具体的には、CDN(Content Delivery Net-work)とWAF(Web Application Firewall)を対象セキュリティシステムとしています。
先行事業(地方自治体のセキュリティシステム)の公募に対しては、2件の応募があり、10月26日に図-4の2件について採択しました。
図-4 先行事業(地方自治体のセキュリティシステム)の採択グループ応募団体2グループを採択しました。
グループ1:7県258市町村
・青森県及び県内40市町村
・宮城県及び県内35市町村
・山形県及び県内35市町村
・新潟県及び県内30市町村
・岩手県及び県内33市町村
・秋田県及び県内25市町村
・福島県及び県内60市町村
グループ2:2県46市町村
・鳥取県及び県内19市町村
・岡山県及び県内27市町村
なお、先行事業(地方自治体のセキュリティシステム)の参加団体においては、グループ1がGoogle Cloud Platformを、グループ2がAmazon Web Serviceを用いた検証を行っています。
これらの先行事業の検証については、別途結果を取りまとめる予定です。
おわりに
ガバメントクラウド先行事業においては、そこで得られた知見を、先行事業参加団体・協力事業者のみならず、今後の地方公共団体の情報システムの標準化等を見据え、幅広く地方公共団体・事業者に展開していくことを目指すものです。現時点では、机上検証にとどまるものも多いですが、実際のシステム移行等も経てさらなる知見を得て、地方公共団体の情報システムの標準化等に資するものとすることをデジタル庁としては目指してまいりたいと考えています。
自治体職員×政府、自治体職員×自治体職員など地方のデジタル化に関する意見交換を「デジタル改革共創プラットフォーム」で、行っています。
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