会議の技術

八幡 紕芦史

会議の技術 第3回 会議を時間通りに終えるには

キャリア

2019.07.22

こうすればうまくいく!会議の技術
事前準備からファシリテーションまで

第3回 会議を時間通りに終えるには

月刊『ガバナンス』2009年6月号

 田中君は、会議の最中にイライラし始めた。その原因はこのままでいくと、会議は時間通りに終わりそうにないからだ。この後、大切な人との約束が入っている。

 予定していた終了時刻まで、あと少ししか残っていない。けれども、まだまだ話し合うべき項目がたくさん残っている。

 いつものこととはいえ、会議はダラダラした話し合いが続き、終了時間を大幅に超えてしまう。それでも、誰も表立って文句は言わない。どうすればいいのだろうか?

 

終了時刻を宣言する

 もし、会議が時間通りに終わったことがないなら、自衛手段として会議の後に約束を入れないこと。もちろん、会議そのものの問題を解決しなければならないが、まず、やれることがそれだ。

 会議が予定時刻に終わらない原因のひとつに、終了時刻を決めずに始めてしまうことがある。事前に開催通知が配布されるなら、終了時刻を確認しよう。開催通知に開始時刻が明記してあるものの、その後に「〜」とだけ書いてあるなら、その会議は永遠に続くものと思った方がいい。そんなときは、議長に、「終了時刻は何時ですか?」と尋ねることだ。

 開催通知に終了時刻を明記するだけでなく、議長は会議の冒頭で、終了時刻を宣言する。たとえば、「この会議は、午後3時に終了します」と。そうすれば、議長は宣言したからには、約束を守らなければならない。つまり、自分にタガをはめるわけだ。それでも、舌の根も乾かないうちに、宣言を無視して終了時刻を越えようとする議長がいる。そんな議長には、「この会議は何時まで延長しますか?」と尋ねよう。もし、「あと30分ぐらいで終了します」と言えば、「皆さんもそれでよろしいでしょうか」と全員の合意をとる。

 すべての会議が終了時刻とともに解散というわけにはいかない。重要な議題が目白押しの場合は、延長した方がいい。そんなときは、参加者から言われる前に議長が予想延長時間を述べ、参加者の許可をとる。会議における時間のマネジメントは議長に大きな責任がある。と同時に参加者にも、その責任はある。堂々と遅刻をしてきて、予定時刻に終われ、というのは参加者の傲慢だ。

 開始時刻通りに始めて、終了時刻通りに会議を終える。このように時間を厳守しなければ、いつまでたっても、会議の後に約束を入れることはできない。

議題は3つ以下とする

 会議が予定通りに終わらない原因がある。それは、議題が多すぎることだ。せっかく集まるのだから、できるだけたくさんのことを話し合っておきたい。その気持ちはわかる。しかし、その考えでうまくいったためしはない。結局、終了時刻を越えてダラダラと話し合いが続く。会議の時間見積もりは楽天的に考えないことだ。「これじゃ、無理かもしれない」と悲観的に考えておいて、ちょうどいい。

 議題は並列的に並べるのではなく、会議目標を達成するプロセスで組み立てることだ。たとえば、何らかの解決策を目標として議論したいなら、議題は、「現状の問題」、「問題の原因」、そして、「解決方法」とする。あるいは、企画に対する意見を吸い上げる会議なら、「企画の説明」、「企画に対する意見」そして、「意見の集約」とする。

 このように、ひとつひとつの議題をこなしていけば、自動的に目標が達成する組み立てとする。単に、来期予算の件、企画案の件などと項目を並び立てると、いくら時間があっても足りない。こう考えてくると、ひとつの会議にたくさんの議題を詰め込むべきでないことに気づく。議題は3つぐらい、いや、3つ以下にした方が安全だ。

 会議の冒頭で議長が、「本日の議題は3つあります」と言えば、参加者は意欲的に話し始める。しかし、「本日の議題は15あります」と言った瞬間、参加者は席を蹴って帰りたくなる。

 最高の会議は、議長が「これで会議は終了です」といった瞬間に、「えっ、もう終わり?」と思うもの。逆に最低の会議は、「まだ、終わらないの?」、「いつまでやるの?」と思ってしまうものだ。

 それに、議題を3つにすると、時間見積もりが容易になる。事前に、各議題にかかる時間を予測し、計画を立てておくことだ。そして、会議の冒頭で、それを宣言する。たとえば、「最初の議題に20分、2つ目の議題に…」といった具合だ。そうすれば、参加者も協力的になる。

議論を脱線させない

 会議を非効率にする原因のひとつに、議論の脱線がある。ひとつの意見に対して、多くの人は、無意識のうちに方向をずらしてしまう。たとえば、「何が原因でしょうか?」という質問に対して、「それを解決するには…」などと、とんちんかんなことを言う。

 原因を質問しても、解決法を答える。また、それを指摘せずに、そのまま受け入れてしまう。そうすると、どんどん違った方向に進んでいく。そのうちに、議題から全くはずれて、糸が切れた風船のように、どこかに飛んでいってしまう。

 議長だけでなく、参加者全員は、すべての発言に注意を払わなければならない。もし、このように、ズレた発言があれば、即、その場で指摘することだ。たとえば、「質問は原因についてですので、解決法ではなく、原因について意見をください」などと、軌道修正する。

 多くの人は、知らず知らず脱線してしまうものだ。しかし、ときに意図的に、「ちょっと、話がズレますが…」と言う確信犯がいる。そんな確信犯を受け入れてはいけない。「ちょっと、話がズレますが…」と発言したとき、間髪を入れずに、「ちょっと待ってください。本題は…」と制止することだ。そうしないと、いくら時間があっても足りなくなってしまう。

 ムダな時間の多くは、この脱線が原因だ。その他には、一人の参加者が、多くの時間を占有すること。発言し始めると止まらない人がいる。きっと、背負っているモノが多いから、あれも言いたい、これも言いたいということになる。

 しかし、これを放置すると、会議は参加者の睡眠時間になる。これを避けるためには、まず、会議の冒頭で、「意見は結論から述べてください」とフェイントをかけておくことだ。それでも、「そもそも…」と言いながら発言する人がいたら、「結論はなんでしょうか?」と尋ねるようにしよう。

 結論から述べても、その後が長い人もいる。そんな人には、途中で遮って、「おっしゃりたいことはわかりました」と打ち切ってしまう。あるいは、「ご主旨は十分伝わりました。他の方の意見もお伺いしたいので…」と、他の参加者に発言を促す。

 会議の中にはたくさんムダな時間が存在する。これをひとつひとつ寄せ集めると、会議は予定通りに終了する。

著者プロフィール

八幡 紕芦史(やはた ひろし)

経営戦略コンサルタント
アクセス・ビジネス・コンサルティング(株)代表取締役、NPO法人国際プレゼンテーション協会理事長、一般社団法人プレゼンテーション検定協会代表理事。大学卒業とともに社会人教育の為の教育機関を設立。企業・団体における人材育成、大学での教鞭を経て現職。顧問先企業では、変革実現へ、経営者やマネジメント層に支援・指導・助言を行う。働き方改革への課題解決策として慣習の”会議”から脱皮を実現する鋭い提言で貢献。著書に『会議の技術』『ミーティング・マネジメント』ほか多数。

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