
自治体の防災マネジメント
水害にあったときに~浸水被害からの生活再建の手引き~│自治体の防災マネジメント 第114回
NEW地方自治
2026.04.15
目次
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出典書籍:『月刊ガバナンス』2025年9月号
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編著者名:ぎょうせい/編
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※写真はイメージであり、実際の土地とは関係ありません。
本記事は、月刊『ガバナンス』2025年9月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。
2025年8月6日からの大雨により、鹿児島県、熊本県、そして石川県能登地方などで水害が発生した。被災されたみなさま、関係されるみなさまに、心からのお見舞いを申し上げます。今は、不安で仕方がないと思いますが、必ず生活再建できます。どうか、心を寄せ合って困難な時期を乗り越えられますよう、お祈り申し上げます。
避難生活の注意点
今回のような災害では、真夏の避難生活が待ち受けている。避難所にせよ、在宅にせよ、私の経験から挙げる特に重要な注意点として、次のようなものがある。
◎日常生活になるべく近い生活をする
自力で生活できていた高齢者が、避難所では横になることが多くなりやすい。面倒だからとトイレを我慢したり、床に食べ物を置いて食べるなど、姿勢が悪くなると熱中症や誤嚥性肺炎、コロナやノロなどの感染症にかかりやすくなる。なるべく日常生活と同様の睡眠、食事、トイレ、活動を心がけることが重要で、周りの方々の声かけが必要だ。
◎具合が悪くなったら早めに診療を受ける
夏場は体調が一気に悪化しやすい。一晩我慢しているうちに重篤な状況になることもあるので、本人も周りの方々も、早め早めに診療を受けることが大切だ。
◎安全な水を利用する
断水していた地域で水道が復旧すると、直後は水が汚れている場合がある。しばらく流して、水がきれいになってから利用する。井戸水は水質検査が終わるまで飲まない。浄化槽の場合は、トイレや風呂を使う前に点検をすることが大事だ。
浸水被害からの生活再建の手引き
水害、土砂・土石流災害に関し、災害前の対策や注意事項については、国や自治体のホームページ、ハザードマップに載っている。一方で、災害にあってしまったときの生活再建については、ほとんど記載されていない。また、家の泥出し、乾燥の注意点もほとんど書かれていない。
復旧から生活再建を考えるときに参考になるチラシが「水害にあったときに~浸水被害からの生活再建の手引き~」である(図)。

震災がつなぐ全国ネットワーク「『水害にあったときに』~浸水被害からの生活再建の手引き~」(チラシ版、2025年7月改訂)
作成者は「震災がつなぐ全国ネットワーク」で、過去の水害被災地への支援経験をもとに、この手引きを作成し、私も協力している。第1版は2017年3月に発行されたが、基準改定などを踏まえて2025年7月に改訂第1版が発行されたばかりだ。
チラシの概要
このチラシは水害にあった際にすることの一般的な手順をまとめたものだ。落ち着いて、できるところから始めることを推奨する。
①片づける前に記録を残す
写真は市町村から罹災証明書を取得するときに役立ち、また、保険金の請求にも必要だ。家や室内を片づける前に、現状を記録することを推奨したい。また、スマホの性能がよくなっているので、動画を撮っておくことで記録の取り残しを防ぐことも考えたい。
②保険会社に連絡
③罹災証明書をもらう
市町村に自宅が浸水したことを申し出ると、職員などによる被害調査が行われ、住家の被害程度を証明する罹災証明書が発行される。罹災証明書はあとで公的な支援を受ける際に必要になる。なお、大規模災害になると申し出がなくとも全戸調査が行われるが、発行までには数週間から1か月以上かかることもある。
被害を判定する1回目の調査の多くは、外から見て目視で行われ、2回目以降は家屋の傾き具合や建物の損傷などから判断される。判定に疑問がある場合には、再調査を申し込むことができる。
被害認定の目安はあるが、あくまでも目安である。2024年5月の「災害に係る住家被害認定基準の運用指針」の総則においては、「市町村が、地域の実情、災害の規模等に応じ、本運用指針に定める調査方法や判定方法によらずに被害認定調査を行うことを妨げるものではない」と明記された。被害が軽く判定されると、困るのは被災者である。この趣旨を十分に踏まえて、被災者支援の充実に努めていただきたい。
④ぬれた家具や家電を片づける
ぬれた家具や家電は、「そのまま使えるもの」「洗って使うもの」「捨てるもの」などに分ける。「迷うもの」も分けておき、あとでゆっくり決められるようにする。ゴミ捨ては分別が基本なので、市町村から伝えられる指示に従う。
上下水道、電気やガスが復旧していないと、思うように片づけができない。疲れもたまっているので、慌てずに行うことを推奨する。水害後は砂やほこりが舞っている。マスク、ゴム手袋を身につけ、こまめにうがい、消毒をする。
⑤床下やカベ裏の確認をする
水分や泥は、異臭のもとになり、放っておくとカビが発生し、健康被害につながることもある。和室は畳を上げて、フローリングやじゅうたん敷きの洋間は、点検口や基礎の通気口から床下を確認する。
これは非常に重要な項目だ。床下浸水の場合でも、床下の状態を確認しなくてはならない。自分でできない場合は、施工業者やボランティアに作業をお願いする。しっかり乾燥させるには1か月~3か月ほどかかる。
⑥自宅の修復について相談する
ボランティアによる片づけについては、最寄りの社会福祉協議会(災害ボランティアセンター)に問い合わせる。自宅の修繕には、公的な支援が使えることがある。
*
この手引き「水害にあったときに」には、必要な手続きや作業をより詳細に説明した「冊子版」もある。
さらに詳しく理解されたい方には、永野海『避災と共災のすすめ』(2025年1月、帝京大学新書)をすすめたい。特に、住家被害認定調査、災害救助法の運用方法、住宅再建時の資金調達方法など、事例、実情を踏まえて詳しく書かれていて、非常に学ぶところが多い。
著者プロフィール
跡見学園女子大学教授
鍵屋 一 かぎや・はじめ
1956年秋田県男鹿市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、東京・板橋区役所入区。法政大学大学院政治学専攻修士課程修了、京都大学博士(情報学)。防災課長、板橋福祉事務所長、福祉部長、危機管理担当部長、議会事務局長などを歴任し、2015年4月から現職。災害時要援護者の避難支援に関する検討会委員、(一社)福祉防災コミュニティ協会代表理事、(一社)防災教育普及協会理事なども務める。著書に『図解よくわかる自治体の地域防災・危機管理のしくみ』(学陽書房、19年6月改訂)など。
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