登記異動処理業務の大幅な省力化を実現! 〜「登記課税連携システム エキスパート」〜

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2025.07.31

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月刊 税 2025年8月号

月刊 税 2025年8月号
特集①:令和9基準年度
   
 固定資産税評価替えの実務ポイントQ&A
特集②:固定資産税業務における業務改善のイマ
編著者名:ぎょうせい/編
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特集 固定資産税業務における業務改善のイマ【業務改善事例】

登記異動処理業務の大幅な省力化を実現!
〜「登記課税連携システム エキスパート」〜


株式会社ダイショウ


株式会社ダイショウは固定資産税における事務改善と課税業務の適正化に43年間従事してきました。それらのノウハウをもとに、登記済通知書の電子データを活用して登記異動処理業務の約8割の省力化を実現可能にする「登記課税連携システム(エキスパート)」を開発し、全国の地方自治体220団体に納入しています(令和7年6月末時点)。

異動処理における入力業務の省力化

 固定資産税業務における異動処理は通常、法務局に紙媒体の登記済通知書を受け取りに行くことから始まります。それを担当地区・担当者に割り振り、各々が税務システムへの入力を行い、紙の情報を電算端末に転記するため、入力誤りを防ぐ目的で二重三重のチェック体制を敷いているのが一般的。ダイショウの「エキスパート」は、登記済通知書の電子データの解析を行うことで、この入力作業の大幅な省力化を実現します。

登記情報のリアルタイムの取得が可能

 登記済通知書は、異動に携わった義務者と権利者のみが表示されるという特徴があります。そのため、登記済通知書だけでは固定資産税業務において重要な賦課期日の物件の登記所有者の特定ができません。「エキスパート」では、登記事項要約書電子データ(全件データ)と登記済通知書電子データ(異動データ)の両方から登記情報を集積するため、システム構築以降であれば、任意の物件の任意の時点の登記情報を取得することが可能です。異動前、異動後それぞれの共有構成員についても確認できます。

宛名コードの自動取得が可能

 固定資産税業務では、賦課期日時点における登記上の所有者主に対して納税通知書を送付します。「エキスパート」では住民基本台帳から「宛名」情報を取得し、登記上の所有者情報と突合することで宛名コードを自動で取得可能です。前述の登記情報管理機能と合わせて、固定資産税業務を大幅に省力化できます。

税務システム標準化にも対応

「エキスパート」で実現可能な登記済通知書電子データの税務システムへの取り込みは、税システム標準化における機能要件「登記済通知書電子データの取り込み機能」に明記されています。前述の通り登記済通知書に共有構成員全員を記載していないうえ、登記済通知書の電子データはCSV形式のデータであるため直接税務システムに取り込むのは難しくサブシステムとして「エキスパート」を仲介することで、税務システム標準化要件の対応が実現します。

家屋評価システムとも連携可能

「エキスパート」は、家屋評価システム(HOUSAS・HYOCA-Z)とも連携しており、各システムで「登記情報」として手入力している情報を受け渡し、家屋評価システム上で「登記情報」の入力された新規物件を自動作成が可能です。

【事例紹介①】登記情報の課税システムへの一括移行により職員の業務負担の大幅軽減を実現

愛知県あま市

愛知県あま市

面積27.49㎢、人口約8万100人。愛知県の西部に位置し、2010年(平成22年)3月22日に海部郡七宝町、美和町、甚目寺町の3町合併により愛知県内37番目の市として誕生。広大な濃尾平野とそこを流れる河川の恩恵を受け、近郊農業を中心に発展してきたが、近年は名古屋市のベッドタウンとしても発展してきた。名古屋市の中心部から公共交通機関で約15分という立地条件にありながら、田園風景と住宅地との調和がとれた緑豊かなまちを形成している。


登記済通知書の処理作業による時間外勤務が課題

 愛知県あま市総務部税務課は、市民税係と固定資産税係で構成。固定資産税係は土地担当5名、家屋担当5名の職員で担当業務のほか、納税通知書発送業務、償却資産実地調査、また確定申告業務の応援なども行っている。

「それに加えて当市では、市民税係の職員にも協力をお願いし9月から約10万筆に及ぶ全筆調査と、約4万7100棟の全棟調査を目視で行い、翌年度の課税準備を進めています。そのため、法務局から提供される登記済通知書の処理作業に追われ、ジョブローテーションや知識豊富な職員の異動も伴って膨大な時間外勤務が課題となっていました」と税務課課長補佐の岡本美穂さんは説明する。

 登記異動処理業務では、週に1回法務局に出向き、紙媒体で提供される登記済通知書を受領し、その紙媒体の通知を確認しながらエクセルで受付簿を作成した後、土地では土地台帳システムに登記の異動情報を手入力し、また家屋は家屋台帳に手書きで加筆修正し、その上で所有者を特定するための宛名番号を調査して基幹系課税システムに異動情報を手入力していた。年間の処理量は、土地登記済通知書は約7700通、家屋登記済通知書は約2500通で計1万通を超えていた。

「登記済通知は紙媒体と電子データをUSBで受領し、電子データから受付簿を作成していましたが、土地台帳及び土地課税台帳への入力は専ら紙媒体を見ながらの手作業でした。土地登記済通知書7700通の異動処理作業時間を算定すると、1通当たりの作業は約15分程度なので1年間では1925時間、1日8時間換算で240日になり、年間で職員1人分以上の事務量に相当しました。さらに2500通の家屋登記済通知書の手書き処理があり、それらの作業が時間外勤務の増加につながっていました。また、毎年、納税通知書発送後に所有者からの問い合わせで所有者誤りの入カミスを把握したり、相続登記の際に法務局からの指摘により地積の誤りを把握したりするなどのヒューマンエラーも課題となっていました」と岡本さん。その時間外勤務の削減と、入力ミス等の削減による課税適正化を図るため、法務局からの登記済通知書等の電子データのさらなる活用を検討していったと話す。

愛知県あま市税務課の岡本美穂課長補佐
愛知県あま市税務課の岡本美穂課長補佐

DX化の追い風を受け、土地への導入でスタート

 検討を進める中、税基幹系システムを提供する企業主催の展示会で株式会社ダイショウの登記課税連携システム「エキスパート」のデモを見る機会を得た。

「エキスパートシステムには、以前から興味を持っていました。実際に稼働の様子を見て、基幹系課税システムと連携し一括して異動処理が行えるので、業務時間がかなり短縮して事務の効率化・省力化が進み、そして、入カミスやヒューマンエラーが削減できて課税適正化が図れることを実感しました。他社のシステムとも比較しましたが、データを基幹系課税システムまで一括で処理できるものはほとんどなく、そこに大きな魅力を感じました」と岡本さんは話す。

 エキスパート導入へ向けては、年間1925時間の作業時間が短縮し、時間外勤務手当を削減することで、導入経費が何年でプラスに転ずるかを算定した資料を作成して予算交渉した。ただ、登記台帳までのデータ更新をシステム化している市町村はあったものの、基幹系課税システムと連携までできるシステムを導入している市町村は県内になかった。そのため、業務削減の実現に向けた実証を提示できず、予算交渉に時間を要したという。

「導入の背中を押したのは、働き方改革に伴う業務見直しで時間外勤務の削減が提唱されていたことです。デジタル化によって事務の効率化や行政サービスの向上を図るDX化の流れもあり、エキスパート導入には追い風が吹いていました」と岡本さんは振り返る。

 予算交渉の末、令和2年4月に、土地を対象にエキスパートシステムを導入した。エキスパートシステムの活用に向けては、法務局から提供された登記事項要約書と市の固定資産課税台帳との照合作業をダイショウが行い、登記情報と課税台帳で違うところを修正した上で運用を開始した。

「家屋は未登記物件などがあり照合が難しいという判断で、土地の連携からはじめました。期待以上の導入効果であったため、家屋の連携にも踏み切りました。ただ、照合により不一致となった個所は登記簿謄本などを取り寄せて調査する必要があり、当初は結構苦心しました」と税務課主査の川合麗央さんは話す。

 土地での導入効果を踏まえ、令和4年には家屋に導入し登記異動処理業務の一層の効率化を図った。

あま市税務課の川合麗央主査
あま市税務課の川合麗央主査

業務負担が大幅軽減し、職員の働き方改革に寄与

 エキスパートシステムは現在、税務課の課長をはじめとする管理職3名と固定資産税係職員10名の計13名で活用している。具体的には、毎週金曜日にエキスパートシステムに登記済通知を取り込み、登記情報を管理しており、さらに土地については、月1回のペースで課税システムヘ連携し、家屋は月に一度、家屋評価システムヘ評価対象物件データを連携して登記情報を自動入力している。

「相続人調査、全棟全筆調査等に追われる中、業務負担が大幅に軽減し、時間外勤務が削減できました。登記の異動情報を翌日には、システム内で確認でき、また、異動に伴う測量図などの図面も確認できる機能を気に入っています。家屋評価システムとの連携により、登記情報の自動登録が行えるので、家屋評価業務の効率が各段に高まっています」と川合さん。家屋でのエキスパートシステム運用開始後、電子データで業務が軌道に乗っていることから、紙媒体の受領は中止したという。

 税務課長の西山直希さんも「権利移転時に課税システム内の所有者情報が自動で結びつくので所有者の確認作業が大幅に短縮された上、表示登記の異動も課税システムに自動連携されて入カミスなどのヒューマンエラーが減らせた効果は大きい。市が推進する職員のライフワークバランスの充実が図られ、働き方改革の実現に寄与しています」と高く評価している。

 一方、システムの課題や今後の機能拡大への期待としては、データの持ち方の違いによって宛名の特定で出るエラーの解消や、より操作が容易な検索機能の向上などが挙げられている。

「要望に対するダイショウの対応姿勢は極めて真摯です。また、システムの導入や運用での相談やトラブルなどへのサポートは迅速かつ丁寧なので、導入を考えている自治体は一度相談してみるといいのではないでしょうか」と岡本さんは語っている。

日々業務に邁進するあま市税務課の職員の皆さん
日々業務に邁進するあま市税務課の職員の皆さん

【事例紹介②】エキスパートを活用した登記情報の自動連携により大幅な業務効率化を実現

大阪府豊中市

大阪府豊中市

面積36.60㎢、人口約39万8,100人。大阪府北部の豊能地域にある中核市。北東部は千里丘陵、中央部は豊中台地、南部は大阪平野に面している。明治以降は箕面有馬電気軌道(現:阪急電鉄宝塚本線)の沿線開発とともに住民が増加。さらに、大阪市都心から15㎞圏内という利点を活かし、北東部の新千里丘陵を中心に大阪都市圏の衛星都市・ベッドタウンとして、1960年代から千里ニュータウンの開発が急速に進んだ。市内には、服部緑地などの公園も多く、自然豊かな環境も魅力。

課税台帳と登記データの照合業務の実績を評価

 大阪府豊中市財務部固定資産税課では、市税の約40%を占める固定資産税と、まちづくりの財源となる都市計画税の課税業務を行っている。現在、課長を含めて34名の職員で、土地評価・家屋評価・償却資産・課税総括の4係に分かれ、現地調査や航空写真等に基づく土地・家屋の調査や法務局の登記異動情報の整備、国税資料等を活用した事業用資産の調査、納税義務者確定の調査、地方税法に基づく資産評価・課税、納税義務者への評価・課税内容の説明などを行い、適正な評価と公正・公平な課税に取り組んでいる。

 平成27年度に課税業務の効率化のため、株式会社ダイショウの登記課税連携システム「エキスパート」を導入し、法務局から提供される登記事項要約書と登記済通知書の電子データを取り込み、登記情報が閲覧できる登記履歴の管理を可能にした。

「当時、毎週水曜日に法務局に赴き登記済通知書を紙媒体で受領し、異動情報を確認しながら庁内の税基幹系システムに手入力していました。また、紙媒体に加えて登記済通知書の電子データをUSBで受領していましたが、活用できていませんでした。そんな中、京都府八幡市がエキスパートを導入していることを知り、当市でも活用できるのではと検討し、有効性が確認できたことから導入しました。ほかにも登記情報を確認できるシステムはありましたが、ダイショウの長年にわたる課税台帳と登記データの照合業務の実績を評価し、エキスパートを選択しました」と固定資産税課課長補佐兼土地評価係長の石元達也さんは振り返る。

 エキスパート活用に向けては、平成27年の登記履歴管理システムの整備時に、法務局から提供された市全域の登記事項要約書と市の固定資産税台帳との照合作業をダイショウが実施し、登記情報と課税台帳の物件特定と不一致箇所の洗い出しを行った。その後は、法務局からの登記データを毎週取り込み、ほぼ最新の登記情報が確認できる状態を維持している。そして平成30年に登記情報を市の税基幹系システムに連携し、権利異動が自動連携できるようにして本格運用を開始。令和元年からは土地の表示異動の自動連携を行っている。

大阪府豊中市固定資産税課の石元達也課長補佐兼土地評価係長
大阪府豊中市固定資産税課の石元達也課長補佐兼土地評価係長

台帳番号をキーに登記異動の自動連携を実現

 エキスパートの運用においては、登記事項要約書と固定資産課税台帳との照合時に、登記情報と課税台帳を紐づける「台帳番号」を設定。平成30年の権利異動の自動連携開始の際に、税基幹系システム上で各物件にこの台帳番号を登録した。そして、週一度、法務局の登記情報連携システムで提供される登記済通知書・図面・地図情報はエキスパートに取り込まれ、新築や分筆等によって新たに発生する物件にはエキスパートで台帳番号が付番されていく。この台帳番号をキーに、登記異動の自動連携を実現している。

「夜間バッチ処理によって、エキスパートから出力した台帳番号・登記済通知書情報・宛名番号を税基幹系システムへ連携。データ取り込み作業を行い、所有権移転等の権利異動や分合筆等の表示異動の処理を自動的に行っています。登記情報の連携で職員が行う作業は、宛名番号の敷設、法務局からのデータ取込時のエラーの解消です」と石元さんは説明する。

 家屋評価支援システムへの連携も、台帳番号をキーに行っている。

「エキスパートから出力された新増築物件の台帳番号・登記済通知書情報・宛名番号を家屋評価支援システムが取り込むことで、評価情報を入力する枠組みが自動的に作成される仕組みになっています。家屋評価支援システムで評価情報を入力後、同システムから評価情報・登記済通知書情報を出力し、税基幹系システムへ連携しています。法務局からエキスパートへの連携は毎週行い、エキスパートから税基幹システムと家屋評価支援システムへの連携は年6回程度行っています」と課長補佐兼家屋評価係長の須崎玲子さん。

豊中市固定資産税課の吉岡基課長
豊中市固定資産税課の吉岡基課長

業務時間が大幅に短縮、課税誤りはほぼ解消

 エキスパートは現在、固定資産税課の全職員で使用している。

「ほぼ最新の登記情報なので、1月1日以降に所有権が移転された現在の所有者からの請求や問い合わせでも登記情報を確認できるのが利点。窓口等での対応に日々利用しています。データエクスポートできる機能も便利で、表示情報や権利情報を一覧で見ることができるので確認や登記情報の把握によく使用しています。さらには公図・測量図・家屋図面等の情報も取り込んでいることから、評価業務や問い合わせ対応がスムーズになりました」と石元さんは手応えを話す

 また、市民課戸籍係でも、戸籍関係の届出を受理する際、届け出られた本籍地が実在する地番であるかを確認するためにエキスパートを活用している。

 導入効果としては、権利異動における手入力が大幅に減り、業務時間が短縮されたことが第一に挙げられる。自動連携により、所有者の登録誤りや地積入力誤りなどの課税誤りはほぼなくなった。また、権利異動に関する登記済通知書はエキスパート内で確認できるため紙での保管をやめたことで、ファイル編綴の手間と保管スペースが削減されたのも効果だという。

 ダイショウのサポートについては、「必要な作業工程などを丁寧に分かりやすく回答していただき、安心して導入できました。導入後の要望に対しても、適宜、機能改善され、より使いやすくなっています。不明点等への相談にも即応していただけるので助かっています」と課税総括係長の加藤愛美さんは話す。

 固定資産税課長の吉岡基さんは、「不動産登記簿と課税台帳の連携は固定資産税課税事務の根幹をなすもので、法務局のシステムと地方自治体のシステムの連携は重要です。エキスパートによって業務効率化が図られ、その時間を相続人調査などに注力できるなど、課税事務全体の質の向上につながっていると感じています」と高く評価している。一方、敷地権のないマンション敷地などの一部自動連携できない物件があることが課題となっている。その対応とともに、登記済通知書への項目追加や将来的な権利異動におけるマイナンバー活用などの制度改正への対応が求められるのではないかと市では見ている。豊中市は、令和7年1月に先行して税基幹系システムを標準化システムに移行したタイミングで、家屋の表示異動の自動連携も開始した。課税業務のDX化の流れの中で、エキスパートシステムは自治体の規模に関わらず有効に機能すると考えられている。

「業務時間が大幅に短縮し、正確性も向上します。登記情報の閲覧が容易なので、問い合わせ対応も楽になります。業務改革の大きな一歩として、導入の検討価値はあると思います」と吉岡さんは述べている。

左から吉岡基課長、石元達也課長補佐兼土地評価係長、須崎玲子課長補佐兼家屋評価係長、加藤愛美課税総括係長
左から吉岡基課長、石元達也課長補佐兼土地評価係長、須崎玲子課長補佐兼家屋評価係長、加藤愛美課税総括係長

問合せ先

株式会社ダイショウ
Tel:03-6222-3071
E-mail:info@daishou.co.jp

 

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