寺本英仁の地域の“逸材”を探して
寺本英仁の地域の“逸材”を探して 第4回|まちの自然を冒険の舞台に変える!鍾乳洞ツアー【岡弘幸さん(岡山県新見市)】
地方自治
2025.07.01

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出典書籍:月刊『ガバナンス』2025年7月号 【WEB限定連載】
◆A級グルメのまちで、鍾乳洞ツアーを企画
今回は、岡山県新見市でケービングガイドをしている岡弘幸さんを紹介しよう。
新見市でケービングガイドを営む岡弘幸さん。
岡山県新見市も「A級グルメ」を推進しているまちなので、僕も邑南町職員時代からよく知っていた。また独立してからも、アドバイザー業務で毎月、岡山県新庄村に通う際に車で通る地域だったので、存在が気になるまちとして注目をしていた。
新見市も、邑南町と同じように寒暖差の激しい気候と豊かな土地で、千屋牛やキャビア、ピオーネ、ワイン、米などおいしい食材を生み出す地域である。そのA級グルメのまちに、鍾乳洞ツアーという新たな観光アクティビティーを岡さんは企画している。
岡さんはもともと岡山県の出身だが、新見市に移住する前は沖縄県西表島でカヤックやトレッキングガイドをしていたそうだ。コロナ禍になり、故郷の岡山県に帰ることを決めた際、新見市の鍾乳洞の凄さに感動して、この地を選んだのだという。
自然の造形美が圧巻の鍾乳洞。
僕はまったく知らなかったが、岡さん曰く、新見市には入り口の大きさが日本最大級を誇る鍾乳洞が存在するそうだ。食は観光における最大の魅力の一つではあるが、滞在時間を増やしていくうえではアクティビティーの開発も重要だ。だが、多くの自治体では、このアクティビティー開発がまだまだ未開拓である。
その中でも好例をあげると、たとえば北海道斜里町では、流氷の上を歩く流氷ウォーキングや流氷ダイビングで海外から多くの方が体験に来ている。また東京都御蔵島では、イルカが島近辺に生息しているので、イルカと泳ぐドルフィンスイムを目的に多くの外国人が来訪している。
北海道や沖縄など圧倒的な資源がある地域では多様なアクティビティー開発が考えられるが、新見市のような中国山地の山間にある場所では、開発をすることは難しい。いや、もしかしたら、自分たちでは気づかない魅力を持っているのかもしれないが、当たり前の生活の中で、見過ごしているのかもしれない。
そんな中、岡さんは、新見市に住んでいては気がつかない視点を持って、鍾乳洞という資源に付加価値をつけてくれる存在なのだろう。素材は素晴らしくしても、その魅力を真剣に知り尽くし、磨き上げる人材がいないと観光資源開発は難しい。新見市が今後、観光の魅力化を推進していくうえで、岡さんという人材をいかに上手く活用していくかが大きな鍵を握るのではないかと考えている。
◆冒険心を持って観光開発に挑む!
今回、岡さんと話をしていて、僕は妙に親近感を持つことができた。僕は学生時代から水中写真を始め、現在は仕事にもしている。西表島の海でも毎年潜っているし、その魅力を語ると朝まで話が尽きないだろう。普段はそんな話をする機会もなかったので、岡さんを前にして思わず饒舌になったのかもしれない。ダイビングとケービングは「冒険」というキーワードで共通していると思う。岡さんも僕も、元来、冒険好きなのである。
これは、人生においても当てはまるのではないか。先が見えるものより、見えにくいもののほうがワクワクする。そんなキャラクターが僕と被るなぁと思ったからだろう。新たな観光開発を新見市で行うことも、一つの冒険である。
「冒険」を企画するうえでは、レスキューキットの点検や搬送訓練など、安全面での配慮も欠かさない。
先が見えないぶん不安になることもあるかもしれないが、前に進むことができる充実感には、言葉では言い表せないものがある。
ケイビングツアーを成功させるには、安全面の配慮や地域住民との合意形成など、岡さんにとってまだまだやらないといけないことが多々あるだろう。それを僕は心底応援したいし、彼のガイドで新見の鍾乳洞を探索してみたいと思った。
●ケイビングツアーショップPOLEPOLE
住所:岡山県新見市大佐田治部2285
TEL:090-8440-7116
公式HP:https://polepole-iriomote.jp/
Instagram公式アカウント:
LINE公式アカウント(お問い合わせはこちらから!):

著者プロフィール
寺本英仁(てらもと・えいじ)
㈱Local Governance代表取締役
1971年島根県生まれ。東京農業大学卒業後、石見町役場(現邑南町)に入庁。「A級グルメ」の仕掛け人として、ネットショップ、イタリアンレストラン、食の学校、耕すシェフの研修制度を手掛ける。NHK「プロフェショナル仕事の流儀」で紹介される。著書に『ビレッジプライド~「0円起業」の町をつくった公務員の物語』、藻谷浩介氏との対談本『東京脱出論』など。22年3月末で役場を退職し、㈱Local Governance 代表取締役に就任。海と食を旅する地方創生プロデューサーとして活動中。
★この記事は、月刊「ガバナンス」のWeb限定連載です。本誌はこちらからチェック!

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