「市民参加と地方自治」をテーマに 第27回自治体法務合同研究会犬山大会を開催
イベント情報
2023.08.22
「第27回自治体法務合同研究会犬山大会」(事務局:東海政策法務研究会)が2023年7月15日・16日、愛知県犬山市で開催された。自治体法務合同研究会は、全国各地の法務グループが参集する合同研究会で、1995年の第1回以来、毎年7月に開催されている。コロナ禍の影響で、今年は実に4年ぶりのリアル対面方式の開催となった。基調講演・シンポジウムのほか、分科会においては、各グループの日頃の研究成果や取組の発表・報告等が行われた。
15日に開かれた一般公開プログラムのテーマは、「市民参加と地方自治」。地域特有の課題について、行政だけでなく地方議会も含めて、いかに住民意思を踏まえた政策を実現することができるかは、地方自治の根幹を成す重要なテーマである。その一部を紹介する。
市民参加を進めるために何が重要か
はじめに、小泉祐一郎・静岡産業大学経営学部教授が基調講演に登壇した。
市民参加が生まれた流れや市民参加の現状と課題について解説し、市民参加の例として、開催地である犬山市での、住民意見をもとに都市計画道路の拡幅を見直した例などを挙げた。
また、北海道ニセコ町のまちづくり懇談会、まちづくり市民講座、シンポジウムなどの町民議論をベースに「まちづくり基本条例」を制定した事例を紹介しながら、「まちづくりの組織を作ることよりも活動を先行して行うことが目的に合った改革をするために重要である」と話した。
「牧之原市政への市民参加に関する条例」を制定し、市民参加を制度的に保障している静岡県牧之原市では、「牧之原市自治基本条例推進会議」において、毎年、市民参加手続の実施状況及び実施予定について審議しているという。市長、副市長、教育長が出席して、委員との質疑が行われている。これらの事例を踏まえて、「システムの充実など住民参加の手段を目的化せず、課題と政策を共有し、住民に自分ごととして捉えてもらう機会を創ることが大事だ」とした。
これからの市民参加の視点を考える
基調講演後、3人のパネリストを迎えてシンポジウムが開催された。
まず、本間直樹・牧之原市秘書政策課主幹兼係長、河村秀根・日進市環境課課長補佐、川上文浩・可児市議会議員の3人がパネリストとして、自身の自治体での市民参加や公民連携の取組を発表した後、基調講演を行った小泉氏と松岡由紀彦・名古屋市法制課長も交えて討論が行われた。
牧之原市からは、一施設に公民の機能が混ざり合う公民複合施設の事例が紹介された。民間部分を施設オーナーが整備して市が図書交流館を設置しており、公民が連携して維持管理更新を行うことで、よりコストを削減してサービスを提供している。
日進市では、自治基本条例で市民参加について定めている。条例の周知にあたっては、4コマ漫画を作製するなど、大学や市内デザイナー等の協力も得ているという。市民ニーズを踏まえた公共交通分野での公民連携として、スクールバスを学生利用の少ない時間帯は市民も利用できるようにして運行経費を削減するなどの取組が発表された。
可児市では議会基本条例で、議会は、「積極的に市民の参加を促すとともに、市民の意見を議会運営の改善、政策提言等に反映させるよう努めなければならない」と、市民参加及び市民との連携について定めている。条例に基づいて、「民意を反映する政策タイムライン」が設けられ、市民意見を聴取するサイクルが確立されている。また、若者の市政参加を促すため、高校生に演説、グループディスカッション、そして投票まで行う模擬選挙を体験してもらい、実際に投票意欲を高めることに成功した。
川上氏は、「市民意見について、何を誰に聞けばいいのかという選択、段階に応じた聞き方、関わり方を選択する能力が自治体職員に求められる」と話した。
シンポジウム終了後、参加者からは、市民参加に関する様々な質問が寄せられ、会場は大いに盛り上がった。