議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

議会局「軍師」論のススメ 第32回 専門的知見を求める意義は何か?

NEW自治体法務

2020.11.03

議会局「軍師」論のススメ
第32回 専門的知見を求める意義は何か? 清水 克士
月刊「ガバナンス」2018年11月号

 大津市議会における政策立案手法は、複数の大学と包括連携協定を締結して、専門的知見を活用していることが特徴の一つである。視察対応においても、大学との付き合い方に関する質問が多く、今号では議会と大学・学者、理論と実践の関係性について思うところを述べたい。

■セカンドオピニオンは失礼?

 多いのは、連携する大学が複数であることに対する質問である。もちろん、その主たる理由はより幅広い専門的知見を得るためである。だが、質問の真意は、複数大学との連携は、相互信頼関係を損うのではないか、といったところにあるようだ。確かに複数の連携を、「浮気」と捉える学者がいるのも事実である。

 だが、万能な学者などいないことは、医者と同様である。医療の世界では、患者が医療方針についての判断をするときに、セカンドオピニオンを求めることは、今や常識である。議会における専門的知見の活用においても、特定の大学・学者に固執するほうが不健全であろう。真に実力ある医者がセカンドオピニオンを嫌悪することはなく、同様に考えれば複数の専門的知見を求めることに、議会側のデメリットなどない。

■「プロダクトアウト」の功罪

 以前、担当していた工業振興分野では、かねてから大学の知的資源を製品開発に活かす、産学連携が定番である。研究成果である最新理論や先端技術を製品化することによって、市場競争力を高めようとする「プロダクトアウト」の発想である。一見合理的だが、技術偏重による高コスト化や消費者ニーズの欠如から、商業的には失敗することも多い。

 逆に、現場の消費者ニーズをもとに製品化する手法が、「マーケットイン」と呼ばれるもので、その場合の技術は目的達成の一手段として、意識されるに過ぎない。

 「マーケットイン」も万能ではないが、現場ニーズからの発想がなければ成果を得にくいのは、議会の専門的知見の活用も同様である。

■「あるべき論」の弊害

 理論としては革新的であっても、現実とのギャップを埋める手段が考慮されていない「あるべき論」は、実践不可能な机上の空論であり、現場では議論の意義がない。

 また「あるべき論」を追求すると、時として「立法論」に流れる。だが、立法論を語ることは官僚や学者の仕事であり、地方現場の仕事ではないと私は思っている。

 もちろん、立法論を語る中長期的意義は否定しないが、自治体に法改正の権限がない以上、「解釈論」の範疇における議論でなければ、課題に対する処方箋は示せず、評論家的議論とならざるを得ないからだ。

■正解を決めるのは個々の議会

 議会は政治の世界の機関であり、学問の世界の存在ではない。現実社会において住民福祉の向上を図ることが任務であり、理論や技術は実践のための手段に過ぎない。

 専門的知見も決して普遍的なものではなく、時代背景、議会規模、地域性、政治的状況によって変遷し、正解は議会によって自ずと異なる。

 議会は、多様な民意を反映させるための合議制機関である。ところが、自ら求めた専門的知見に関しては、十分な比較考量もせず、鵜呑みにしがちとなるケースも見られる。

 議会内部における議論でも、都合の良い権威に判断の拠り所を求めようとするのではなく、自らの考え、責任において決めようとすることが、肝要ではないだろうか。

*文中、意見にわたる部分は私見である。

 

Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士
しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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