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最新法律ウオッチング―旧優生保護法一時金支給法(2019年4月24日公布・施行)

自治体法務

2019.09.13

最新法律ウオッチング 第100回 旧優生保護法一時金支給法
(『月刊 地方財務』2019年7月号)

旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律(概要)

 本年の通常国会において、旧優生保護法一時金支給法が成立した。
 1948年に制定された優生保護法では、「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」ことを目的として、遺伝性精神病等にかかっている者に対し、本人の同意がなくとも、その疾患の遺伝を防止するため優生手術(生殖腺を除去せずに、生殖を不能にする一定の手術)を行うこととしていた。
 優生保護法は、96年に、不良な子孫の出生を防止するという優生思想に基づく部分が、障害者に対する差別となっているとして、母体保護法に改正され、本人の同意によらない手術についての規定が削除された。
 これまでの間、多くの方々が優生手術等を受けることを強いられてきたことから、旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給に関し、必要な事項等を定める法案が衆議院の議員立法として提出され、成立した。

旧優生保護法一時金支給法(詳細)

○前文

 前文を設け、旧優生保護法の下、多くの方々が、生殖を不能にする手術や放射線の照射を受けることを強いられ、心身に多大な苦痛を受けてきたことについて、我々は、それぞれの立場において、真摯に反省し、心から深くおわびする旨を明記した。さらに、今後、これらの方々の名誉と尊厳が重んぜられるとともに、このような事態を2度と繰り返すことのないよう努力を尽くす決意を新たにし、国がこの問題に誠実に対応していく立場にあることを深く自覚して本法律を制定する旨を規定した。

○一時金の支給

 国は、旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対し、一時金を支給することとした。支給対象者は、旧優生保護法が存在した間に旧優生保護法の規定により行われた優生手術を受けた者、また、当該期間に旧優生保護法に基づかずに行われた生殖を不能にする手術や放射線の照射を受けた者であって、この法律の施行時に生存しているものとした。ただし、母体の保護や疾病の治療を目的とするものなど、優生思想に基づくものでないことが明らかな手術等により生殖が不能となった者は、対象から除くこととした。
 一時金の額は、320万円とした。

○一時金の請求等

 厚生労働大臣は、一時金の支給を受けようとする者の請求に基づき一時金の支給を受ける権利の認定を行うこととするとともに、この請求は都道府県知事を経由してすることができることとし、請求の期限は施行日から5年とした。
 また、都道府県知事や厚生労働大臣は、一時金の支給を受ける権利の認定に必要な調査を行うこととした。
 そして、厚生労働大臣は、一時金の支給の請求を受けたときは、請求者が旧優生保護法に基づく優生手術を受けたことを証する書面等がある場合を除き、厚生労働省に設置する旧優生保護法一時金認定審査会に審査を求め、その審査の結果に基づき、一時金の支給を受ける権利の認定を行うこととした。
 このほか、国や地方公共団体は、一時金の支給手続等について十分かつ速やかに周知するための措置を適切に講ずることとするとともに、国や都道府県は、相談支援その他一時金の支給の請求に関し利便を図るための措置を適切に講ずることとした。

○調査等・周知

 国は、特定の疾病や障害を有すること等を理由として生殖を不能にする手術や放射線の照射を受けることを強いられるような事態を2度と繰り返すことのないよう、全国民が疾病や障害の有無によって分け隔てられることなく相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資する観点から、旧優生保護法に基づく優生手術等に関する調査その他の措置を講ずることとした。
 また、国は、この法律の趣旨・内容について、広報活動等を通じて国民に周知を図り、その理解を得るよう努めることとした。

○施行期日

 この法律は、一部を除き、公布の日(2019年4月24日)から施行された。

国会論議

 国会では、提案者から、前文の「我々は、それぞれの立場において」とあるのは、旧優生保護法を制定した国会や執行した政府を特に念頭に置くものとの説明がされた。
 また、国会では、対象者に個別に一時金の支給対象となり得る旨の通知をすることについて質問があり、政府から、法律では、家族に一切伝えていない場合や当時のことを思い出したくない場合も想定されるため、対象者への通知が規定されていないと承知しているが、都道府県等が条例で対象者に個別に通知することは制限されないと理解しているとの説明がされた。

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