議会局「軍師」論のススメ
議会局「軍師」論のススメ 第24回 夜間休日議会は「イベント」なのか?
地方自治
2020.09.10
議会局「軍師」論のススメ
第24回 夜間休日議会は「イベント」なのか? 清水 克士
(月刊「ガバナンス」2018年3月号)
*写真は大津市議会局提供。
先日、総務省の「町村議会のあり方に関する研究会」が、3月に公表を予定している報告書についての報道があった。その概要は、議員のなり手不足に悩む小規模議会に、現行制度に加え、少数の専業議員で構成する「集中専門型議会」や、多数の兼業議員で構成する「多数参画型議会」も選択できる制度を新設するというものであった。だが、会社員も立候補し易い環境を整えるために、「多数参画型議会」の基本的な議会運営として想定されている夜間休日議会については、若干の疑問があり、今号ではそこに焦点を当てて私見を述べたい。
■傍聴者増嵩手法としての観点
夜間休日議会がクローズアップされたのは、初めてではない。以前にも、本会議の傍聴者数を増やす手法として耳目を集めた。だが、職員人件費が増嵩する一方、傍聴者数は漸減して中止に転ずる議会も多かった。
もちろん地方議会を取り巻く環境は様々であり、夜間休日議会の導入を全否定するものではないが、少なくとも大津市議会では、導入メリットはない、と考えている。それは、全議会日程を夜間休日だけで消化することは、時間的に不可能であるからだ。本会議の一部だけを夜間休日に行っても、それは本会議のイベント化にすぎない。一部開催では、議会における議論を市民に伝えるという目的は達成し得ないからだ。
対案として大津市議会では、ICT化によって議会での議論を市民に伝えようと注力している。具体的に本会議の中継では議案採決における議員の賛否態度や、一般質問における補助資料なども画面上に反映させるために、電子採決システムの導入や補助資料の電子データ化を促進している。
もちろん、議会の議論は、議場でリアルタイムに聞いてもらうのがベストだが、インターネットによる中継録画の視聴でも、必要十分な効果はあると思うからだ。
■なり手不足対策としての観点
一方、議員のなり手不足対策としても疑問がある。形式的にはともかく、本会議、委員会へ出席するだけで、議員としての職責が全うできるものではない。現実には議案審議や一般質問の準備に、かなりの時間や調査研究が必要となるからだ。
確かに海外ではボランティア議員による夜間休日議会の例もあるが、前提条件が大きく異なるようである。議会における審議密度の違いや、議員を支えるスタッフも議員数の数倍の人数が確保されていると聞いている。また、報道によれば長野県喬木村では、夜間休日議会の導入に当たって、審議の短時間化を図り、一般質問などは簡潔さを徹底するという。
だが、前提条件を軽視したような夜間休日議会の導入によって、仮になり手不足が緩和されたとしても、議会の審議能力の低下を招いたのでは、本末転倒ではないだろうか。
■地方議会制度の多様化は必然
もとより地域や規模によって様々な事情を抱える地方議会の制度が、全国一律であることに無理があると感じていたので、選択肢を増やすという制度的対応自体は、あるべき方向性だと思っている。
しかし、過去には議会事務局の共同設置など、現実には適用例皆無のものもあり、今後の地方議会制度の改正が、現場の実情を十分に考慮したものであるとともに、地方議会の横並び主義をも打破する契機となることを願っている。
*文中、意見にわたる部分は私見である。
Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士
しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。