公務員が読みたい今週の3冊
公務員が読みたい今週の1冊【著者インタビュー編】世にもふしぎな法律図鑑
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2025.05.12
今週、何読む?
読書の習慣をつけたいと思いながら、まだ始められていない…。
日々読書を嗜んでいるが、そろそろネタ切れ…「次は何を読もうか」検討中。
そんな公務員の方はいませんか?
「公務員なら読んでおきたい」業務に役立つ必携図書や、「公務員の皆様が楽しく読める」おすすめ図書をガバナンス編集部がピックアップ。
「公務員が読みたい今週の3冊」では毎週2~3冊をご紹介。
特別編「公務員が読みたい今週の1冊」ではたっぷりの著者インタビューとともに、おすすめの1冊をじっくりとご紹介します。
「今週読みたい図書」の選定にぜひお役立てください。
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万能ではないから面白い 法の世界へようこそ

世にもふしぎな法律図鑑
中村 真・著
日経BP/1,800円+税
著者プロフィール

中村 真(なかむら・まこと)
弁護士(方円法律事務所)。神戸大学大学院教授。神戸大学法学部法律学科卒業。平成15年、弁護士登録。神戸簡易裁判所民事調停官、兵庫県弁護士会副会長などを歴任。令和3年、神戸大学大学院法学研究科教授に就任(法曹実務)、同年、神戸大学大学院法学研究科博士後期課程修了(租税法専攻)。著書に、『裁判官! 当職そこが知りたかったのです。─民事訴訟がはかどる本─』(学陽書房)、『相続道の歩き方』(清文社)、『若手法律家のための民事尋問戦略』(学陽書房)、『まこつの古今判例集』(清文社)、『新版 若手法律家のための法律相談入門』(学陽書房)ほか多数。
世にもふしぎな法律図鑑
── 著者インタビュー
「ラクダ、そり、ベビーカー。この中で飲酒運転になるのは?」
──誰も考えたことがないようなユニークな視点から、法律の「ふしぎ」を紐解く快作が登場した。著者は、弁護士の中村真さん。
「弁護士は法律側の人間と捉えられることが多いが、仕事で法律に携わっていると、あれ?と感じたり、うまく規制ができていないなとフラストレーションを覚えたりすることもある。法律のこういうところも知ってもらえたらいいのでは」
そうした思いが執筆のきっかけになったという。
「誕生日を暗証番号にしてはいけない本当の理由」「富めるときも貧しきときも支払おう、著作権使用料」「選挙で、みかんは配れるけどチョコレートは配れない?」
こうした「ふしぎ」を50項目挙げ、条文や裁判例なども紹介しながら、どこまでも機知と頓智に富んだ軽快な筆運びで、法の解釈と運用の奥深さを法律のプロとして解説する。読者は、自身の体験と照らし合わせながら、驚かされたり、納得したり、くすりと笑ったりの連続だろう。
「昔から絵を描くのが好きで、授業中にノートや教科書にいろいろ描いたりして」
と語る中村さん。本書の最大の特徴ともいえる全編に散りばめられたイラストは、すべて中村さん作だ。独特の絵柄とシナリオは、一目見たら忘れられない。各項目末に登場する自画像とつぶやきの余韻も味わい深い。
中村さんは、
「一般の方向けの本は初めてだったが、ちょうど発刊前後にニュースやSNSで話題になっていた知事選や女性に対するAED使用に関わる話なども取り上げており、反響をいただいている。法律家からも、知らないことが多かったと言われた」
と手応えを語る。
「選挙関係のところは、調べていくうちに面白いなと感じた。今後さらに勉強してみようと思うきっかけになった」
と、中村さんは本書を起点に、この先を見据えている。
「法律とは本来、それを適用される人によって批判的に検討され続けるべきもの」
と中村さん。法律は万能ではない。守られることが前提でありながらも、疑問にさらされ続けるものでもあると。では、私たちはどうすべきか。
「まず大事なのは選挙に行くこと。選挙に行かないと、批判にも説得力がなくなってしまうと思うんです。例えば今の話題でいうと、高額療養費制度の改正。法律に関心を持ち、声を上げ続けてほしい」
両親が公務員だったという中村さん。
「公務員は一般の人からすると、弁護士と同じように法律と一体のものと思われがち。ただ、法律や行政の内容に危機感を持ち、良くしようと考えている方は多いと思う。この本を読んで、同じような思いを持っている人がいるのだと感じていただけると嬉しい」