マイナンバー・ICTが拓くセキュアで豊かな社会
第8回 カフェ発 こんな事なのに攻撃を受けるの? 思わぬ隙を突く標的型攻撃
ICT
2019.04.26
第8回 カフェ発 マイナンバー・ICTが拓くセキュアで豊かな社会
カフェデラクレでの出来事
え? こんな事なのに攻撃を受けるの? 思わぬ隙を突く標的型攻撃
知っているけど知らない人!?
ある日の午後、都内の文教地区、文田区にあるカフェデラクレ(Café de la clé)。暑い日が続く中、世の中はまだ夏休みである。
カランカラン♪
「いらっしゃいませ。」
アルバイトの絵美がドアに目を向けた。カウンターには、絵美の他に、マスターをしている加藤がカップを並べていた。
この時間はそれほど多くの客が見込めない上、外はとても暑いこともあり、閑散としていた。お店の中は、常連の竹見が本を読みながらコーヒーを飲んでいるだけだった。
「あ、サト。」
絵美の大学の同級生、サトだった。
「あ、絵美、元気? ここ涼しくていいね。」
サトは、暑さでバテているようで、けだるそうな声を出した。サトは迷わず、絵美の目の前にあるカウンター席に腰掛けた。
「なんか、久しぶりだね。」
そう言うと、絵美はグラスについだ水を差し出した。
「うん。だって、絵美、マスコミ論の集中講義出てないんだもん。」
「あぁ、その講義分、もう単位とっていたから。」
この一週間、二人の通う帝都大学はちょうど集中講義が開講される週だったが、絵美はその講義をとっていなかった。
「あれ? サトはインターンに行くって言ってなかった?」
「うん、行っているよ。この一週間は集中講義だから、って伝えてお休みをもらったんだ。一ヶ月のインターン、その分、延ばしてもらったの。」
「へー、そんなことできるんだ。ところで、何にする?」
メニューを差し出しながら絵美は尋ねた。
「そうだなぁ。この暑さだし、クリームソーダにしようかな。」
「マスター、クリームソーダです。」
「はいはい。」
横にいた加藤はそう言うと、上から背の高いグラスをとり、氷を入れ始めた。絵美は、伝票を書き込みながら、再び声をかけた。
「集中講義、今日で終わりだっけ?」
「うん、終わり! 週末にレポート書いて出さなきゃなの。」
「大変だねー。インターンの方は大丈夫なの?」
絵美は、洗い場にあるグラスを磨きながら尋ねた。加藤が慣れた手つきでソーダの上にアイスクリームをのせると、サトに差し出した。
「大丈夫! この前、インターン先の広報にも載ったんだよ。」
そういうと、サトは嬉しそうに自分の鞄からスマホを取り出すと、HPを見せた。サトは、目の前に出てきたクリームソーダをつつきながらニコニコと絵美にほほえんだ。
「へー。かっこいいねぇ。」
絵美は、サトの見せてくれたページをみた。そのページには、
『インターン開始。帝都大学の金城サトさんを紹介』
という記載があり、写真入りで大きく出ていた。その写真にはサトがとても綺麗にうつっていた。
「なんかね、男女一人ずつ選ぶってことだけど、たまたま女子、私だけだったから、私が載ったんだ。ちゃんとプロのメイクさんとかもいたんだよ。応募者を増やすために、広報について今年から力をいれる、ってことにしたみたい。来年のパンフレットにも出るかもしれないってさ。」
ピロリン♪
そんな話をしていると、サトのスマホがメールの着信を伝えた。絵美はすぐにサトにスマホを戻すと、磨いたグラスを食器棚に戻し始めた。
サトは、絵美からスマホをうけとると、早速メールを開いた。
「えーー。めんどくさいなぁ。」
「どうかした?」
絵美は一旦手をとめると、サトの方へ向いた。
「なんかね、うちの大学にいる就職担当の平林先生って知ってる? その先生からのメールなんだけど、インターン先にこのメールの添付ファイルを転送しろ、って。スマホからインターン先にメール出すって面倒なんだよねぇ。フリーメールとかを直接受け付けないように設定されているし。」
「へー、ちゃんとしているんだねぇ。でも、平林先生って誰?」
「全然知らない。『帝都大学教授の平林です。就職担当を仰せつかっています。』って、メールの一行目に書いてあったけど。」
「就職担当の先生っていたんだねぇ。知らなかったよぉ。」
絵美も全く知らなかったので、同調した。
「絵美も知らないのかぁ。まぁ、大学って知らない先生いっぱいいるし。それに、なるはやって書いてある。仕方ないから、一度大学のPCにメールを転送して、演習室からメールだそうかなぁ。」