使いこなそう!マイナンバーカード|真岡市(栃木県)カードを使って書かずに申請簡単・便利な窓口サービス(月刊J-LIS2020年7月号より)
地方自治
2020.07.13
使いこなそう!マイナンバーカード
真岡市(栃木県)カードを使って書かずに申請簡単・便利な窓口サービス
(月刊「J-LIS」2020年7月号)
※この記事は、地方公共団体情報システム機構発行「月刊J-LIS」2020年7月号に掲載された記事を使用しております。なお、使用に当たっては、地方公共団体情報システム機構の承諾のもと掲載しております。
栃木県真岡市は令和元年9月、マイナンバーカードを活用すると各種申請・届出書類の記入枚数が減り、手続き時間も短縮される窓口サービスを開始しました。証明書の取得や住所異動のために窓口を訪れる人は、簡単かつスピーディに申請・届出ができるようになったのです。また窓口応対にあたる職員にとっても事務の効率化と業務負担の軽減につながっており、マイナンバーカードの新たな可能性を拓くものとして全国の注目が集まっています。そこで、この窓口サービスについて、真岡市に話を伺いました。
新庁舎建設を機に導入
真岡市は平成28年、老朽化が進んだ旧庁舎を建て替えるにあたり、庁内に「新庁舎建設準備室」を設置し、そのもとに「新庁舎建設推進部会」を置きました。建設基本方針の具体化を検討する同部会は、訪れる人の利便性を向上させるために、住所異動の届出など、各種申請や届出が庁内のワンフロアで完結できることを目指し、市民課等の窓口関連部署10課を新庁舎の1階に集約することを決めました。
また、市民課を中心に設置された「窓口部会」では、並行して窓口改革を模索。その効率的な運用に向けて先進地視察と検討を重ねた結果、「書類を書かなくてよい」仕組みを構築することとしました。
真岡市市民課窓口係の関根美佐係長は、「特にご高齢な方やお子様連れの方にとっては、住所・氏名・生年月日といった基本的な情報でも、書くことはとても大きな負担だと言います。そこで、計画では開庁は令和2年9月と決まっていましたが、より早く充実したサービスを提供するため、およそ1年前倒しで開始しました」と導入の経緯を話します。
マイナンバーカードを使うことで書類記入の手間が減り、受付窓口のサービスがスピーディに。
手続き簡単・便利な3つのサービス
真岡市では具体的にマイナンバーカードを使って3つのサービスを提供しています。
ひとつはマイナンバーカードによる交付申請サービスです。これはコンビニで住民票等を取得できるコンビニ交付サービスの機能を活用したもので、マイナンバーカードを専用リーダーで読み取ると、窓口で申請書を書かずに住民票や印鑑登録証明書、所得課税証明書を取得できるというものです。自分で操作できるよう、受付カウンター前に設置しています。
「コンビニ交付を使えば、わざわざ市役所に行かなくても自宅近くのコンビニで簡単に証明書等の交付ができます。市役所で導入しているサービスも使い方はコンビニ交付の操作とほぼ同じ。操作は職員がサポートしますので、体験してみてください。一度体験すれば、コンビニ交付も簡単にできるようになります」と関根係長は言います。
2つ目は手続き案内サービスです。これは、転入や転出、世帯変更などライフイベントに応じて必要となる手続きについて、マイナンバーカードや運転免許証、在留カードを専用カードリーダーで読み込むと、氏名や住所などの基本4情報が自動的に申請書類に印字されるものです。また、次にどこで手続きをしたらいいのかを示した「手続き案内票」が印刷されます。
「例えば、就学児童のいるご家庭の転入手続きでは、市民課への転入届出の後に、こども家庭課で児童手当の申請やこども医療費助成の手続きが必要になります。これまでは市民課の窓口で『次はこども家庭課へ行って手続きをお願いします』と伝え、行った先でまた申請書を書かなければなりませんでした。ですが、手続き案内サービスなら、『手続き案内票』についているQRコードを専用端末にかざせば、申請書類はすべて印字出力されるので、申請に訪れた方は記入する必要がありません。手続きにかかる負担を減らすことができていると思います」と関根係長は話します。
3つ目は申請書作成支援サービスです。これは住民異動等とは関係なく「申請書のみを作成したい」場合に利用できるサービスです。カードリーダーでマイナンバーカードや運転免許証、在留カードを読み込むと、基本4情報が申請書に印字されます。
マイナンバーカードを窓口で交付申請する場合もこの機能を使うと、必要な書類3枚の記入が不要になるため、受付時間が今までの20分以上から10分未満に短縮してストレスがなくなったという声が寄せられているそうです。
新庁舎イメージ。旧庁舎の建て替えにあたり、各種申請や届け出などの部署を新庁舎1 階に集約。訪れる市民にとっても利便性がよくなった。
職員も効果を実感 市民に便利なサービスの案内を
こうしたサービスの提供にあたって、当初は市役所側でも不慣れな新端末の操作等で職員にストレスがあったといいます。しかし、慣れてきた今、手書き申請のミスがなくなるうえ、スピーディに受付が完了すること、次に行う手続きの案内が正確であることなどから、業務稼働率は向上しています。
こうした真岡市の取り組みには、もうひとつのねらいもありました。県内最下位だったマイナンバーカード交付率の向上です。今回のサービス提供開始に併せ、各種申請や手続きに来庁した方がより簡単にカードを取得できるように、運転免許証の端末読み取り機能をカードの申請書類に流用させる取り組みを進めたのです。
これにより、申請時の手続きもぐっと楽になり、気軽にカードをつくろうという機運が生まれたといいます。これが功を奏して、令和2年4月末までの1年間のカード交付率は5.6%という県内トップの伸び率となり、交付率も県内上位に食い込むまでになりました。より丁寧な案内が市民に便利なサービスを受ける機会を増やしたことになります。
「今後は、マイナンバーカードは様々な行政手続きの重要なツールになります。『面倒な書類をたくさん書くのかと思っていた』といった理由でカードの申請を後回しにしている方が多いので、他の手続きのついでに申請できることや、役所に来なくてもできることなどを、これからも日々地道に伝えていきたいと思います」。
タブレットを活用した窓口サービスを説明する、真岡市市民課窓口係の関根美佐係長。