

ゼロからマスターする事実認定
―基礎から学び実践を理解する
岡口基一 著 定価:3,080円(税込)
ISBN:978-4-324-11626-5
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近時の司法試験予備試験の出題がここに集中!
――先生の前著『ゼロからマスターする要件事実』はロングセラーとなっていますが、このたびその続編として『ゼロからマスターする事実認定』を刊行される動機やきっかけを教えてください。
岡口氏:民事訴訟の両輪は「主張」と「立証」です。前著『ゼロからマスターする要件事実』で主張の整理(要件事実論)を扱ったので、次は立証、すなわち事実認定を扱わなければ民事訴訟の全体像が見えてこない、と以前から考えていました。
また、実は、要件事実よりも事実認定を知ることの方が実務的には重要なのです。民事訴訟は、最終的にはこの事実認定で勝敗が決まるからです。読者のみなさんに、両方の知識を身に付けてもらって初めて民事訴訟の全体構造を理解していただけると思い、本書の執筆に至りました。
――本書のコンセプトや、前著との違いを教えてください。
岡口氏:前著と同様に、「ゼロから」という言葉のとおり、法律をまったく知らない初学者でも読み進められるよう構成しました。読み始めたときは初心者だった方が、最後まで読み終えた頃には民事訴訟の事実認定のほとんどを理解できる——そういった積み上げ式の設計になっています。
ただ、事実認定は要件事実と少し毛色が違います。要件事実論は、いわばルールを覚えればある程度対応できる部分があるのに対し、事実認定は「裁判官がどう事実を認定するか」というプロセスを理解することが重要です。そこで、本書では、まず一般的な事実認定の考え方を土台として学び、そこから民事訴訟における固有の事実認定へ、さらに実務での高度な判断へと、段階的に理解が深まる構成になっています。
――本書は「初級者編」「中級者編」「上級者編」という構成になっています。それぞれの内容と読み方を教えてください。
岡口氏:まずプロローグで、民事訴訟の事実認定には三つの特徴がある、ということをお話しします。①民事訴訟では「絶対的真実」まで求められておらず、②証拠の収集が困難で、かつ、③事実行為よりも法律行為の存否が争われやすい——この三点です。これを最初に理解しておくと、その後の内容がぐっとわかりやすくなります。
初級者編では、民事訴訟に固有でない、より一般的な事実認定を扱います。証拠による事実の認定、別の事実による推認など、事実認定の基本的な仕組みをここで身に付けてください。
中級者編では、民事訴訟における事実認定の「教科書的な説明」をします。とりわけ、契約書などの文書による事実認定(形式的証拠力・実質的証拠力・二段の推定)を詳しく解説しています。近時の司法試験予備試験では、この文書による事実認定に関する出題が集中していますので、受験対策としても非常に役立つ内容です。
上級者編では、実務における民事訴訟の事実認定を、具体的な事例も交えて解説します。証拠評価の起案をする際の定型フレーズのまとめや、どうしても事実の存否が明らかにならない場合(ノンリケット)の解決方法も解説しており、実務家の方にも活用していただける内容にしました。
――本書で特に強調されたいポイントはどこでしょうか。
岡口氏:「民事訴訟の事実認定のルールは、普段の生活にも直結している」という点です。本書で詳しく説明していますが、民事訴訟には事実認定の特別なルールがありますから、それを意識して日常生活を送ることで、いざ裁判になったときに勝訴する可能性が高まります。
実はこのルールを熟知しているのが、闇金業者などの悪徳業者です。彼らは裁判に勝つための証拠作りを常日頃から行っています。一般の消費者は何の知識もないため、いざ裁判になると太刀打ちできないことがある——これは深刻な問題です。本書は、そうした知識格差を解消するためのものでもあります。
――本書はどのような方に特に読んでいただきたいですか。
岡口氏:大きく三つのカテゴリーの方を想定しています。まず、司法試験・予備試験の受験生です。中級者編で予備試験の過去問を網羅的に扱っているので、受験対策として直接的に役立ちます。
次に、弁護士や司法書士など法律実務家の方々です。上級者編では実務の事実認定を詳しく解説しており、日々の実務に活かしていただけます。
そして、法律の専門家でない一般の方々にも、ぜひ読んでいただきたいと思います。裁判というのは誰にでも起こりうることですし、事実認定の仕組みを知っておくことは、社会生活を送る上での「知恵」になります。
――最後に、読者のみなさまへメッセージをお願いします。
岡口氏:前著『ゼロからマスターする要件事実』では、要件事実の知識が広く国民に普及することを願ってやみません、と申し上げました。本書でも同じ思いです。民事訴訟の事実認定の知識もまた、かつては司法の世界だけで閉じていた情報でした。
本書を通じて、民事訴訟の主張(要件事実)と立証(事実認定)という両輪をご理解いただき、法律の知識を「生きた武器」として活用していただければ、著者としてこれ以上の喜びはありません。

ゼロからマスターする要件事実
―基礎から学び実践を理解する
岡口基一 著 定価:3,080円(税込)
ISBN:978-4-324-11179-6
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司法試験合格・簡裁代理認定考査合格を目指すならここまででOK
「司法修習生考試」合格を目指すならここまででOK
〔設問〕(ただし一部内容を省略しています)
弁護士P は、Xから次のような相談を受けた。
【Xの相談内容】「私の父Yは、その妻である私の母が平成14年に亡くなって以来、Yが所有していた甲土地上の古い建物(以下「旧建物」といいます。)に一人で居住していました。平成15年初め頃、Yが、生活に不自由を来しているので同居してほしいと頼んできたため、私と私の妻子は、甲土地に引っ越してYと同居することにしました。Yは、これを喜び、旧建物を取り壊した上で、甲土地を私に無償で譲ってくれました。Yから甲土地の贈与を受けたのは、私が甲土地上に建物の建築工事を始めた平成15 年12 月1日のことで、その日、私はYから甲土地の引渡しも受けました。
ところが、甲土地は、Yの名義のままになっていますので、私は、Yに対し、所有権の移転登記を求めたいと考えています。」
弁護士Pは、【Xの相談内容】を受けて甲土地の登記事項証明書を取り寄せたところ、昭和58年12月1日付け売買を原因とするY名義の所有権移転登記(詳細省略)があることが明らかとなった。弁護士Pは、【Xの相談内容】を前提に、Xの訴訟代理人として、Yに対し、贈与契約に基づく所有権移転登記請求権を訴訟物として、所有権移転登記を求める訴えを提起することにした。
以上を前提に、以下の各問いに答えなさい。
(1) (省略)
(2) 弁護士Pは、その訴状において、「Yは、Xに対し、平成15年12月1日、甲土地を贈与した。」との事実を主張したが、請求を理由づける事実(民事訴訟規則53条1項)は、この事実のみで足りるか。結論とその理由を述べなさい。
本問では、訴訟物である「贈与契約に基づく所有権移転登記請求権」の発生要件に該当する事実を明らかにします。
贈与契約に基づく所有権移転登記請求権は、贈与契約が締結されれば直ちに発生すると解されています。
そこで、請求を理由づける事実(民事訴訟規則53 条1項)は、「Y は、X に対し、平成15年12月1日、甲土地を贈与した。」との事実のみで足ります。
〔〔設問1〕弁護士P は、Xから次のような相談を受けた。
【Xの相談内容】「私(X)とYは、かつて同じ大学に通っており、それ以来の知り合いです。私は、平成27年8月頃、Yから、『配偶者が病気のため、急に入院したりして、お金に困っている。他に頼める人もおらず、悪いが100万円程度を貸してくれないか。』と頼まれました。私は、会社勤めで、さほど余裕があるわけでもないので、迷いましたが、困っているYの姿を見て放っておくわけにはいかず、友人のよしみで、1年後くらいには返してもらうという前提で、Yに100万円を貸してもよいと考えました。私とYは、平成27年9月15日に会いましたが、その際、Yは、『100万円借り受けました。平成28年9月30日までに必ず返済します。』と書いた借用証書を準備しており、これを私に渡し、私も、その内容を了解して、Yに現金100万円を渡しました。なお、友人同士でもあり、利息を支払ってもらう話は出ませんでした。ところが、返済期限が過ぎても、Yは、一向に返済しません。私は、直ちに100万円を返してほしいですし、返済が遅れたことについての損害金も全て支払ってほしいです。」
弁護士Pは、【Xの相談内容】を前提に、Xの訴訟代理人として、Yに対し、Xの希望する金員の支払を求める訴訟(以下「本件訴訟」という。)を提起することを検討することとした。以上を前提に、以下の各問いに答えなさい。
(1) (省略)
(2) 弁護士Pが、本件訴訟において、Xの希望を実現するために選択すると考えられる訴訟物を記載しなさい。
(3) 弁護士Pが、本件訴訟の訴状(以下「本件訴状」という。)において記載すべき請求の趣旨(民事訴訟法第133条第2項第2号)を記載しなさい。なお、平成29 年改正後の民法が適用されるものとする。
(4) 弁護士Pが、本件訴状において、請求を理由づける事実(民事訴訟規則第53 条第1項)として主張すると考えられる具体的事実を記載しなさい。
1 設問(2)について
貸した金の返還を求める請求であり、その訴訟物は、消費貸借契約に基づく貸金返還請求権となります。
また、Yは、「返済が遅れたことについての損害金」の支払も求めています。附帯請求であり、その訴訟物は、債務不履行に基づく損害賠償請求権となります。
2 設問(3)について
被告は、原告に対し、100万円及びこれに対する平成28年10月1日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
3 設問(4)について
(1) 主請求について
司法研修所民事裁判教官室の見解によると、貸金返還請求権は、弁済期の到来時に発生しますから、①返還約束の合意をしたこと、②金員の交付をしたこと、③弁済期の合意をしたこと、④弁済期が到来したことにそれぞれ該当する具体的な事実を摘示することになります。
つまり、①ないし③として「原告は、被告に対し、平成27年9月15日、弁済期を平成28年9月30日と定めて、100万円を貸し付けた。」、④として「平成28年9月30日は到来した。」が必要になります。もっとも、この④の事実は、下記⑵の事実に含まれますから、記載する必要がありません。
(2) 附帯請求について
履行遅滞に陥るためには、弁済期が経過しなければなりません。そこで、「平成28年9月30日が経過した」との事実が必要となります。
――岡口さんは、弊社から刊行となっているロングセラー『要件事実マニュアル』(現在第6版、全5巻)はじめ他社からも「要件事実」の入門書をご執筆されておられますが、このたび本書を執筆された動機やきっかけを教えてください。
岡口氏:もともとは、ぎょうせいから刊行されている税理士さん向けの雑誌「月刊税理」で「ゼロからマスターする要件事実」という要件事実論の連載をしていました。
これを書籍化しようということになったときに、連載をそのまま転載しただけの書籍では「芸がない」ので、「ゼロからマスターする要件事実」というタイトルに倣った構成に組み直すことにしました。
民法や民事訴訟法をおよそ知らない全くの初心者向けの情報から始まって、徐々に内容が深くなっていき、最後まで読めば、要件事実論についてのほとんどの知識を身に付けることができるという組立てで一から新しく書き直しました。
――目次を見ると、法的三段論法を説明する「プロローグ」から始まって、第1章は、法律知識のない初心者段階、第2章は、民事訴訟の基礎知識を学ぶ初級者段階、第3章が中級者段階…と段階別に解説されています。
岡口氏:法的三段論法は要件事実論の基本となるので、まずはそこを解説しました。
第1章では、「請求権」について詳しく説明しています。
民事訴訟を理解するには、何よりもまず「請求権の一生の物語」、すなわち、請求権の発生、存続、消滅について頭に入れておかなければならないからです。
第2章では、民事訴訟の流れや、請求原因、抗弁などの攻撃防御方法、主張責任、立証責任などといった、民事訴訟の基本概念を学びます。
第3章、第4章では、様々な訴訟類型を用いて具体的に民事訴訟の説明をしています。売買、賃貸借、請負などの契約に基づく請求、所有権に基づく返還請求、登記請求などです。
そして、最後の第5章で、ついに要件事実を扱います。
実は、この最終章に至って初めて「要件事実」という言葉が出てきます。
「要件事実」には様々な意義があるのですが、誰かがしっかりと、その歴史を踏まえた解説をしておかなければならないと考えていました。
そこで、要件事実の歴史、機能、「当事者の主張」欄の「場」としての意義、ローゼンベルク説の紹介と批判などを解説しています。
――法律実務家にとって「要件事実論」というのはどのようなツールであると考えていらっしゃいますか?
岡口氏:法律実務家の法律実務家たるゆえんは「主張の整理」が正確にできることです。事実認定は法律実務家でなくてもできますし、専門訴訟などで必要となる専門的知識は、専門家に全くかないません。
訴訟物や攻撃防御方法の内容を正確に把握する「主張の整理能力」こそが、法律実務家がその価値を発揮するところなのです。
要件事実論の習得は、この「主張整理能力」を飛躍的に高めるものといえます。
――最後に、読者のみなさまに、メッセージをお願いします。
岡口氏:司法研修所に入所しなければ要件事実を学べない時代が長く続きました。情報の独占はそこに権力を生み出します。
しかし、現在では、本書などを用いて、誰でも簡単に要件事実を学ぶことができるようになっています。情報が広く国民に公開されたことで、国家機関の手を借りずに紛争解決をすることができる時代が到来するかもしれません。法曹を目指す人に限らず、広く、要件事実の知識が普及することを願ってやみません。

民事執行マニュアル 上・下

破産・再生マニュアル 上・下

要件事実マニュアル 第7版
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※原則として本書の内容に関するご質問以外はお答えできませんのでご承知おきください。
また、都合により対応ができなかったり、遅れたりする場合があることをあらかじめご了承ください。