ゼロからマスターする要件事実
――基礎から学び実践を理解する

岡口基一〈著〉

ゼロからマスターする要件事実
―基礎から学び実践を理解する
岡口基一 著
定価:3,080円(税込)
ISBN:978-4-324-11179-6

著者略歴

岡口 基一(おかぐち・きいち)

平成6年4月13日 判事補
平成11年4月1日 東京地方裁判所知的財産権部判事補(特例)
平成16年4月13日 福岡地方裁判所行橋支部判事
水戸地方裁判所、大阪高等裁判所、水戸地方裁判所下妻支部、
東京高等裁判所を経て
平成31年4月1日 仙台高等裁判所判事

主要著作

こんな方におすすめ

  • ・要件事実の丸暗記では、法的思考が身につかない
  • ・結局要件事実ってなに?
  • ・条文から要件事実を導けるようになりたい
  • ・まずは司法試験合格レベルまで身につけたい

  • 学習レベル・経験レベルの段階別に各章で解説
  • 要件事実の結論が導かれる根拠や理由を、丁寧に説明
  • 学習レベルに応じた司法試験予備試験を演習として掲載

“理解する要件事実”を解説

Check your Level!

  • 第1章 初心者段階

    • ・完全にゼロからのスタート
    • ・まずは法曹脳になって訴訟を提起してみよう
  • 第2章 初級者段階

    • ・法学部1・2年生レベル
    • ・民事訴訟法の基礎知識を頭にいれよう
  • 第3章 中級者段階

    司法試験合格・簡裁代理認定考査合格を目指すならここまででOK

    • ・司法試験予備試験受験生、認定司法書士受験生レベル
    • ・契約や所有権に基づく請求訴訟をマスターしよう
  • 第4章 上級者段階

    「司法修習生考試」合格を目指すならここまででOK

    • ・司法修習生、法曹レベル
    • ・様々な訴訟類型から具体的な民事訴訟を理解しよう
  • 第5章 要件事実段階

    • ・マスターレベル
    • ・要件事実の過去から未来

Let’s try the test!

初心者レベル

  • 平成26年司法試験予備試験問題

    〔設問〕(ただし一部内容を省略しています)
    弁護士P は、Xから次のような相談を受けた。
    【Xの相談内容】「私の父Yは、その妻である私の母が平成14年に亡くなって以来、Yが所有していた甲土地上の古い建物(以下「旧建物」といいます。)に一人で居住していました。平成15年初め頃、Yが、生活に不自由を来しているので同居してほしいと頼んできたため、私と私の妻子は、甲土地に引っ越してYと同居することにしました。Yは、これを喜び、旧建物を取り壊した上で、甲土地を私に無償で譲ってくれました。Yから甲土地の贈与を受けたのは、私が甲土地上に建物の建築工事を始めた平成15 年12 月1日のことで、その日、私はYから甲土地の引渡しも受けました。
    ところが、甲土地は、Yの名義のままになっていますので、私は、Yに対し、所有権の移転登記を求めたいと考えています。」
    弁護士Pは、【Xの相談内容】を受けて甲土地の登記事項証明書を取り寄せたところ、昭和58年12月1日付け売買を原因とするY名義の所有権移転登記(詳細省略)があることが明らかとなった。弁護士Pは、【Xの相談内容】を前提に、Xの訴訟代理人として、Yに対し、贈与契約に基づく所有権移転登記請求権を訴訟物として、所有権移転登記を求める訴えを提起することにした。
    以上を前提に、以下の各問いに答えなさい。
    (1) (省略)
    (2) 弁護士Pは、その訴状において、「Yは、Xに対し、平成15年12月1日、甲土地を贈与した。」との事実を主張したが、請求を理由づける事実(民事訴訟規則53条1項)は、この事実のみで足りるか。結論とその理由を述べなさい。

  • 平成26年司法試験予備試験解説

    本問では、訴訟物である「贈与契約に基づく所有権移転登記請求権」の発生要件に該当する事実を明らかにします。
    贈与契約に基づく所有権移転登記請求権は、贈与契約が締結されれば直ちに発生すると解されています。
    そこで、請求を理由づける事実(民事訴訟規則53 条1項)は、「Y は、X に対し、平成15年12月1日、甲土地を贈与した。」との事実のみで足ります。

上級者レベル

  • 平成30年司法試験予備試験問題

    〔〔設問1〕弁護士P は、Xから次のような相談を受けた。
    【Xの相談内容】「私(X)とYは、かつて同じ大学に通っており、それ以来の知り合いです。私は、平成27年8月頃、Yから、『配偶者が病気のため、急に入院したりして、お金に困っている。他に頼める人もおらず、悪いが100万円程度を貸してくれないか。』と頼まれました。私は、会社勤めで、さほど余裕があるわけでもないので、迷いましたが、困っているYの姿を見て放っておくわけにはいかず、友人のよしみで、1年後くらいには返してもらうという前提で、Yに100万円を貸してもよいと考えました。私とYは、平成27年9月15日に会いましたが、その際、Yは、『100万円借り受けました。平成28年9月30日までに必ず返済します。』と書いた借用証書を準備しており、これを私に渡し、私も、その内容を了解して、Yに現金100万円を渡しました。なお、友人同士でもあり、利息を支払ってもらう話は出ませんでした。ところが、返済期限が過ぎても、Yは、一向に返済しません。私は、直ちに100万円を返してほしいですし、返済が遅れたことについての損害金も全て支払ってほしいです。」
    弁護士Pは、【Xの相談内容】を前提に、Xの訴訟代理人として、Yに対し、Xの希望する金員の支払を求める訴訟(以下「本件訴訟」という。)を提起することを検討することとした。以上を前提に、以下の各問いに答えなさい。
    (1) (省略)
    (2) 弁護士Pが、本件訴訟において、Xの希望を実現するために選択すると考えられる訴訟物を記載しなさい。
    (3) 弁護士Pが、本件訴訟の訴状(以下「本件訴状」という。)において記載すべき請求の趣旨(民事訴訟法第133条第2項第2号)を記載しなさい。なお、平成29 年改正後の民法が適用されるものとする。
    (4) 弁護士Pが、本件訴状において、請求を理由づける事実(民事訴訟規則第53 条第1項)として主張すると考えられる具体的事実を記載しなさい。

  • 平成30年司法試験予備試験解説

    1 設問(2)について
    貸した金の返還を求める請求であり、その訴訟物は、消費貸借契約に基づく貸金返還請求権となります。
    また、Yは、「返済が遅れたことについての損害金」の支払も求めています。附帯請求であり、その訴訟物は、債務不履行に基づく損害賠償請求権となります。
    2 設問(3)について
    被告は、原告に対し、100万円及びこれに対する平成28年10月1日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
    3 設問(4)について
    (1) 主請求について
    司法研修所民事裁判教官室の見解によると、貸金返還請求権は、弁済期の到来時に発生しますから、①返還約束の合意をしたこと、②金員の交付をしたこと、③弁済期の合意をしたこと、④弁済期が到来したことにそれぞれ該当する具体的な事実を摘示することになります。
    つまり、①ないし③として「原告は、被告に対し、平成27年9月15日、弁済期を平成28年9月30日と定めて、100万円を貸し付けた。」、④として「平成28年9月30日は到来した。」が必要になります。もっとも、この④の事実は、下記⑵の事実に含まれますから、記載する必要がありません。
    (2) 附帯請求について
    履行遅滞に陥るためには、弁済期が経過しなければなりません。そこで、「平成28年9月30日が経過した」との事実が必要となります。

Interview

――岡口さんは、弊社から刊行となっているロングセラー『要件事実マニュアル』(現在第6版、全5巻)はじめ他社からも「要件事実」の入門書をご執筆されておられますが、このたび本書を執筆された動機やきっかけを教えてください。

岡口氏:もともとは、ぎょうせいから刊行されている税理士さん向けの雑誌「月刊税理」で「ゼロからマスターする要件事実」という要件事実論の連載をしていました。
これを書籍化しようということになったときに、連載をそのまま転載しただけの書籍では「芸がない」ので、「ゼロからマスターする要件事実」というタイトルに倣った構成に組み直すことにしました。
民法や民事訴訟法をおよそ知らない全くの初心者向けの情報から始まって、徐々に内容が深くなっていき、最後まで読めば、要件事実論についてのほとんどの知識を身に付けることができるという組立てで一から新しく書き直しました。

――目次を見ると、法的三段論法を説明する「プロローグ」から始まって、第1章は、法律知識のない初心者段階、第2章は、民事訴訟の基礎知識を学ぶ初級者段階、第3章が中級者段階…と段階別に解説されています。

岡口氏:法的三段論法は要件事実論の基本となるので、まずはそこを解説しました。
第1章では、「請求権」について詳しく説明しています。
民事訴訟を理解するには、何よりもまず「請求権の一生の物語」、すなわち、請求権の発生、存続、消滅について頭に入れておかなければならないからです。
第2章では、民事訴訟の流れや、請求原因、抗弁などの攻撃防御方法、主張責任、立証責任などといった、民事訴訟の基本概念を学びます。
第3章、第4章では、様々な訴訟類型を用いて具体的に民事訴訟の説明をしています。売買、賃貸借、請負などの契約に基づく請求、所有権に基づく返還請求、登記請求などです。
そして、最後の第5章で、ついに要件事実を扱います。
実は、この最終章に至って初めて「要件事実」という言葉が出てきます。
「要件事実」には様々な意義があるのですが、誰かがしっかりと、その歴史を踏まえた解説をしておかなければならないと考えていました。
そこで、要件事実の歴史、機能、「当事者の主張」欄の「場」としての意義、ローゼンベルク説の紹介と批判などを解説しています。

――法律実務家にとって「要件事実論」というのはどのようなツールであると考えていらっしゃいますか?

岡口氏:法律実務家の法律実務家たるゆえんは「主張の整理」が正確にできることです。事実認定は法律実務家でなくてもできますし、専門訴訟などで必要となる専門的知識は、専門家に全くかないません。
訴訟物や攻撃防御方法の内容を正確に把握する「主張の整理能力」こそが、法律実務家がその価値を発揮するところなのです。
要件事実論の習得は、この「主張整理能力」を飛躍的に高めるものといえます。

――最後に、読者のみなさまに、メッセージをお願いします。

岡口氏:司法研修所に入所しなければ要件事実を学べない時代が長く続きました。情報の独占はそこに権力を生み出します。
しかし、現在では、本書などを用いて、誰でも簡単に要件事実を学ぶことができるようになっています。情報が広く国民に公開されたことで、国家機関の手を借りずに紛争解決をすることができる時代が到来するかもしれません。法曹を目指す人に限らず、広く、要件事実の知識が普及することを願ってやみません。

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好評既刊書

♦法律実務家のスタートラインに立った方におすすめ

♦民事裁判実務の最前線に立つ方におすすめ

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お見逃しなく!

※原則として本書の内容に関するご質問以外はお答えできませんのでご承知おきください。
また、都合により対応ができなかったり、遅れる場合があることをあらかじめご了承ください。