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6周囲に目配りしながら外側から円陣を固めているのが、企画課まちづくり推進係長の高橋文ふみ禎よしさん。自身も社協職員として高野会館で津波に襲われながら高齢者の避難誘導にあたった奥さんの吏佳さんは、「パパは優しいだけでなく、地域でも頼りにされるほど責任感の強い人だった」と涙をぬぐった。きっと守り抜く。強い決意で女性、高齢者、若い職員たちを円陣の内側に入れ、自らも生死の瀬戸際にありながら、最後まで人間の尊厳と誇りを失っていない。初めて経験する大津波の恐怖、それでも毅然として円陣の手を緩めていない。「未来ある若者や住民を死なせてなるものか」「家族を残し、死んでたまるか」励まし、かばいつつ、そして自分自身も懸命に生きようとしていた。その高潔な使命感、勇気と品格。彼らこそ真の勇者たちではなかろうか。屋上にいた職員たちは皆、大津波警報が出ている中、最後まで非常配備についていた。彼らが水門や陸りっ閘こう門もんを閉じ、避難を呼びかけ、誘導して多くの住民が救われている。あの時、どんな思いでいたのだろうか、津波が来るまでどこにいて何をしていたのか、なぜ流されなければならなかったのか。なぜ11人だけ生き残れたのか。