南三陸町 屋上の円陣 ―防災対策庁舎からの無言の教訓―

「きっと守り抜く」 宮城県南三陸町の防災対策庁舎の屋上で円陣を組み、必死に津波に耐えようとしている人たちがいた。 そこには、強い決意で女性、高齢者、若い職員たちを円陣の内側に入れ、生死の瀬戸際にありながら、最後まで人間の尊厳と誇りを失っていない姿があった…。 「その時、何が起こっていたのか」今だからこそ明らかにできる防災・危機管理アドバイザー山村武彦による渾身のノンフィクション。


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199第4章防災庁舎の「無言の教訓」(地方公務員災害補償法第46条、地方公務員災害補償法施行令第2条の3第1項及び第2項)。しかし、前述したように、地域防災計画に基づき、大津波警報中に防災庁舎で住民を守る職務を遂行していた職員たちは、すでに命の危険が高度に存在していたことは間違いない。不認定を不服とした遺族たちが審査請求を行ったところ、弁護士や医師らでつくる第三者審査会が再審査し2014年5月、高度に危険な公務中の災害だったとして31人の補償請求が認められることになった。誰の命も失ったら取り返しのつかないものである。公務中といえども彼らの安全は第一に考えられなければならない。防災庁舎・屋上の円陣の話も美談で終わらせてはならないのである。大規模災害だとしても公務員の安全を確保する仕組みを作ることが不可欠である。防災庁舎は何も言わないが消防団員、民生委員、自治体職員、防災関係者の安全を守れと無言の教訓を発信しているように見える。ちなみに、東日本大震災では東北3県で自治体職員281名、消防署員27名、消防団員254名、警察官30名、民生委員56名が犠牲になっている。彼らこそ地域と住民を守るために理不尽な災害と戦った勇者たちである。すべての犠牲者に心からの敬意と感謝を捧げご冥福をお祈りいたします。


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