石原信雄回顧談 一官僚の矜持と苦節

自治官僚として今日の地方財政制度の基盤を築き、 内閣官房副長官として7人の内閣総理大臣に仕えた石原信雄氏の足跡!


>> P.18

第六章政・官を離れて見てみると…………176でいるから、地方の自治が大事だ、だから依存財源よりは地方税の方がいいんだと、短絡した発想になってしまう。これをリードした経済財政諮問会議のエコノミストたちはそういう感覚だったわけ。地方行政の実態を知らない人たちが地方の制度改革、地方税財政制度の改革にかかわったことが悲劇のもとなんだ。‒荻田保さんは「地方財政はアジサイの花だ。アジサイは、全体は一つの花のように見えるけれど、小さな一つひとつの花が集まって一輪の花になっている。だから、全体を見ると同時に個々バラバラ、いろんなかたちをした花びらも同時に見なければいけない。地方というのは財政に限らずそういうものだ」という趣旨のことをおっしゃっていました。石原そうだよ。そのとおりなんだ。だから、地方財政という一つの言葉でくくられているけれども、それは、実態は四七都道府県ごとに事情が全然違うわけ。さらに、一七〇〇市町村ごとにまったく事情が異なっている。個々の地方団体は、それぞれが置かれている状況のもとで住民生活を守っているわけだから、そもそもマクロで、トータルで判断してはいけないんだ。地方税財政制度を考える場合には、その改革が各地域にどのような影響をもたらすかを常に検証しながらやらなければいけない。往々にしてエコノミストたちはマクロでしかものを見ない性癖があるものだからそこが欠落するわけ。だから、地方自治制度もそうだが、地方税財政制度の改革は、まさに荻田さんのお話のように、地方財政、地方行政は一つの抽象的なものではなくて、非常に数多くの地方団体の多種多様な問題のトータルであると


<< | < | > | >>