南三陸町 屋上の円陣 ―防災対策庁舎からの無言の教訓―

「きっと守り抜く」 宮城県南三陸町の防災対策庁舎の屋上で円陣を組み、必死に津波に耐えようとしている人たちがいた。 そこには、強い決意で女性、高齢者、若い職員たちを円陣の内側に入れ、生死の瀬戸際にありながら、最後まで人間の尊厳と誇りを失っていない姿があった…。 「その時、何が起こっていたのか」今だからこそ明らかにできる防災・危機管理アドバイザー山村武彦による渾身のノンフィクション。


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195第4章防災庁舎の「無言の教訓」は苦悩を深めていった。そんな時、遠藤副町長が助け舟を出し、町民の民意を問うパブリックコメント募集を提案。そして、2015年4月1日から、宮城県からの提案事項に関し「町としてどう対応するのが望ましいと考えるか」と町内に住所を有する人、及び町内の事業所又は事業所を有する人を対象に5月8日までパブリックコメントを募集した。その結果664件(有効588件)の意見提出があり、県の提案受け入れ賛成意見が350件(59・5%)に達し、反対意見206件(35・0%)を大きく上回った。普通、こうしたパブリックコメントを募集しても数件から数十件程度だったが、今回は664件という意外に多い意見提出であった。それだけ町民の関心の高さを示していた。結果を受け、町議会も全会一致で県提案受け入れを採択し、防災庁舎は2031年3月10日までの20年間宮城県が管理することが決まり、激しい論争はようやく沈静化していった。美談で終わらせてはならない防災庁舎の屋上で奇跡的に助かった人たちの話で共通していたのは、3


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